著者
齋藤 仁志
出版者
日本野鳥の会 神奈川支部
雑誌
BINOS (ISSN:13451227)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.1-6, 2014-11-10 (Released:2016-12-01)
参考文献数
20

1 2013年5月から2014年7月に金沢八景駅から相武隧道のバス停間で設定した調査ルートを路線バスで移動し、バスの中から目視でカラスによるゴミ集積所の食い散らかしと、集積所に集まるカラスの個体数を記録した。 2 収集所を「ポリ袋」、「ネット」、「容器」の3タイプに分けて記録した。調査終了時にはポリ袋0か所(0%)、ネット30か所(53.6%)、容器26か所(46.4%)であり、この結果と2000年の東京都と川崎市の収集所のタイプと比較してみたところ、調査地の方がはるかにネットと容器の普及が進んでいた。 3 ゴミの食い散らかしとカラスの数の季節変動は、それぞれ同じような傾向があり、夏は少なく、秋に増加、春に急増した。これらは、繁殖個体によるなわばり防衛行動の強化や、非繁殖個体の行動圏の変化、カラスの採餌内容の変化、周辺住民によるゴミ排出状況の変化などが関係している可能性があると考えられた。 4 ゴミの食い散らかしとカラスの数の曜日変動についても季節変動同様に類似した傾向があり、可燃ごみの日の火、土曜日が特に多かった。また、水~土曜日にかけて徐々に増加する傾向が見られた。可燃ゴミ収集日の翌日の水曜日と日曜日のカラスによる食い散らかしの数を比較したところ、日曜日の方が有意に多かった。これらの結果から、周辺住民がゴミ出しの日時をしっかりと守らないことが考えられ、特に週末はそれが顕著にみられた。
著者
畠山 義彦
出版者
日本野鳥の会 神奈川支部
雑誌
BINOS (ISSN:13451227)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.43-45, 2018-11-02 (Released:2020-01-12)
参考文献数
2
著者
田淵 俊人
出版者
日本野鳥の会 神奈川支部
雑誌
BINOS (ISSN:13451227)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.1-7, 2014-11-10 (Released:2016-07-25)
参考文献数
13

1987 年から2013 年までの27 年間に渡り、東京都町田市、神奈川県横浜市青葉区、および川崎市麻生区にまたがる多摩丘陵南端の人工建築物で集団繁殖したチョウゲンボウのヒナについて、ヒナが巣立つ様子を調べた。さらに、人間に保護されたヒナをどのようにして放鳥すべきかについても調査した。結果は以下のように要約される。 1 巣立ちに適するヒナの大きさは、親鳥とほぼ同じ大きさである。 2 人工建築物に営巣した場合、人工建築物のパイプから外に出てくることが即ち、巣立ちであるとみなすことができた。 3 巣立ちの時期は、27 年間平均で6 月24 日前後で、時間帯は午前中の8:30 から10:00 に集中し、午後には認められなかった。 4 27 年間を通して、巣立ち日の約7 日前になると、親鳥はヒナに対して給餌行動をやめた。 5 人工建築物のパイプから出たヒナは30 分程度で飛翔して上空を舞う個体と、降下して一旦、木々の茂みに身を隠す個体があった。 6 巣立ったものの、飛翔力にやや欠けるヒナは、降下して植木の間に身を隠し最低3 日間は親鳥から給餌を受けた。 7 「やむを得ない事情」により、人間に保護されたヒナは、軍手やゴム手袋を着用し、段ボール箱の上蓋を閉めて落ち着かせてから、保護された地点に持って行って放鳥するのが望ましい。 8 チョウゲンボウのヒナが巣立つ条件として、営巣場所の前面が開けていることが必要である。このことはチョウゲンボウの繁殖場所を決める要因になると推察される。
著者
齋藤 仁志
出版者
日本野鳥の会 神奈川支部
雑誌
BINOS (ISSN:13451227)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.1-6, 2014

1 2013年5月から2014年7月に金沢八景駅から相武隧道のバス停間で設定した調査ルートを路線バスで移動し、バスの中から目視でカラスによるゴミ集積所の食い散らかしと、集積所に集まるカラスの個体数を記録した。<br>2 収集所を「ポリ袋」、「ネット」、「容器」の3タイプに分けて記録した。調査終了時にはポリ袋0か所(0%)、ネット30か所(53.6%)、容器26か所(46.4%)であり、この結果と2000年の東京都と川崎市の収集所のタイプと比較してみたところ、調査地の方がはるかにネットと容器の普及が進んでいた。<br>3 ゴミの食い散らかしとカラスの数の季節変動は、それぞれ同じような傾向があり、夏は少なく、秋に増加、春に急増した。これらは、繁殖個体によるなわばり防衛行動の強化や、非繁殖個体の行動圏の変化、カラスの採餌内容の変化、周辺住民によるゴミ排出状況の変化などが関係している可能性があると考えられた。<br>4 ゴミの食い散らかしとカラスの数の曜日変動についても季節変動同様に類似した傾向があり、可燃ごみの日の火、土曜日が特に多かった。また、水~土曜日にかけて徐々に増加する傾向が見られた。可燃ゴミ収集日の翌日の水曜日と日曜日のカラスによる食い散らかしの数を比較したところ、日曜日の方が有意に多かった。これらの結果から、周辺住民がゴミ出しの日時をしっかりと守らないことが考えられ、特に週末はそれが顕著にみられた。
著者
石井 隆 葉山久世 加藤ゆき 篠田授樹 池内俊雄 松本令以 萩原 康夫
出版者
日本野鳥の会 神奈川支部
雑誌
BINOS (ISSN:13451227)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.9-20, 2013-12-01 (Released:2014-11-10)
参考文献数
2
被引用文献数
1

1 2012 年以降の野生化したカナダガンの有害捕獲について報告した。2 山梨県富士河口町河口湖での、袋網捕獲で必要な手続きをまとめた。鳥獣保護法、自然公園法、河川法、土地所有者の許可等が必要で、約1 年の準備期間を要した。3 袋網作成の材料の検討を行い、袋網設置までの手順をまとめた。4 6 月14 日からの袋網設置の準備作業についてまとめた。5 6 月29 日の袋網捕獲の記録をまとめた。カヌー 6 艘、動力船1 艘、地上チーム10 名の体制で捕獲を行った。6 捕獲した個体の安楽殺は静脈経由で麻酔薬を投与し、電解質液を注入して心停止させた。7 袋網捕獲にあたっての留意点をまとめた。網の設置場所、規格、水上での追い込み等に関して記載した。
著者
こまたん 畑中 優美 吉村 理子
出版者
日本野鳥の会 神奈川支部
雑誌
BINOS (ISSN:13451227)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.49-68, 2016-11-01 (Released:2017-11-03)
参考文献数
7
被引用文献数
4

神奈川県大磯町高麗山で2015年4月18日~10月10日まで野外のアオバトの鳴きの声を録音して鳴き声の解析を行った。併せて保護アオバトの鳴き声を録音して鳴き声に個体差があるのかを検討した。1)アオバトの鳴き声にはオアオ鳴きとポポポ鳴きの二種類があるのを確認した。調査地でのオアオ鳴きは5月2日の鳴き声初認~10月10日の最終調査日まで聞かれ、ポポポ鳴きは5月2日のオアオ鳴き初認日~8月7日まで聞かれた。2)アオバトの標準的な鳴き声は句1~句10で構成されるソング(オアオ鳴き)であることが分かった。参考に鳴き声をカタカナ表示すると『オオゴアッゴ(句1)、オー(句2)、オー(句3)、オアオ(句4)、オアオ(句5)、アオアーオ(句6)、オーアー(句7)、アーオアオ(句8)、オアオ(句9)、オー(句10)』という鳴き声に聞こえる。3)野外アオバトの全鳴き声の句1~句10の全鳴き声の周波数範囲(ソング内最低周波数最小値~ソング内最高周波数最大値)617Hz~1242Hz。平均値は714Hz~1066Hzであった。4)ソング内最低周波数に該当する句は、句2で全体の96.7%が句2に集中している。5)ソング内最高周波数に該当する句は、句6が全体の61.1%、句8が22.2%で合わせると83.3%を占めてほぼこの二つの句に集中している。6)ソング内最低周波数が上昇するとソング内最高周波数も上昇するという相関関係にあり平均値ではソング内最低周波数713Hzに対してソング内最高周波数は1072Hzで周波数上昇幅は359Hzであった。7)全鳴き声の句1~句10までの各句長さの範囲は0.38~3.42秒。平均値は0.88~2.38秒であった。8)各ソング内長さの最小値に該当する句は、句5が32.2%、句9が35.6%、句10が22.2%でこの3つで90.0%を占めている。該当する句の長さの範囲は0.38~1.07秒。9)各ソング内長さの最大値に該当する句は、句1が36.7%、句7が45.6%の2つで82.3%を占めている。該当する句の長さの範囲は1.76~3.42秒。10)全鳴き声のソング長さの範囲は18.29~25.39秒。平均値は22.33±1.42秒(SD)であった。11)保護アオバトの各句最高周波数も行徳12オスの句10の1ヶ所を除いてすべて野外アオバトの鳴き声の周波数範囲内にあった。12)保護アオバトの各句の長さ(時間)も野外アオバトの鳴き声の長さの範囲内にあった。13)保護アオバトの鳴き声は個体ごとに声紋の形が違うことが分かった。14)各句最高周波数の野外アオバト全数各句の標準偏差と保護アオバト各句の標準偏差の平均値を比較すると野外アオバト全数の各句は1.9~3.9倍バラツキが大きい。15)ソング長さの野外アオバト全数標準偏差と保護アオバト標準偏差の平均値を比較すると野外アオバト全数ソング長さは3.5倍バラツキが大きい。16)保護アオバト3個体は年を経ても鳴き声の最高周波数や長さの計測値のバラツキは小さく、声紋の形状変化においても大きな経年変化はなかった。17)ソング長さと句2の最高周波数の組み合わせで作成された散布図から、ソング長さと句2の最高周波数の最大値-最小値の幅(分布の範囲)の各最大値を利用して作成された分散範囲枠を当てはめると同一個体をおまかにクラス分けをすることが出来る。18)個体間の差異があること、個体間の差異よりも個体内の差異が小さいこと、個体の鳴き声は年を経ても大きくは変化しないことからアオバトの鳴き声を個体識別に使用することが可能である。
著者
こまたん
出版者
日本野鳥の会 神奈川支部
雑誌
BINOS (ISSN:13451227)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.15-25, 2017-11-01 (Released:2020-01-12)
参考文献数
6
被引用文献数
2

神奈川県大磯町照ヶ崎海岸に飛来するアオバトを観察していると、稀に喉から胸にかけて赤い色の個体(以下喉赤アオバト)が観察されている。今回照ヶ崎への飛来調査記録から、喉赤アオバトの飛来状況及び採食している果実の状況確認を踏まえ、喉赤アオバトの発生理由について検討した。 1 2010年~2016年の照ヶ崎でのアオバト飛来調査において、総観察羽数168610に対して喉赤アオバトは177羽観察され、その出現率は0.10%だった。 2 2010年~2016年における喉赤アオバトの飛来は、主に6月~9月の間で特に6月、7月に集中し、9月に少数の飛来が再びある。8月は2012年(34羽)と2014 年(2 羽)を除き飛来はなかった。 3 2010年~2016年の観察時に、性別を識別できた147羽では、オスの比率:73.5% メスの比率: 26.5%だった。 4 2010年~2016年の観察において、喉赤アオバトはすべて成鳥のアオバトで幼鳥の喉赤アオバトは一度も観察はされなかった。 5 2016年の観察回数は他の年の倍以上実施できたので、2016年の記録を用いて詳細な検討を行った。 以下、2016年の記録についての検討結果を示す。 ①観察総数42529に対して喉赤アオバトは24羽観察され、その出現率は0.06%だった。 ②喉赤アオバトの飛来は、6月~9月の間で特に6月、7月に集中し、9月に少数の飛来が再びある。 8月は観察されなかった。 ③性別を識別できた20羽では、オスの比率:90%メスの比率:10%だった。 ④観察総数42529羽のうちオスの比率:39%、メスの比率:61%だった。観察羽数全体のオスに対する喉赤アオバトのオスの出現率は0.11%、同様にメスの出現率は0.01%。オスがメスに対して11倍の出現率だった。 ⑤喉赤アオバトの出現は大きく二つのグループに分かれていた。最初のグループ(第1回目)が6月19日~7月24日まで、2回目の出現が9月12日~9月26日まで。そして幼鳥第1 期が飛来したのが7月18日からだった。幼鳥第1期の観察が集中する7月下旬~9月上旬の間は喉赤アオバト(明らかに喉が赤い個体)は観察されなかった。 6 2010年~2016年の7年間の観察データから、各年度の喉赤アオバトと幼鳥第1 期の飛来は、まず喉赤アオバトが出現し、喉赤アオバト出現終了後に幼鳥第1 期の飛来が増加していくことがわかった。 7 喉赤アオバトの発生理由について複数の候補案を検証し、果汁が赤い色の果実が食べられている時期、および幼鳥が巣立つ時期とに関連が認められた。このことから、照ヶ崎に飛来する喉赤アオバトの正体はアオバト幼鳥の巣立ち~自立するまでの間に親鳥が果実を吐き戻して幼鳥に与える際に潰れた果実の赤い果汁が親鳥の口からこぼれ落ち喉や胸に赤い果汁が付着したものと考えるのが最も妥当な発生理由であった。
著者
奥津 敏郎
出版者
日本野鳥の会 神奈川支部
雑誌
BINOS (ISSN:13451227)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.63-70, 2017-11-01 (Released:2020-01-12)
参考文献数
3
著者
こまたん
出版者
日本野鳥の会 神奈川支部
雑誌
BINOS (ISSN:13451227)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.13-29, 2019

<p>多摩動物公園野生生物保全センターで飼育されているオス1羽、メス2羽の計3羽の飼育下のアオバトの繁殖期における鳴き声をICレコーダーのタイマー録音機能を利用し録音した記録から分かったことを報告する。</p><p>1)繁殖の欲求が高まっていく2 週間ほどは頻繁に鳴くが、その欲求も徐々に薄れてピーク後56日間(8週間)程度でほとんど鳴かなくなったと考えられる。</p><p>日長時間の変化による季節周期と既日リズムに従って鳴いていたことがわかった。</p><p>2)1日に鳴いたオアオ鳴きの最大鳴き声回数(ピーク)でさえ僅か8回であることは、よく鳴く他の鳥とは鳴き声の機能が違う可能性がわかった。</p><p>3)3個体が全期間を通じて鳴いた95日で、朝最初に鳴いた個体は、L0686(オス)が83回で87%と突出している。1日(日の出前~日の入り頃)の連続録音した結果ではL0686(オス)の鳴くピークが早朝(日の出前)と夕方にあり、昼間はL0685(メス)の比率が高くなっている。このことからオスは早朝と夕方に、メスは昼間に鳴く欲求が高まるといえる。 これはアオバトの営巣中のオス、メスの分業形態(オスは昼間に抱卵育雛を、メスは夜間に抱卵育雛を担当)により、巣の外にいる時間帯に鳴く欲求が高まると考えられる。野外の繁殖調査(こまたん 2003)において、親鳥が巣の中で鳴いたことが無かったことと一致する。</p><p>4)今回の分析では降雨の有無や晴れ曇りによる照度 の違いは考慮しなかったが、少なくとも鳴き声の回数推移や鳴き出し時刻には一定の傾向が見られたことから、影響は小さいことがわかった。 </p><p>5)L0686(オス)は、今まではL0685(メス)の鳴き声に反応は見られなかったが野生のアオバトの鳴 き声に対して1分以内で鳴いた。また、7月中頃以 降は次第に鳴く回数が減少して、朝の5時間で多くても3回以下の時期にこの日の朝は5回鳴き、2日後も5回鳴いた、そしてその後は回数を減らした。これらのことから、一般的に鳴き声には求愛の機 能があるとされているが、求愛など一定の興奮を引き起こす要因となっている可能性もわかった。</p><p>6)調査期間を通した鳴き声の中で、唯一野生のアオバトと鳴き交わした際の鳴き声は、各句の周波数範囲の中に納まっていて、特異な鳴き声ではなかった。鳴禽類と異なり、個体が持っている固有の鳴き声はやはり一つだった。これは、アオバトは一つの鳴き声で複数の意味を持たせているのか、あるいは鳴き 声以外の方法によって必要な情報を交換していることがわかった。</p><p>7)オアオ鳴きの中に句10以降続けて鳴く(追加タイプ)ものがあった。追加タイプの個体はL0686(オス)で孵化後8年以上とも考えられる個体でオアオ鳴き151回のうち8回(5.3%)あった。他の2個 体については追加・復唱することは無かった。追加・復唱する鳴き方は性別には関係なく歳をとったアオバトがたまに発声するものであると言える。</p>
著者
畠山 義彦
出版者
日本野鳥の会 神奈川支部
雑誌
BINOS (ISSN:13451227)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.1-14, 2017-11-01 (Released:2020-01-12)
参考文献数
5
被引用文献数
2

巣箱内に赤外線カメラを設置した巣箱観察システムを用いて、ヤマガラの営巣時における行動を観察した。営巣期間は巣作り開始の3月10日から巣立ちの5月11日まで53日間であった。巣材を巣箱に運び入れる前に親鳥♀が巣箱内の壁や床を嘴でつついたり、床の上で羽を広げ泳ぐように羽ばたいたりする行動がみられた。産卵時には毎朝早朝1個ずつ産卵するが、親鳥が巣箱に入る時間は空が白み始める時間であった。親鳥♀は産卵期には、1日1個の卵を体内で作らなければならず、そのための効率的な産卵時刻として早朝を選択したと考えられる。育雛時の雨天の日は、雛の成長が鈍りその影響が翌日まで及ぶことが確認された。これは雛の成長の条件として日中の採食が影響していると考えられる。雛の総排泄腔より排泄され、風船のように膨らんだ排泄物を親鳥が食べるか外へ運び出す様子が確認された。成鳥の排泄物は液体状に近いものであるが、雛の排泄物は親鳥が処理しやすいよう膜状の物質に被われており、排泄物が散乱しないような構造になっていると考えられる。
著者
畠山 義彦
出版者
日本野鳥の会 神奈川支部
雑誌
BINOS (ISSN:13451227)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.41-51, 2019-12-01 (Released:2020-01-08)
参考文献数
13

巣箱内に赤外線カメラを設置した巣箱観察システムを用いて、シジュウカラの営巣時における行動を観察した。営巣期間は巣作り開始の3月16日から巣立ちの5月8日まで54日間であった。抱卵時間と雨量、湿度、日射量の間には相関関係が見られ、雨の日には抱卵時間が短かった。雨量が多い日は食料調達が困難であり、親鳥♀自身の採食時間の確保が必要なため、抱卵時間が短くなったと推測される。巣内育雛期間においては雨の日は雛への与食回数が減り、雨が雛の成長に影響を与えていることがわかった。また1日の与食回数は与食開始から5 日目までは増加傾向にあったがそれ以降は減少している。しかし雛の体長は増加していっている。これは親鳥が1回に運んでくる虫の大きさが最初は小さかったが、次第に大きい虫へと変わっていき、与食回数は少なくなっても食べ物の総量は増えていっているからと考えられる。 巣内育雛期間において雛の羽毛が一定レベル以上に達 して抱雛が必要ないと考えられる日でも夜間の抱雛が 観察された。これは当日雨が降り、濡れた親鳥から与 食を受けた雛も濡れ、雛の身体に付着した水滴の蒸発 により気化熱を奪われ、体温低下を招き雛が衰弱する 可能性があり、これを防ぐために抱雛が行われると推 測する。