- 著者
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杉山 道雄
畦上 光弘
- 出版者
- 岐阜大学
- 雑誌
- 岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
- 巻号頁・発行日
- vol.50, pp.391-407, 1985-12-15
従来,農業経営学において生産の規模,形態,組織に関するもの,いわば生産管理に関する研究は多いにもかかわらず,販売管理については少なかったといえよう。そこで本研究は,岐阜県下144戸の採卵経営の販売構造や販売管理のあり方を検討したものである。採卵経営が飼料商や農協に完全販売委託を行なっている経営が50%以上,さらに単一取引先である場合が70%に達する。採卵経営の羽数規模拡大につれて,kg当り販売価格が上昇しているのは,取引先の多数化,それによる価格交渉の機能などによる。岐阜県を地域別にみた場合,西南濃,東中濃は東京卵価圈にあり,東濃は名古屋卵価圏にある。けれども飛騨は名古屋相場を利用するとはいえ,飛騨卵価圈を形成している。これは名古屋卵価圏とはいえ飼料配送などから孤立した卵価圏を形成しているからだとみられる。個別経営の行なっている販売管理をG.P処理の有無と販売先の単複により類型化すると次のようになる。第1形態はG.P処理を行なわず単一販売先のもの(完全販売委託型),第2形態はG.P処理を行なわないが販売先が複数のもの(不完全販売委託型),第3形態はG.P処理を行なうが販売先が単一のもの(不完全販売管理型),第4形態はG.P処理を行ない販売先が複数のもの(完全販売管理型)である。生産者受取卵価は形態1では304円,形態2で313円で+9円,第3形態で322円で+9円,第4形態で334円で+12円と高くなり,第1形態との差は30円である。G.P未処理の平均は306円でG.P処理は330円で24円の差である。以上のように販売管理による収益増は生産管理にも匹敵する重要な位置にあり,経営の意志決定をする場合にも重要な分野である。