著者
イダマルゴダ アルナシリ 杉山 道雄 荒幡 克己 小栗 克之 甲斐 諭 柳 秦春
出版者
Japan Poultry Science Association
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.234-244, 1998
被引用文献数
1

世界主要都市における鶏卵価格の内外価格差は,かなり大きいことが指摘されてきたが,その卵価水準に最も影響する生産費と流通マージンの国際比較分析について飼料費を除き,殆ど研究されていない。研究は国内でなされても国際比較はなされていないのは,生産費の概念が統一されず,不明確であったことにもよっている。<br>本研究は鶏卵生産費の概念を直接費(飼料費十ひな費)と間接費(労働,建物費,機械,道具費,農薬費等)として,1996年世界20ヵ国の政府,大学機関にメールメリッドで調査票を送付し,15ヵ国につき回答を得て比較分析を行ったものである。調査国にはアメリカ,カナダ,イギリス,オラング,ブラジル,インド,中国,バングラディシュ,ネパール,スリランカ,イラン,サウジアラビア,日本,韓国,台湾の15ヵ国である。これらの国は低生産費国,中生産費国,高生産費国に大別されるが,低生産費は高生産費国である日本の1/3近くで生産している。低生産費国の主な要因は単に飼料費が安いばかりではなく,安い労働費の影響が大きい。中生産費国は主としてアメリカなどで,近代的技術ばかりでなく,飼料費が安いことに基づく。高生産費国は飼料の輸入国であり,やや高くなるばかりでなく,賃金が高くなる。高労働費を節約するため施設化が進む場合,労働費や施設費を個々に比較するのでなく,同じく労働節減機能をもつものとして施設•労働費として比較されるべきである。<br>マーケティングマージンをみると,日本はその近代的設備を導入しているものの,労賃率は高く,飼料費も高い。<br>これらの結果から,各国に生産費,価格水準の比較に当たっては飼料費,雛費の直接費ばかりでなく間接費が重要となる。とくに間接費のうちでも労働費,施設費を合体した施設•労働費として比較すべきである。
著者
杉山 道雄 畦上 光弘
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.391-407, 1985-12-15

従来,農業経営学において生産の規模,形態,組織に関するもの,いわば生産管理に関する研究は多いにもかかわらず,販売管理については少なかったといえよう。そこで本研究は,岐阜県下144戸の採卵経営の販売構造や販売管理のあり方を検討したものである。採卵経営が飼料商や農協に完全販売委託を行なっている経営が50%以上,さらに単一取引先である場合が70%に達する。採卵経営の羽数規模拡大につれて,kg当り販売価格が上昇しているのは,取引先の多数化,それによる価格交渉の機能などによる。岐阜県を地域別にみた場合,西南濃,東中濃は東京卵価圈にあり,東濃は名古屋卵価圏にある。けれども飛騨は名古屋相場を利用するとはいえ,飛騨卵価圈を形成している。これは名古屋卵価圏とはいえ飼料配送などから孤立した卵価圏を形成しているからだとみられる。個別経営の行なっている販売管理をG.P処理の有無と販売先の単複により類型化すると次のようになる。第1形態はG.P処理を行なわず単一販売先のもの(完全販売委託型),第2形態はG.P処理を行なわないが販売先が複数のもの(不完全販売委託型),第3形態はG.P処理を行なうが販売先が単一のもの(不完全販売管理型),第4形態はG.P処理を行ない販売先が複数のもの(完全販売管理型)である。生産者受取卵価は形態1では304円,形態2で313円で+9円,第3形態で322円で+9円,第4形態で334円で+12円と高くなり,第1形態との差は30円である。G.P未処理の平均は306円でG.P処理は330円で24円の差である。以上のように販売管理による収益増は生産管理にも匹敵する重要な位置にあり,経営の意志決定をする場合にも重要な分野である。
著者
イダマルゴダ アルナシリ 杉山 道雄 小栗 克之 荒幡 克己 甲斐 諭 柳 秦春
出版者
日本万国家禽学会
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.234-244, 1998-07-25
参考文献数
7
被引用文献数
1

世界主要都市における鶏卵価格の内外価格差は,かなり大きいことが指摘されてきたが,その卵価水準に最も影響する生産費と流通マージンの国際比較分析について飼料費を除き,殆ど研究されていない。研究は国内でなされても国際比較はなされていないのは,生産費の概念が統一されず,不明確であったことにもよっている。<br>本研究は鶏卵生産費の概念を直接費(飼料費十ひな費)と間接費(労働,建物費,機械,道具費,農薬費等)として,1996年世界20ヵ国の政府,大学機関にメールメリッドで調査票を送付し,15ヵ国につき回答を得て比較分析を行ったものである。調査国にはアメリカ,カナダ,イギリス,オラング,ブラジル,インド,中国,バングラディシュ,ネパール,スリランカ,イラン,サウジアラビア,日本,韓国,台湾の15ヵ国である。これらの国は低生産費国,中生産費国,高生産費国に大別されるが,低生産費は高生産費国である日本の1/3近くで生産している。低生産費国の主な要因は単に飼料費が安いばかりではなく,安い労働費の影響が大きい。中生産費国は主としてアメリカなどで,近代的技術ばかりでなく,飼料費が安いことに基づく。高生産費国は飼料の輸入国であり,やや高くなるばかりでなく,賃金が高くなる。高労働費を節約するため施設化が進む場合,労働費や施設費を個々に比較するのでなく,同じく労働節減機能をもつものとして施設&bull;労働費として比較されるべきである。<br>マーケティングマージンをみると,日本はその近代的設備を導入しているものの,労賃率は高く,飼料費も高い。<br>これらの結果から,各国に生産費,価格水準の比較に当たっては飼料費,雛費の直接費ばかりでなく間接費が重要となる。とくに間接費のうちでも労働費,施設費を合体した施設&bull;労働費として比較すべきである。
著者
ヴイルヘルム ヴィントホルスト ハンス 杉山 道雄 大島 俊三
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.1162-1168, 2009-12

輸出と貿易流通における動向分析。過去数十年において、USAは、大量なブロイラー肉の輸出量で、世界をリードする国であった。しかしながら、この状況は、ブラジルがUSAを追い越した。2004年に変わってしまった。それ以降、ブラジルの輸出業は単にその地位を維持できたのみならず、輸出量においてUSAの競争者との差をますます広げてきた。2007年、ブラジルはUSAよりも670,000tも多く輸出した。2008年には850,000tも多く輸出すると予測されている。このような展開にもかかわらず、ブラジルの家禽肉生産の部門別や地域別の様態に関する詳細な研究がほとんどないのは意外である。本報告はこのギャップを埋めようとするものである。
著者
Windhorst Hans Wilhelm 杉山 道雄 大島 俊三
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.325-329, 2009-03

・2002年と2007年の間にEUの鶏卵生産は7.4百万tから7.2百万t、すなわち2.5%減少した。・この間に世界の鶏卵生産が急速に増加したので、世界生産量に占めるEUの生産量は12.4%から10.6%に減少した。・分析対象期間を通じて自給率はかなり安定していた。・2002年と2007年の間において鶏卵生産の上位7カ国の生産割合は72.8%から73.5%に増加した。・EU加盟国は優位な世界鶏卵貿易国であり、そのシェアは約60%である。・EUにおいてオランダとスペインが先進鶏卵輸出国である。フランスとドイツは最大の鶏卵輸入国である。・オランダは鶏卵製品の優位な輸出国であり、鶏卵製品の輸入に関してはドイツが一位である。・鶏卵生産および貿易の将来は、伝染性の強い鳥疾病の制御、飼料価格の動向および通常のケージ飼育の禁止の影響に依存している。
著者
ハンス ウイルヘルム・ウインフォルシュト 杉山 道雄 鷲見 孝子
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.642-646, 2008-06

世界の牛肉、豚肉などの食肉生産が2020年にむけて先進諸国から発展途上国へと立地変動するということをホフマンなどと唱えて世界畜産会議でCompetitiveness of East Asian Livestock Productionと題して発表した。鶏肉の2016年への展望については本誌4月号で紹介しているが豚肉について紹介したい。豚肉の世界食肉生産の中に占める割合は過去10年以上にわたって38%以上でかなり安定している。けれども地域環境動態の観点から分析を進めてみよう。第1は世界における豚肉生産の地域動向と第2は豚肉貿易の地域別動向の変化を分析し、その上で第3はこれからの10年後の2014年にそれら豚肉生産と貿易がどのように変化するかを分析してみよう。
著者
杉山 道雄 畦上 光弘
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.409-421, 1985-12-15

鶏卵のG.Pセンターの分析,とりわけその販売管理の分析は少なかった。本報告では,農協型G.Pセンターの4事例の事例研究により,その概要,農家からの鶏卵買収価格,G.Pセンターの販売活動,販売戦略について検討した。その概要を述べ,考察したものである。NSGPは経済連型で地域流通型である。そのため全県下からの広域集卵であるが,岐阜市内などのスーパーマーケットに直売する(地域販売)ので配送費は少ないが集卵黄は多く要している。UGPは60名の専門農協で団地型のG.Pである。したがって集卵黄は不要である。鶏卵は全農経由でスーパーマーケットに出荷し,マーケティング活動は余り行なっていない。YGPは歴史の深い養鶏専問農協で,ダンボール詰めで東京出荷を行なう一方,地場出荷も行なっている。IGPはコンピューターにより農家からの買上げ価格を決定し,パック卵として東京出荷を行なっている。G.Pセンターの赤字経営が多いといわれる今日,利益をあげるために,いくつかの重要だといわれるマーケティング戦略を述べれば,以下のとおりである。(1)鶏卵をパック卵として小売機関に直売する一方,粉,液卵等加工卵として保管し,加工業者に廻すこと。(2)パック卵比率を高め,原料卵比率を低めること。(3)パック卵として地場・地域流通を増大させ,遠距離出荷を減少させること,これは配送費の節減のためでもある。
著者
杉山 道雄 伊藤 由香
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.221-240, 1988-12-25

ブロイラー経営の経営計画についての研究は極めて少ない。とくに円高による海外産ブロイラーの輸入増大傾向の下でブロイラー価格は低迷し,各ブロイラー経営はコストを国際水準である180円以下に抑えると共に,所得は家族経営の場合でも,専業型では500万円以上,兼業型でも300万円以上,企業型では,利子率以上の利潤を目標としなければならない。本研究では,東海地方の代表的なブロイラー経営を対策としながらも,ブロイラー経営計画策定とその方法の吟味を行ないながら,バセッティングメソッドで,家族経営(専業型,兼業型),企業経営の3タイプ別にコスト及び所得又は収益試算を行なった。本研究によれば専業型家族経営で年間251,230羽出荷4.2回転でコストは175.9円/1kg,所得は6,547, 041円,兼業型家族経営では年間出荷羽数,125,712羽で4.5回転でコストは176.3円/1kg,所得は363,664円を得られる計画である。企業型経営では3,122,280羽出荷4.5回転で,コストは166.9円,年間利益は3,599.1万円となった。これらを策定するには今迄いくつかの前提条件があり,その各々を予め,検討している。