著者
番匠谷 省吾
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.212-226, 2009-05-01 (Released:2011-08-25)
参考文献数
25
被引用文献数
1

本稿は,伐期を迎えた国産材産地における製材業に焦点を当て,原木供給,製材工場における木材の生産,流通という一連の過程の分析を通じて,製材業の生産構造について検討した.事例として取り上げたのは日本を代表する木材産地の一つである宮崎県都城市である.都城市の製材業に影響を与えている主な地域的要因は①他の国産材産地に比べてスギの伐期が早く,豊富な資源が存在した点,②行政の積極的な取組みにより流域林業,製材業が整備された点,③国内の乾燥材市場の成熟にいち早く対応し,市場での地位を築くことができた点,の3点である.このような環境下において,都城市の大規模業者は素材消費量,乾燥材生産量を増加させ,積極的な設備投資により効率化,無人化を進め,低コスト路線にシフトしつつある.一方で,中規模業者は原木消費量では維持,減少傾向にあり,乾燥材は生産しているものの,効率化,無人化の段階には達しておらず,低コスト路線にはシフトしていない.また,経営基盤が脆弱なため,安定した売上が見込める製品市場への出荷や,複数の製材工場による乾燥機の共同所有などの生残り戦略がみられる.