著者
白山 友里恵
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 アーカイブズ研究篇 = The Bulletin of The National Institure of Japanese Literature, Archival Studies (ISSN:18802249)
巻号頁・発行日
vol.51, no.16, pp.75-91, 2020-03-16

本論文は、民間病院におけるアーカイブズ構築のために、記録のおかれている情況や特性を整理し、そのモデルを提示することを目的とする。私たちの多くが病院で誕生し、亡くなる今日の社会において、そこで生み出される記録は私たちの生活や人生に密接に関わる。しかし、医療アーカイブズのなかでも病院の記録はアーカイブズ構築が未発達な分野であることが指摘されているが、医療関係者の側に立ったプランの提案がなされてこなかった。よって本論文では、医療アーカイブズのなかでも病院の記録に焦点を当て、アーカイブズ構築のために何が必要であるのかを検討した。 具体的には、関連する法律やガイドラインから病院における管理の現状を確認し、併せて病院の記録の特性を整理する。次に個人情報保護法と密接に関連する点に着目し、それゆえ医療関係者との協力が他分野よりも必要とされることを指摘する。このときアーキビストと連携する存在として、診療情報管理士に注目する。この役職は病院の記録のなかで扱いに慎重さが要請される診療記録を管理する存在であり、病院における一種のレコードマネージャーの役割を担っている。最後にアーキビストと診療情報管理士との連携を前提とした民間病院におけるアーカイブズ構築のモデルプランを検討することで、病院アーカイブズ構築に向けた展望としたい。