- 著者
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若岡 敬紀
水田 啓介
柴田 博史
林 寿光
西堀 丈純
久世 文也
青木 光広
安藤 健一
大西 将美
棚橋 重聡
白戸 弘道
伊藤 八次
- 出版者
- 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
- 雑誌
- 日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
- 巻号頁・発行日
- vol.120, no.3, pp.202-208, 2017-03-20 (Released:2017-04-19)
- 参考文献数
- 23
- 被引用文献数
-
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頭頸部領域に発生する神経内分泌小細胞癌は比較的まれであるが, 悪性度が高く早期にリンパ行性・血行性に転移を来し予後不良といわれている. またその発生頻度の低さから標準的な治療法は確立されていない. 今回われわれは2006年から2014年までに当科および関連病院で経験した頭頸部原発の神経内分泌小細胞癌8症例の治療法と経過について検討したので報告する. 平均年齢は60.9歳 (38~84歳), 男性3例, 女性5例であった. 原発部位の内訳は, 鼻副鼻腔3例, 耳下腺2例, 中咽頭2例, 下咽頭1例であった. 下咽頭の1例は, 扁平上皮癌が混在した混合型小細胞癌であった. 治療法は小細胞肺癌に準じた化学療法や放射線治療が主体であった. 1次治療の化学療法の内容は4例で白金製剤と VP-16 を使用していたが, 最近では症例を選んで3例で白金製剤と CPT-11 を使用していた. 1次治療終了後完全奏功と判断したのは5例あったがいずれも平均8.4カ月で再発した. 2次・3次治療で手術もしくは放射線治療を行うことができた2例は現在まで非担癌生存中である. 原病死した6例のうち, 所属リンパ節再発が制御できなかったのは1例, 遠隔転移が制御できなかったのは5例であり, 生存期間中央値は16.0カ月, 5年生存率は25%であった. 遠隔転移を制御することが予後の改善につながる可能性があり, そのための治療法の確立が望まれる.