著者
白濱 吉起 宮下 由香里 亀高 正男 杉田 匠平
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

2016年熊本地震に伴い,布田川・日奈久断層帯に沿って地表地震断層が出現した.地震断層は従来推定されていた布田川区間の北端を約4 km越え,阿蘇カルデラ内東部にまで及んだ.阿蘇カルデラ内に出現した地震断層は,立野付近から北東南西走向の右横ずれ変位を主体とするトレースと,東西走向の上下変位主体のトレースに分岐する.この内,東西方向の地震断層は濁川左岸の地溝帯に沿って断続的にやや左ステップしながら約2.5 km続く様子が確認された.この地溝帯が熊本地震のような断層活動によって形成された変動地形であるとすれば,地表地震断層が活断層である可能性が示唆される.そこで我々は,九州大学からの委託業務「平成28年熊本地震を踏まえた総合的な活断層調査」の一環として,新しく阿蘇カルデラ内に現れた地表地震断層が活断層であるか否か,また,活断層である場合はその活動履歴を明らかにすることを目的に,熊本県阿蘇郡南阿蘇村河陽沢津野地区においてトレンチ調査を実施した.掘削地点は立野地区から2 km東の2~4 mの崖に挟まれた地溝内に位置する.そこでは,地構内の平坦地を利用した水田に,幅20~30 mでほぼ並走する東西走向の二本の地表地震断層が確認された.南側のトレースは北落ち,北側のトレースは南落ちを示し,地形と調和的に中央部分が落ち込む様子が見られた.トレンチ掘削前にボーリング調査を行ったところ,地溝外のコアでは地下7~8 mで草千里ヶ浜降下軽石層(Kpfa)が見られたのに対し,地構内では地表から約16 m下で見られた.この深度の差は地形的な落差と比べると明らかに大きく,累積的な沈降が示唆された.そこで,南北の地震断層トレースを横切りつつ,導水管を避けるように,長さ34 m,幅7 m,深さ4 mのトレンチをクランク状に掘削した.壁面には地表地震断層につながる断層と,地層の変形が明瞭に確認された.地層は主に阿蘇火山を起源とするローム層で構成され,河川性堆積物は見られなかった.また,地層中には年代指標となる鬼界-アカホヤ火山灰,姶良Tn火山灰,Kpfaといった広域テフラが確認されるとともに,弥生土器が出土した.断層はトレンチ北側では南傾斜,南側では北傾斜を示した.地層は断層に近づくに従って緩やかに撓み下がり,その撓みに伴う開口亀裂が多数生じていた.断層で上下に地層が食い違うとともに,いくつかの層準では断層を境に地層の厚さが増しており,変位の累積が見られた.これらの観察結果と14C年代測定結果を元に,約3万年前以降の活動履歴の推定を行った.発表では本トレンチが示す活動履歴について議論する.
著者
白濱 吉起 宮下 由香里 吾妻 崇 東郷 徹宏 亀高 正男 鈴木 悠爾
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

日奈久断層帯は上益城郡益城町木山付近を北端とし,八代海南部に至る長さ約81 kmの断層帯である.日奈久断層帯は過去の活動時期から高野―白旗区間,日奈久区間,八代海区間に分けられる(地震調査研究推進本部 2013).2016年4月熊本地震に伴い,高野―白旗区間の北部から約6 kmの範囲に右横ずれによる地表地震断層が出現した(Shirahama et al., 2016).日奈久断層帯の将来の活動を知る必要があるが,これまでの調査では最新活動や活動間隔といった活動履歴の詳細はよくわかっていない.我々は,九州大学からの委託業務「平成28年熊本地震を踏まえた総合的な活断層調査」の一環として,日奈久断層帯の活動履歴をより詳細に明らかにすることを目的に,熊本県甲佐町白旗山出地区と宇城市小川町南部田地区の二か所においてトレンチ調査を実施した.本発表では特に山出地区において掘削されたトレンチ(山出トレンチ)が示す日奈久断層帯高野―白旗区間の活動履歴を紹介する.南部田地区の調査結果については東郷ほか(JpGU 2017)を参照されたい.山出トレンチの掘削地点は日奈久断層帯高野―白旗区間中央部に位置し,熊本地震に伴って出現した地表地震断層の南端に当たる.本地点における地震直後の調査では,付近の水田に東上がりの傾動変形とNE-SW方向に杉型雁行配列した開口亀裂が水田の畝に確認された.地震断層に直交するように長さ14m,幅10m,深さ4mのトレンチを掘削したところ,壁面に明瞭な断層と地層の変形が確認された.主要な断層は北面に2条,南面に4条見られ,それらはすべて東から南東傾斜で,ほぼ直立した東上がりの逆断層の様相を呈していた.地層は断層付近で東から西へたわみ下がるとともに,断層を境に上下の食い違いが生じていた.また,壁面には複数枚の腐植質シルト層が見られ,下位の層準ほど断層沿いの変位量が大きく,変位の累積が確認された.トレンチ内で見られる最下部の腐植質シルト層の14C年代は約15 kaを示しており,それ以降の複数回の活動による変形が示唆される.発表では本トレンチが示す日奈久断層帯高野-白旗区間の活動履歴を報告し,他区間の活動履歴との関係について議論する.