著者
白瀬 由美香
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.102-112, 2011-06-01 (Released:2018-02-01)

本稿は,英国における看護師の職務領域の拡大について,特に医薬品の処方への従事にまつわる問題を中心に検討した。看護師の役割に関しては,現在日本でも活発に議論されていることから,アメリカ型のナース・プラクティショナーの英国への導入経緯,処方などの拡大された業務を担う看護師の現況とその制度的背景に関して考察を行った。職務拡大の要因は様々あるが,養成システムの改革および上級資格の創設,NHS改革による地域包括ケア推進の2つが相互に関連し合い,処方看護師の導入等の多職種機能の再編がもたらされた。処方看護師はいまだ少数であるものの,患者の医薬品へのアクセスの改善が評価されている。一連の改革において重要だったのは,看護助産審議会という国から独立した自主規制機関が教育・資格登録・安全管理に責任をもつ点,業務範囲の設定が法律ではなく雇主との職務記述書に任されている点であり,それらが看護師制度の基盤となっていた。
著者
白瀬 由美香
出版者
国立社会保障・人口問題研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、イギリスの医療保障制度NHSの変遷について、医療圏と地域医療連携の展開という観点からその特徴について歴史資料等をもとに検証を行った。具体的には、(1)病院と診療所の関係、(2)医療従事者の業務内容の変化、(3)医療と生活支援との連携、(4)医療システムと患者との関係などにまつわる検討をした。患者の医療アクセスや医療機関の機能分化、医療従事者が果たした役割の変容を浮き彫りにすることにより、時代ごとのNHSの特性を多面的に示すことができた。