著者
林 政彦 白石 浩一
出版者
福岡大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

対流圏エアロゾルの観測に適した気球搭載型粒子計数装置を開発した。この装置を用いて福岡上空の大気エアロゾルの成層圏までの鉛直分布観測,偏光解消度観測を含む3波長ライダーによる光学特性の観測を実施し,その比較解析を行ってきた.福岡上空の境界層から成層圏までのエアロゾルの粒径分布・濃度その変動についての情報を得ている.これまでのところ,ライダーによって観測される自由対流圏の偏光解消度の高い層が粒径数マイクロメータ程度の巨大粒子をふくむエアロゾル群として存在していること,自由対流圏の非球形粒子を含むエアロゾル層が,相対湿度が70%を超えるような比較的湿った状態になっていることが多いことなどが明らかになった.無人航空機を用いて,中央九州高原部のエアロゾル鉛直分布観測を久住高原で,中国大陸から輸送されてくる混合層および自由対流圏最下層のエアロゾルの粒径分布観測およびサンプル回収を北部九州雷山および唐津湾上空で行った.北部九州で春季に採取したエアロゾル粒子のSEM-EDXの組成分析により個別粒子の存在状態の解析を行った.これらの知見と,衛星からのリモートセンシング情報の解析結果との比較検討を行っている.その結果,これまでに,日本上空に輸送されてくるまでの間に鉱物粒子と海塩成分と内部混合した変質粒子が,雲過程を経ないで形成されるのは,混合層が発達するとともに,混合層温度が海面温度より低い状態にあることが明らかになった.この結果から,海面による加熱と水蒸気,海塩粒子にともなう海上霧の形成が鉱物-海塩混合粒子形成を促進する重要な条件になっていることが示唆された.