- 著者
-
辻 雅善
- 出版者
- 福岡大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2015-04-01
先の研究において、毛髪中のFatty Acid Ethyl Esters(FAEE)が飲酒量に関連があることを示し、正確な飲酒量の把握を可能にした。一連の研究において、飲酒歴のない者の毛髪中にFAEEが検出され、受動喫煙ならぬ「受動飲酒」の存在を疑った。近年、受動喫煙の有害性は知られているが、「受動飲酒」はその存在自体明らかでない。そこで、「受動飲酒」が実際に起こりうるのかを確かめ、「受動飲酒」の有害性を検討するコホート研究の足掛かりとすることを目指している。平成28年度において、新生児の毛髪中FAEEはほぼ全て同居する親の飲酒により室内空気中に揮発されたものと仮定できることを示唆した。平成29年度では、一般集団における参加者(新生児含む)から得た毛髪中のFAEE濃度をGas Chromatography Mass Spectrometry(GC/MS)にて測定することを目的とした。しかしながら、新生児の毛髪は非常に軽く且つ多量に採取することが困難であるため、現行のGC/MSによる測定法では、FAEE濃度を測定することが難しかった。そこで、平成29年度の前半において、より微量なFAEE濃度を測定するため、GC/MS/MSによる測定法の確立を目指した。GC/MS/MS(SHIMADZU, Kyoto)にZBSV(20 m×0.18 mm×0.36 μm)-BPX5(25 m×0.15 mm×0.25 μm)カラム(SGE Analytical Science, Australia)及び固相マイクロ抽出法(SPME; SUPELCO, USA)を採用することで、より微量な濃度の測定を可能にした。後半は、確立した測定法により、参加者から得た毛髪中のFAEE濃度の測定を進めた。報告時現在、40組程度の参加者に協力頂いており、現在11組の測定を終えた。今後、残りを随時測定していく。