- 著者
-
白須 洋子
米澤 康博
- 出版者
- 日本ファイナンス学会 MPTフォーラム
- 雑誌
- 現代ファイナンス (ISSN:24334464)
- 巻号頁・発行日
- vol.24, pp.101-127, 2008-09-30 (Released:2018-12-07)
- 参考文献数
- 67
- 被引用文献数
-
2
本稿は,1997年から2002年前半までのいわゆる金融逼迫時における国内社債流通利回りの対国債スプレッド(杜債スプレッド)変動を実証的に分析し,その変動要因を明らかにすることを目的としている.分析の結果,金融逼迫時等の状況下では,投資家は,より流動性のある社債又は国債へ,あるいは,より安全性の高い高格付け債に資金需要を逃避させる,いわゆるflight to liquidityあるいはflight to qualityと言われる現象が見受けられた.前者は流動性制約を有する投資家の流動性需要によって,後者は投資家の危険回避度の高まりによってそれぞれ説明できることがわかった.また両現象のうちflight to liquidityの方が強いことも明らかになった.流動性に関しては,これまでの分析はマーケット・マイクロストラクチャーの視点から見た,執行コストを分析の対象としたものであったが,本稿は投資家の流動性需要という価格に直接的に影響を与える要因を取り上げた点に特長があり,従来の実証分析とは大きく異なる.