著者
平池 妙子 百木 和 羽生 大記
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.265-275, 2021-10-01 (Released:2021-11-24)
参考文献数
20

【目的】入院時の栄養状態を評価し,入院前と同じ療養環境に退院復帰できなかったものの特徴を明らかにすることを目的とした。【方法】2014年9月から2015年10月に入院した65歳以上の患者307名のうち,14日以内の急性期死亡退院及びターミナル目的の入院3名と入院時データ欠損23名,研究時点で入院中2名を除外した279名を解析対象とした。退院時の転帰として,在宅復帰あるいは入院前と同じ施設へ再入所となった者を復帰群,入院前と同じ療養環境への退院復帰が不可能であった者を非復帰群とし,入院時栄養状態について2群間の比較検討を行った。【結果】復帰群192名,非復帰群87名であった。復帰群に比べ非復帰群の方が高齢で,MNA-SF,Barthel Index,体格指数(BMI),下腿周囲長(CC),血清アルブミン値が低く,併存疾患が多く,平均在院日数が長かった。非復帰に寄与する入院時の要因を解析するために多変量Cox比例ハザード解析を行ったところ,入院時BMIが 20 kg/m2 未満であることがハザード比(HR)1.50(95%信頼区間:CI 0.90~2.50),CCが 31 cm未満であることがHR 1.30(95% CI 0.63~2.68),上腕筋囲が男性 22 cm未満,女性 20 cm未満であることがHR 1.42(95% CI 0.81~2.50)を示したが,いずれの栄養関連項目も非復帰に対して有意に関連する要因ではなかった。【結論】入院前と同じ療養環境に退院復帰できなかった者の特徴として,今回の検討においては検出できる差は認められなかった。
著者
下谷 祐子 鎌田 紀子 林 史和 百木 和 十河 光栄 山上 博一 渡辺 憲治 荒川 哲男 塚田 定信 羽生 大記
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.1361-1367, 2012 (Released:2012-12-17)
参考文献数
11

【目的】病態が活動期で入院を要した炎症性腸疾患患者について、NSTによる適切な栄養学的介入を行うことを目的に栄養状態の評価を行った。【対象及び方法】潰瘍性大腸炎患者、クローン病患者に対し、入院時に身体計測、インピーダンス法を用いた身体組成分析、血液検査・血液生化学検査、SGAを用いて栄養学的評価を行った。【結果】入院を要した炎症性腸疾患患者は栄養状態が不良であることが示唆された。特に潰瘍性大腸炎患者は、急激な病状の増悪による炎症反応の亢進や重篤な消化器症状により、代謝の亢進、食事摂取量の低下が起こり、急激に低栄養状態に陥っていると考えられた。【結論】潰瘍性大腸炎はクローン病に比して栄養療法の必要性が低いと認識されがちであるが、急激な栄養状態の悪化のみられる潰瘍性大腸炎患者においても、原疾患の治療とともにNSTを通じた積極的な栄養学的サポートが必要であると考えられた。