著者
木下 節子 大森 正子 塚本 和秀 大塚 五郎 益子 まり 藤生 道子 高橋 司 星野 斉之
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR TUBERCULOSIS
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.82, no.10, pp.749-757, 2007-10-15 (Released:2011-05-24)
参考文献数
23

〔目的〕都市における結核発病の実態を報告し,今日の都市結核対策を検討する。〔方法〕症例研究を中心に行った。各症例の社会背景と結核菌DNA指紋分析を加えた菌情報により感染経路を調査した。〔結果〕2005年2月よりの1年5カ月の間に,川崎市川崎駅周辺の約500m四方の地域で9例の結核発病を確認した。9症例は16~55歳の比較的若い年齢層で,3例はホームレスであった。接触者健診の過程で,すべての症例が川崎駅周辺を生活活動圏としており,ネットカフェ等での関連が推測された。9例中7例はSM耐性菌であり,そのうち5例はDNA指紋分析により同一パターンを呈した。〔考察〕本事例はネットカフェ等の不特定多数利用施設を中心とした感染と考えられた。都市にはこのような施設が多く,若年者層とともにホームレス等の社会的弱者も利用する。結核未感染の若年者層と結核ハイリスク層とが閉鎖的空間を長時間共有する環境は,いったん結核菌の喀出があれば,容易に感染が起こりうることを示唆した。結核の都市偏在にはこのような社会環境も影響しており,それらを加味した総合的対策が求められる。
著者
本橋 隆子 小平 隆雄 中辻 侑子 松浦 和子 益子 まり 高田 礼子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.191-210, 2020-03-15 (Released:2020-04-01)
参考文献数
18

目的 都市生活者の近所付き合いの現状と日常生活の支援や近所の人・ボランティアによる受援に関連する要因を明らかにし,都市部における互助の課題とその解決策を検討する。方法 川崎市宮前区に居住する30歳以上の男女1,000人を対象に,「宮前区民のくらしを豊かにするためのアンケート」を実施した。本研究で使用した調査項目は,基本属性(性別,年代,居住形態など),近所付き合い,個人情報提供の意思,手段的日常生活活動(以下,IADL)に対する支援の意思と受援の意思である。IADL別の支援と近所の人・ボランティアによる受援に関連する要因を検討するために,基本属性,近所付き合い,個人情報提供の意思,IADLの対する支援の意思を独立変数とし,二項ロジステック回帰分析を行った。結果 407人を有効回答とした。近所付き合いは「生活面で協力」11.8%,「立ち話程度」33.3%,「あいさつ程度」46.0%,「付き合いなし」9.0%であった。支援してもよいと回答した人の割合が最も高かったIADLは声かけ・見守りで60.1%,次いでゴミ出しが51.7%であった。一方,声かけ・見守りを近所の人・ボランティアにお願いすると回答した人は27.7%,ゴミ出しは28.5%であった。次に「支援する」と有意に関連した要因は,女性,近所付き合い(立ち話程度・生活面で協力)であった。個人情報提供に対する抵抗は支援の阻害要因となっていた。「近所の人・ボランティアによる受援」と有意に関連した要因は,女性,各IADLに対する支援の意思であった。一方,持ち家は受援の阻害要因となっていた。結論 都市部では,定住や居住年数によって近所付き合いが親密になるとは限らなかった。都市部の近所付き合いはあいさつ程度が主流だが,日常生活の支援には会話ができる程度の近所付き合いが必要であることが明らかとなった。また,見守りやごみ捨てなどの簡単な日常生活の支援はしてもよいと考えている人が多い一方で,自分に支援が必要となった場合は近所の人・ボランティアにお願いする人は少なかった。しかし,近所の人・ボランティアによる受援は,各IADLの支援の意思が関連しており,支援と受援には相互関係があった。都市部における日常生活の「互助」の促進には,会話ができる近所付き合いを目指すだけでなく,支援を経験する機会を増やす取り組みが必要であることが示唆された。
著者
木下 節子 大森 正子 塚本 和秀 大塚 吾郎 益子 まり 藤生 道子 高橋 司 星野 斉之
出版者
一般社団法人 日本結核病学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.82, no.10, pp.749-757, 2007-10-15
参考文献数
23
被引用文献数
7

〔目的〕都市における結核発病の実態を報告し,今日の都市結核対策を検討する。〔方法〕症例研究を中心に行った。各症例の社会背景と結核菌DNA指紋分析を加えた菌情報により感染経路を調査した。〔結果〕2005年2月よりの1年5カ月の間に,川崎市川崎駅周辺の約500m四方の地域で9例の結核発病を確認した。9症例は16~55歳の比較的若い年齢層で,3例はホームレスであった。接触者健診の過程で,すべての症例が川崎駅周辺を生活活動圏としており,ネットカフェ等での関連が推測された。9例中7例はSM耐性菌であり,そのうち5例はDNA指紋分析により同一パターンを呈した。〔考察〕本事例はネットカフェ等の不特定多数利用施設を中心とした感染と考えられた。都市にはこのような施設が多く,若年者層とともにホームレス等の社会的弱者も利用する。結核未感染の若年者層と結核ハイリスク層とが閉鎖的空間を長時間共有する環境は,いったん結核菌の喀出があれば,容易に感染が起こりうることを示唆した。結核の都市偏在にはこのような社会環境も影響しており,それらを加味した総合的対策が求められる。
著者
高橋 啓子 山内 博 益子 まり 山村 行夫
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.613-618, 1990-06-15 (Released:2009-02-17)
参考文献数
19
被引用文献数
3 7

We studied the role of S-adenosylmethionine (SAM) as a methyl group donor in the methylation of inorganic arsenic in mammalians.The SAM and S-adenosylhomocysteine (SAH) levels in the livers of untreated hamsters were 74.3±8.2 and 40.0±6.4nmol/g, respectively. The SAM level was 63.9±6.5nmol/g following oral administration of 1.5mg/kg of arsenic trioxide, which was 14% lower than the control level (t-test, p<0.05). This fall of the SAM level in the liver presumably derived from the SAM having acted as a methyl group donor.Oral administration of 1.5mg/kg of arsenic trioxide once only to hamsters pretreated intraperitoneally with 2.0mg/kg of SAM once only gave the following arsenic levels in the liver and urine. The dimethylated arsenic (DMA) levels in the livers of hamsters treated with SAM plus arsenic trioxide were significantly high, that is, 2 times as high as the control value at 6 hours, and 1.5 times as high as the control value at 24 hours after the administration of arsenic trioxide. The urinary DMA excretion rate in the hamsters treated with SAM plus arsenic trioxide during the first 24 hours after the administration was significantly higher, that is, higher by 36%, than the control value. The urinary DMA excretion rate following pretreatment with SAM was not dose-dependent. Pretreatment with methionine failed to exert any significant acceleratory effect on the methylation of arsenic trioxide.The decreasing pattern of the SAM level in the liver following administration of arsenic trioxide and the DMA behavior in the liver and urine following administration of SAM and arsenic trioxide revealed that SAM accelerated the methylation of inorganic arsenic. In other words, it appeared that SAM could be a very potent methyl group donor to inorganic arsenic.