著者
岸 磨貴子 久保田 賢一 盛岡 浩
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.251-262, 2010
被引用文献数
1

本研究では,研究プロジェクトをベースとした特徴ある大学院教育を実践している研究室を実践共同体の分析的視座から捉え,院生が研究プロジェクトに十全的に参加していく過程について調査を行った.研究の対象となったX大学大学院A研究室では,地域社会や企業など大学外の組織と連携した研究プロジェクトを継続的に実施している.6名の院生に対して半構造化インタビューを行い,グラウンデッド・セオリー・アプローチに基づいて分析した.分析の結果,院生は,研究プロジェクトにおいて多様な立場の他者,大学外の組織と連携した活動,そして研究室の文化と相互に作用することで,大学外の組織と連携して研究を行うようになり,研究プロジェクトに十全的に参加していたことが明らかになった.このような研究活動は,個々の院生の充実感・達成感により価値付けられ,院生の研究プロジェクトへの十全的参加を方向付け,研究活動の必要な知識・技術を習得させることを促していた.