著者
久保田 賢一
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.12-18, 2003-12-01 (Released:2014-12-01)
被引用文献数
1

情報通信技術の発展に伴い、構成主義に基づく教育理論が注目を集めるようになった。実証主義と構成主義の知識観の比較を通して、構成主義に基づく教え方・学び方はどのようなものか検討を加える。構成主義に基づく教育は、教え方・学び方だけでなく、評価方法、研究方法論、さらには学習を取り巻くシステムにも変容を迫る。
著者
浅井 和行 久保田 賢一 黒上 晴夫
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.35-49, 2009-03-31

メディア・リテラシー教育の重要性は,近年幅広く認識されつつあるが,実践の広がりや定着の度合いは,十分であるとはいえない。メディア・リテラシー教育を公教育の中にカリキュラムとして正式に位置づけ,実践を行っているイギリスとカナダ,そしてオーストラリアのメディア・リテラシー教育カリキュラムを比較し,日本のメディア・リテラシー教育を改善するための留意点を検討した。その結果,日本におけるメディア・リテラシー教育のカリキュラムは,(1)長期的なもの(2)批判的思考について系統的に教えるもの,(3)教科横断的なもの,という3つの留意点をもとに考案すべきものであることが分かった。また,実際の教育を実践していくにあたっては,教員養成や教員研修においてメディア・リテラシー教育をとりあげていくことも大切であることが確認できた。
著者
久保田 賢一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.163-173, 1997
参考文献数
28
被引用文献数
2

質的研究の重要性は教育工学分野においても,次第に認知されるようになってきた.しかし,まだ当学会内において質的研究に関する評価基準は十分に確立されているとは言えない.そこで本稿では,量的研究と質的研究のパラダイムの違いが,研究方法や評価基準の違いに関係してくることを明らかにする.研究方法論の違いは,単なる手法の違いではなく,パラダイムの基本前提に根ざしたものであり,量的研究の評価基準をそのまま質的研究に当てはめることはできない.そのため,質的研究の評価をするためには量的研究とは違った基準を設定する必要がある.また,質的研究には多様なアプローチがあり,厳密な基準を一元的に当てはめることも適切ではないことに言及し,これからの教育工学における質的研究の評価について展望する.
著者
内垣戸 貴之 中橋 雄 浅井 和行 久保田 賢一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.587-596, 2006
参考文献数
23
被引用文献数
1

日本教育工学会において,研究方法論に関する議論が活発に行われている.その中でも特に,教室内でのコミュニケーションなど,研究対象に対する深い理解が必要な場合において,質的研究法の価値が認められつつある.本論文では,教育工学における質的研究の重要性について確認しながら,質的研究を論文としてまとめる上で重要な研究の妥当性と一般化の適用範囲の示し方について,いくつかの観点を提案する.そして,具体的にそれらが日本教育工学会論文誌の研究論文において,どのような形で示されているか分析し,質的研究論文のまとめ方について考察する.
著者
三宅 貴久子 久保田 賢一 黒上 晴夫 岸 磨貴子
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.Suppl., pp.221-224, 2018-03-01 (Released:2018-03-01)
参考文献数
8

本研究の目的は,児童が持つルーブリックに対するイメージを分析することを通して,教師と児童が共同的にルーブリックを作成する意味について明らかにすることである.ルーブリックは,教師が児童のパフォーマンスを質的に評価するための道具として活用されることが多い.同時に,授業において,教師と児童が共同的に学習目標を設定するための道具としても利用されている.本研究では,教師と児童が共同的にルーブリックを作成することの意義を,児童の観点から明らかにする.そのため,A 小学校の4年生64名に対してイメージマップを活用した調査を行った.分析の結果,児童はルーブリックを共同的に作成するプロセスを通して,学習目標を意識し,主体的に学習活動に取り組んでいることがわかった.さらに,学習目標を自分で設定することの重要性とその方法についても学んでいた.一方で,一部の児童の発言を中心に目標設定されてしまうことへの抵抗感,目標設定に授業の多くの時間を費やす必要性への懐疑,活動目標を設定することへ参画することの難しさがあることがわかった.
著者
岸 磨貴子 久保田 賢一 盛岡 浩
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.251-262, 2010
被引用文献数
1

本研究では,研究プロジェクトをベースとした特徴ある大学院教育を実践している研究室を実践共同体の分析的視座から捉え,院生が研究プロジェクトに十全的に参加していく過程について調査を行った.研究の対象となったX大学大学院A研究室では,地域社会や企業など大学外の組織と連携した研究プロジェクトを継続的に実施している.6名の院生に対して半構造化インタビューを行い,グラウンデッド・セオリー・アプローチに基づいて分析した.分析の結果,院生は,研究プロジェクトにおいて多様な立場の他者,大学外の組織と連携した活動,そして研究室の文化と相互に作用することで,大学外の組織と連携して研究を行うようになり,研究プロジェクトに十全的に参加していたことが明らかになった.このような研究活動は,個々の院生の充実感・達成感により価値付けられ,院生の研究プロジェクトへの十全的参加を方向付け,研究活動の必要な知識・技術を習得させることを促していた.
著者
岸 磨貴子 今野 貴之 久保田 賢一
出版者
多文化関係学会
雑誌
多文化関係学 (ISSN:13495178)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.105-121, 2010 (Released:2017-03-28)

本研究の目的は、インターネット上での異文化間の協働を実践共同体の枠組みで捉え、実践共同体が組織されるプロセスを明らかにすることで、異文化間の協働を実現する学習環境デザインのための要件を提示することである。日本とシリアの児童・生徒が、協働して物語を創作する実践を研究事例とし、実践共同体を構成する3つの次元である「共同の事業」「相互の従事」「共有されたレパートリー」が組織されるプロセスを明らかにする。本事例における「共同の事業」とは、絵本の共同制作である。また、絵本を完成するために、児童・生徒が協働し、相互に助け合うことを「相互の従事」とし、その中で、絵本を創作するために必要な計画の立て方、物語の書き方、表現などを「共有されたレパートリー」と捉える。日本とシリアの児童・生徒の学習記録とフィールド調査で得たデータをグラウンデッド・セオリー・アプローチに基づき分析した。その結果、児童・生徒は、協働が不可欠な状況において、物語制作に相互に従事し、物語の作り方、コミュニケーションの方法、協働で創作する意味などのレパートリーを共有した。3つの次元の組織化のプロセスから、インターネット上での異文化間の協働を促すためには、協働が不可欠な課題の設定、学習者間の相互従事を促すための支援のデザイン、学習者間の協同的学習を促す自由度と枠組みの設置という3つが学習環境デザインのための要件として提示できた。
著者
久保田 賢一
出版者
関西大学
雑誌
情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.3-14, 2021-01-30

本稿は,最終講義の内容をもとに,構成主義と学習環境デザインの概要について紹介をする.従来の学校教育では,個人に焦点を当て,知識やスキルを個人に蓄積することをめざすが,構成主義の学習では,個人ではなく,まわりとの関係性に焦点を当て,人や人工物との関わりのなかで,学ぶことを重視している.具体例として,アフリカの仕立屋の活動を取り上げ,徒弟が仕立屋という実践コミュニティに参加し,周辺的な仕事から次第に十全的な活動をになうようになり,一人前の仕立屋として成長していく過程を紹介する.また,活動理論は関係論的な観点から,学習者が一つの活動システムから越境して,他の活動システムとの交流を通して,発達していくプロセスを紹介する.大学のゼミにおいても,異質な活動システムとの交流が学生の学びに大きく影響していること明らかにした.構成主義の学習では,⑴主体的な知識構成,⑵状況に埋め込まれた学習,⑶異質な人との相互作用,⑷道具の活用の4つのガイドラインを提案している.
著者
岡野 貴誠 久保田 賢一
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.1-16, 2006-03-31 (Released:2017-07-18)

近年メディア・リテラシー研究の一つのアプローチとしてメディア観の変容に着目した研究が行われるようになってきた。それらの研究ではメディア観の変容過程はある程度明らかになりつつあるものの,その背景にある変容の要因に着目した研究は少ない。そこで本研究では関西大学で行われるメディア・リテラシー育成を目的とした「AVメディア制作論」の授業を事例に,学生が自由に議論する電子掲示板のグラウンデッド・セオリーに基づいた分析と30名の学生を対象とした半構造化インタビューを通して,学生のメディァ観の変容とその要因を検証する。
著者
遠海 友紀 岸 磨貴子 久保田 賢一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, no.Suppl., pp.209-212, 2012-12-20 (Released:2016-08-09)
参考文献数
4
被引用文献数
5

本研究の目的は,初年次教育の学習活動において学生自身が到達目標を設定することが,学生の自律的な学習態度へどのような影響を与えるのかを明らかにすることである.初年次教育の授業において学生がルーブリックを作成し評価に用いる実践を行った.質問紙調査の結果,ルーブリックを自分達で作成することにより,多くの学生が目標と省察を意識しながら学習活動を行ったことが分かった.また,学生の自由記述を分析した結果,ルーブリックを自分達で作成することは「目標への意識」「課題に対する動機づけ/責任感」「課題の成果に対する省察」「評価に対する公平感」「多様な評価の観点の気付き」と関連していたことが分かった.
著者
岸 磨貴子 今野 貴之 久保田 賢一
出版者
多文化関係学会
雑誌
多文化関係学 (ISSN:13495178)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.105-121, 2010

本研究の目的は、インターネット上での異文化間の協働を実践共同体の枠組みで捉え、実践共同体が組織されるプロセスを明らかにすることで、異文化間の協働を実現する学習環境デザインのための要件を提示することである。日本とシリアの児童・生徒が、協働して物語を創作する実践を研究事例とし、実践共同体を構成する3つの次元である「共同の事業」「相互の従事」「共有されたレパートリー」が組織されるプロセスを明らかにする。本事例における「共同の事業」とは、絵本の共同制作である。また、絵本を完成するために、児童・生徒が協働し、相互に助け合うことを「相互の従事」とし、その中で、絵本を創作するために必要な計画の立て方、物語の書き方、表現などを「共有されたレパートリー」と捉える。日本とシリアの児童・生徒の学習記録とフィールド調査で得たデータをグラウンデッド・セオリー・アプローチに基づき分析した。その結果、児童・生徒は、協働が不可欠な状況において、物語制作に相互に従事し、物語の作り方、コミュニケーションの方法、協働で創作する意味などのレパートリーを共有した。3つの次元の組織化のプロセスから、インターネット上での異文化間の協働を促すためには、協働が不可欠な課題の設定、学習者間の相互従事を促すための支援のデザイン、学習者間の協同的学習を促す自由度と枠組みの設置という3つが学習環境デザインのための要件として提示できた。
著者
遠海 友紀 岸 磨貴子 久保田 賢一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.209-212, 2012
参考文献数
4

本研究の目的は,初年次教育の学習活動において学生自身が到達目標を設定することが,学生の自律的な学習態度へどのような影響を与えるのかを明らかにすることである.初年次教育の授業において学生がルーブリックを作成し評価に用いる実践を行った.質問紙調査の結果,ルーブリックを自分達で作成することにより,多くの学生が目標と省察を意識しながら学習活動を行ったことが分かった.また,学生の自由記述を分析した結果,ルーブリックを自分達で作成することは「目標への意識」「課題に対する動機づけ/責任感」「課題の成果に対する省察」「評価に対する公平感」「多様な評価の観点の気付き」と関連していたことが分かった.
著者
山室 公司 久保田 賢一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, no.Suppl., pp.1-4, 2010-12-20 (Released:2016-08-07)
参考文献数
11
被引用文献数
3

本研究の目的は,教育工学の研究方法と研究対象について分析し,今後の研究の方向性を展望することである.2003年度から2008年度まで6カ年分の「日本教育工学会論文誌」に記載された論文を対象に研究方法と研究対象について分析を加えた.研究方法に関しては,量的研究法が約4分の3を占めていた.質的研究法のデータ収集法としてはインタビューが多用され,量的・質的両方を併用している研究もある.研究対象の校種別では高等教育が6割以上を占めている.量的研究の場合は被験者が学習者である研究が多く,校種は万遍なく分散しているが,質的研究の場合は研究対象が教授者もしくは高等教育の学習者に偏在していることなどが明らかになった.
著者
久保田 賢一 久保田 真弓 岸 磨貴子 今野 貴之 山本 良太 関本 春菜 鳥井 新太 井上 彩子 上館 美緒里 (山口 美緒里)
出版者
関西大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究の目的は、高等教育におけるグローバル人材を育成する学習環境をデザインするための要件を明らかにすることである。事例としてグローバルなフィールドで働く卒業生を多く輩出するX大学を取り上げ、卒業生に対する調査から現在とつながる学習環境について抽出した。結果、①大学入学前の学生個々の経験とグローバルなフィールドで働くことの接続、②本当にやりたいことの問い直しの機会、③意思を後押しする他者関係、④グローバルなフィールドで働くための領域設定と能力形成の機会、が学習環境として重要であることが示唆された。
著者
中橋 雄 大西 元之 岡野 貴誠 久保田 賢一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.21-24, 2006
被引用文献数
1

本研究は,ディジタルメディア表現能力を高めるために模倣学習を行うWeb動画教材の開発と評価・改善プロセスについて報告するものである.先行研究の学習モデルに基づき,実際にDTP実習を支援する学習環境を開発した.その評価プロセスから,学習者が一人で模倣学習を完遂するために,システム面で改善すべき機能が明らかとなった.それらの機能を実装した結果,学習者が一人で模倣学習を完遂できるレベルに教材の質を高めることができた.ただし,学習者の個人差に配慮するべきいくつかの課題は残された.
著者
山室 公司 久保田 賢一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.1-4, 2010
参考文献数
11
被引用文献数
2

本研究の目的は,教育工学の研究方法と研究対象について分析し,今後の研究の方向性を展望することである.2003年度から2008年度まで6カ年分の「日本教育工学会論文誌」に記載された論文を対象に研究方法と研究対象について分析を加えた.研究方法に関しては,量的研究法が約4分の3を占めていた.質的研究法のデータ収集法としてはインタビューが多用され,量的・質的両方を併用している研究もある.研究対象の校種別では高等教育が6割以上を占めている.量的研究の場合は被験者が学習者である研究が多く,校種は万遍なく分散しているが,質的研究の場合は研究対象が教授者もしくは高等教育の学習者に偏在していることなどが明らかになった.
著者
澤山 利広 久保田 賢一 久保田 真弓 金子 洋三 福永 敬 津川 智明
出版者
関西大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、新たな半世紀を見据えた我が国の政府系国際協力ボランティア(国際V)に関する政策提言である。まず、自己変革の途上にある米国と韓国のV事業に込められた国家戦略等を整理した。次に、ブータン、フィリピン、ガーナを対象に日米韓の国際Vの派遣実績をMDGs等の国際的なコンセンサスを踏まえ、派遣国側のODA大綱等と受入国側の開発計画等と照らし合わせて、傾向と特色を明らかにした。これらの省察を通じて、JOCV隊員の特性を礼節等とし、隊員自身自身にはコンピテンシーの向上が見られた。帰国隊員による国内還元については、専門技術支援とコーディネート業務に加え、社会開発活動に特筆すべき点を見出した。