著者
原田 洋 阿部 聖哉 目黒 伸一 持田 幸良
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

環境保全林の機能と構造を研究するため川崎市東扇島と熱海市の環境保全林を対象とした。リターフォール量とその季節的変動を明らかにすると同時に林床に堆積するリターの分解率を測定し、土壌動物の現存量との関係から、環境保全林の管理手法の基礎を確立するとともに、土壌動物相から環境保全林の自然性の回復の度合いを判定すること、樹木による煤塵の捕集量や樹種による付着量の差、ならびにCO2固定量の推定など環境保全林の機能と動態を総合的に把握することを目的としている。リターフォールの月別変化は東扇島では5月に落下量が急増し、夏期は少し減少するが、熱海では初夏にピークが現われている。この落下パターンの違いは熱海のほうが標高が高いため、温度の上昇時期が1.5ヶ月ほど遅くなることによるものである。リター堆積量と落葉量から平均分解率を算出すると、東扇島では64%、熱海では84%であった。これは落葉を摂食する土壌動物の現存量の差によるものであろう。CO2固定量は、m^2あたり熱海では31.3kg(平坦地)と58.7kg(マウンド上)で、1年間にそれぞれ9.1kg,8.4kg増加した。東扇島では23.4kgと25.1kgとなり、1.1〜1.2kg増加した。若齢林の熱海で高いのは立木密度の差によるもので、淘汰されるにしたがい一定量になるものと考えられる。樹幹流中煤塵量は熱海では9本の合計値で50〜60g、東扇島では6本の合計値で110〜170gとなった。樹木サイズは東扇島のほうが大きいが、煤塵量も多くなっている。また、雨量は林外前のほうが多いが,両地域とも林内雨中煤塵量が多く、環境保全林のもつ煤塵捕集機能の高さが確認された。土壌動物群数は熱海のほうが多く、土壌動物による自然の豊かさ評価においても高い値を示した。これは若齢林であっても周辺に土壌動物の供給源となる自然環境が存在しているからである。また、ササラダニ類による自然性の評価においても東扇島より熱海で高く、関東地方の社寺林や明治神宮林なみの高い評価となった。