著者
直井 一博 大谷 尚
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.247-258, 2003-12-20
被引用文献数
1

本稿は,英語学習のための合宿における英語使用経験を対象とするエスノグラフィのための理論的枠組みの考察である.最近の第二言語学習(SLA)研究によれば,第二言語使用の経験とは,主体が置かれた状況,すなわち,他者ならびに場面との対話の中で,文化的に適切な行為を選択する一連の出来事と見なすことが可能である.そしてその学習を捉えるためには,場における言語使用とそれを行う主体との複雑な関係性の理解を目指す,エスノグラフィの考え方が有用である.本稿に関係の深い理論的立場としては,「言語による社会化」という考え方,並びに,「実践のコミュニティ」の考え方が有益である.以上を背景にしたエスノグラフィにより,英語学習のための合宿を一事例とする,人々が共同で第二言語を用いて達成する場の理解を深めることが可能となり,さらに,学習共同体がCSCL等でネットワーク化されつつある現在の教育環境における第二言語学習の理解を深めることが可能になる.