著者
直江 寛明 木下 紀正 池辺 伸一郎
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.40, no.9, pp.671-679, 1993-09-30
被引用文献数
6

阿蘇火山博物館で測定している大気中の二酸化硫黄濃度が30ppbを越えた高濃度事象を対象に, 気象データと衛星画像や桜島噴煙の地上観測などのデータを用いて発生源の推定を行い, 特徴的な事例について気象条件との関連性について解析した.上層が東風系のとき, 阿蘇火山からの直接的な影響がみられ, 数百ppbに達する高濃度が長時間にわたってしばしば観測された.桜島は常時多量の噴煙と火山ガスを放出していて, 上層で南風系が卓越しているとき, 150km離れた測定点で30ppb以上, 時には100ppbを越える高濃度が検出された.二酸化硫黄濃度の日変化で特に高濃度が観測されるのは, 夜間に地表で放射冷却による接地逆転層が形成され阿蘇中岳火口からの火山ガスによる局所的な汚染濃度が極度に高められるとき, 及び九州が移動性高気圧の後面に位置し, 安定した大気中を桜島からの火山ガスが移流して混合層内の汚染濃度が高められたときと考えられる.
著者
直江 寛明 松田 佳久 中村 尚
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.687-700, 1997-06-25
参考文献数
10
被引用文献数
2

色々な基本場におけるロスビー波の伝播の様相を球面上のバロトロピックモデルの時間積分によって研究した。初めに、理想化した基本場における伝播を調べた。東西一様の基本場が強いジェット気流を持つ場合は、ジェット気流はロスビー波の導波管の働きをする。平均流と東西波数1 (又は2) の重ね合わせで基本流が構成されているときは, ジェットの入口から射出されたロスビー波はジェット気流の入口と出口の間の経度 (西風が強い所) を速やかに東に伝播する。そして、その波はジェットの出口付近で停滞し、そのエネルギーはそこに蓄積する。基本流の東西非一様性が大きいときは、基本流が順圧的に不安定になる。しかし、この不安定は弱いので、伝播の様相がこの不安定の影響を受けることはなかった。一方、基本場からの運動エネルギーの順圧的変換も波のジェットの出口付近での増幅に重要であることもわかった。つまり、ジェットの出口付近での波の増幅は、上流のエネルギー源からのそこへの波のエネルギー伝播とそれに基づくそこでの順圧的変換による増幅と理解される。次に、冬 (12月から2月) の観測データから得られた1か月平均の300hPa面での流れを基本流として、そこでの波の伝播を調べた。1986年の12月の場合、アジアジェットの入口と出口の間を東ヘ伝播したロスビー波はジェット出口付近で進行を妨げられ、その付近に停滞した。1984年1月の場合は、ロスビー波の経路はアジアジェットの出口において北大西洋ジェットに接続する東向きの経路と赤道向きの経路とに分岐した。このようにロスビー波の伝播特性は基本流の分布に強く依存することが例示された。