著者
今井 悦子 早川 文代 畑江 敬子 島田 淳子 相内 雅冶
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.45, no.8, pp.697-708, 1994-08-15
被引用文献数
2

5種類の目皿(細孔の直径2.4,3.4,4.8,6.8および9.6mm)を通した挽き肉(牛,豚および鶏の3種類)を用いてハンバーグ様試料を調製し,試料の官能的識別および物性に及ぼす粒度の影響を検討した.生肉粒,加熱後の肉粒の粒度を測定した結果,加熱による肉粒の収縮率は牛肉>豚肉>鶏肉であった.さらに粒度測定から,牛肉は,目皿の直径が異なる試料間の粒度の識別がもっともしやすく,また鶏肉は結着性がもっとも高いことが示唆された.試料中の水分の保ちやすさは,解凍試料では目皿の直径が大きい試料の方,加熱試料では小さい試料の方であり,さらに鶏肉>豚肉>牛肉という肉種による差があった.剪断破断歪みおよび凝集性は,目皿の直径が大きい試料ほど有意に大きく,また牛肉は他の肉種より,目皿の直径が異なる試料間での変化率が大きかった.これより,牛肉の物性は,目皿の直径が異なる試料間で識別しやすいことが示唆された.官能検査の結果,目皿の直径が異なる試料間で,切り口の粗さ,硬さ,弾力性および肉粒感は3種の肉ともにある程度識別できたが,識別のしやすさには肉種により差があり,牛肉≧豚肉≧鶏肉であることが分かった.この結果より,肉粒の粒度測定および物性測定による示唆が裏づけられた.肉の粒度を官能的に捉える指標の1つである肉粒感は,肉汁の流出率および解凍試料の保水力の2つの物性値で98%予測できることが分かった.また,2つの肉粒の体積の比が1.2〜1.5以上になると粒度の識別ができると考えられた.