著者
今井 悦子
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.183-191, 2002-12-25 (Released:2011-01-31)
参考文献数
15

宮城, 新潟, 京都, 広島および鹿児島を中心とした地域居住者に対し, 家庭内での属人器の実態および家族との共用に対する抵抗感をアンケート調査し, 前報の埼玉のデータを加えて地域比較を行った. その結果以下のことが明らかとなった.1. 回答者の属性ごとに食器の属人性を検討した結果, ほとんどのケースにおいて地域差が認められた. どの食器, どの属性においても埼玉は専用が特徴的に多く, 一方共用が多い地域としては飯碗と箸では鹿児島が, 汁椀では京都と広島が, 湯呑みでは広島が多く出現した. これらから食器の属人性には東高西低の傾向があると考えられた. また, 食器では湯呑みから, 年齢的には若い世代から, 地域差がなくなっていく可能性も示唆された.2. 食器の属人性に寄与する因子の検討を行った結果, 飯碗, 汁椀および箸では地域性が最も大きく寄与する因子であることが分かった. 湯呑みでは食事作りを担当している者の年齢の次に寄与する因子であった.3.食器共用への抵抗感について, 回答者の属性ごとに地域性を検討した結果, 湯呑みに対する抵抗感は一部のケースを除けば地域差がなかった. その他の食器は地域差が見られ, どの食器, どの属性においても鹿児島は抵抗感なしが特徴的に多かった. 京都, 広島も汁椀で抵抗感なしが多かった. 一方抵抗感ありは汁椀では埼玉が, 箸では新潟が, 飯碗では鹿児島を除く各地域が出現した. 抵抗感の高さも東高西低の傾向があると考えられた. また外食時の食器に対する抵抗感は地域差が全くなかった.4. 食器共用への抵抗感に寄与する因子を検討した結果, 箸および汁椀では地域性が最も大きく関与する因子であった. 飯碗では地域性は一部寄与する因子であり, 湯呑みおよび外食時の食器では地域性は全く寄与していなかった.5. 家族の中で配偶者と子どもとの共用に抵抗感があると答えたケースについて地域差を検討した結果, 子どもに対する抵抗感は配偶者に対する場合より地域差があるケースが少なかった. 地域差があったケースでは, 抵抗感なしは鹿児島が, 抵抗感ありは埼玉が特徴的に多かった.
著者
今井 悦子 早川 文代 松本 美鈴 畑江 敬子 島田 淳子
出版者
日本官能評価学会
雑誌
日本官能評価学会誌 (ISSN:1342906X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.108-115, 2002-09-15 (Released:2013-08-15)
参考文献数
7

The effect of granular size on the preference of samples was examined by preparing patties from three kinds of ground meat, i.e., beef, pork and chicken, which had been passed through one of five plates with orifice diameters of 2.4 - 9.6mm. The difference in preference according to the granular size of the pork and beef samples were large, while that of chicken was small. The consistency by the panelists in their granular size preference for the pork samples was higher than that for the beef samples, but the preference for the chicken was inconsistent. The patties of the most-preferred granular size were those prepared from ground meat that had been passed through a plate with an orifice diameter of 3.4 or 4.8 mm. This result indicated that the preference was related the physical properties of the patties.
著者
今井 悦子 畠山 美穂 中村 紀野 畑江 敬子 島田 淳子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.1233-1243, 1999-12-15
被引用文献数
1

19種類の物性の異なる材料を用い,粒としての認知可能な最小粒度(認知閾値)を粒度の識別の程度を官能検査により明らかにし,物性値との関係を明らかにした.認知閾値はセルロースの51μmから道明寺粉の270μmまでの間に分布した.また粒度が約1.19倍異なる二つの粒子の粒度の識別は全材料がある粒度以上で識別できた.そのある粒度(識別最小粒度)は材料により異なり,セルロースの124μmが最小でそばの487μmが最大であった.しいたけを除いては,すべて認知閾値<識別最小粒度であった.両粒度と各物性値との関係を検討した結果,比較的強固な構造をもち,吸水が緩慢で飽和吸水量も少ないような材料は,両粒度が小さいことが明らかになった.またそのような材料ほど粒度の識別なできなくなってもまだ1粒1粒の認知はできると考えられた.認知閾値は,非常に高い重相関係を持って(R=0.93),七つの物性値を用いた重回帰式で表すことができた.
著者
掛江 美和子 今井 悦子 村上 知子 香西 みどり 畑江 敬子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.2-14, 2004-02-20
被引用文献数
3

A questionnaire survey was conducted on the compatibility between four alcoholic beverages (beer, wine, sake, and chuhi sour) and various foods. Beer showed a relatively high score regardless of the food variety when the average value of each result was used ; therefore, the validity of the results was confirmed by applying a multivariate analysis by Quantification Method III and a sensory evaluation. The sensory perception by the evaluation panel for certain foods that go well with beer was confirmed. When the compatibility with beer was scaled from the results by Quantification Method III, eight foods (green soybean, Japanese fried chicken with soy sauce seasoning, Japanese barbecued chicken, grilled beef, sausage, fried chicken, dumpling, and grilled pork on a skewer) were considered to be clearly more favored than the other foods tested. The validity was also confirmed by the results of the sensory evaluation, which showed that the correlation was high between each ranking from the questionnaire and sensory evaluation. Furthermore, when the relationship with the degree of substitution of each food was investigated, there was a significant positive correlation with the lipid content and the "oiliness" score, and a significant negative correlation with the starch content. The salt content of each food had no significant correlation with its compatibility with beer.
著者
今井 悦子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.194, 2002-06-01 (Released:2003-07-29)

目的 属人器の実態の地域による違いを明らかにすることを目的とした。方法 2001年2月、放送大学の宮城、新潟、京都、広島および鹿児島学習センター所属の学生3,482名に対し、家族構成、食器の専用·共用状況と共用への抵抗感、外食の食器に対する抵抗感などをアンケート調査した。解析はχ2検定、CHAIDおよびコレスポンデンス分析を行った。結果 回収率は46%であった。1人世帯を除き、既に報告した埼玉のデータを加えて分析した。どの食器も、各地域の専·共·その他の割合には違いがあった。共用することへの抵抗感の有無は、飯碗、汁物椀および箸において地域差があった。食器の専用実態と共用に抵抗感ありの実態から見て、宮城と新潟、京都と広島はそれぞれ似ていた。
著者
今井 悦子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.76-81, 2000-02-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
34
被引用文献数
3
著者
渡邊 智子 梶谷 節子 中路 和子 柳沢 幸江 今井 悦子 石井 克枝 大竹 由美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

<b>【</b>目的<b>】</b>『次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理』のガイドラインに準じて聴き取り調査を行い,昭和35~45年頃までに残されて次世代に伝え継ぎたいと対象者が考えている家庭料理を収集した。ここでは,各地域のおやつについてその特徴を報告する。<br /><b>【方法】</b>千葉県の9地域(利根川流域,北総台地,東京湾奥,九十九里海岸,内房・館山地域,北総台地,房総湾奥部海岸地域,船橋地域)について聴き取り調査研究を行った。各地域のおやつついて,日常のおやつとハレのおやつに区分して検討した。<br /><b>【</b>結果<b>】</b> 日常のおやつは,食材の宝庫である千葉県の特徴を生かした生鮮果実(すいか,いちご,びわ,柿:房州海岸,柿,びわ,すいか:内房・館山地域,柿,りんご,みかん:北総台地),乾果実(柿:房州海岸・館山地域・北総台地)がみられた。幕張はさつまいも栽培が始まった地域であるが,さつまいももふかす,干しイモ,いも餅,芋羊羹として5地域で食べていた。米を用いたおやつには,おにぎり,ぼたもち,あられ,かきもち,すいとん,せんべい,もち草だんご,ポン菓子,性学(せいがく)もち(つきぬき餅:うるち米が原料)として全地域で食べられていた。てんもん糖(しょうが,ふき)は,北総台地や九十九里で食べていた。その他,パン,そばがき,うに,あけび,かき氷など多様なおやつを食べていた。<br /> はれのおやつは,ぼたもちが主で,重箱にごはん,あんこを順番に入れる作り方(北総台地・船橋地域)もあった。たまご寒天(九十九里海岸)は,寒天の中に黄色の卵が入り華やかなお菓子であった。他には,おしるこ,甘酒,赤飯,五目飯,餅菓子も食べた。<br />千葉県のおやつは,千葉県で採れる豊かな食材を家庭で料理したものがほとんどであった。
著者
今井 悦子
出版者
THE JAPAN ASSOCIATION FOR THE INTEGRATED STUDY OF DIETARY HABITS
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.121-127, 2002

家庭内で常に特定の人が使うことが決まっている食器を属人器というが, 属人器の実態を明らかにする手始めとして, 埼玉県居住者を中心とする2, 500名を対象とし, 郵送調査法を用いてアンケート調査を行った. 回収率は41.4%であった (家族2人以上の者に限った).<BR>調査の結果, 以下のことが明らかになった.<BR>1. もっとも専用率が高い食器は箸であり, 次いで飯碗, 湯呑みで, これらは8~9割方属人器として使われていた. 汁椀はほぼ半数が, 一方取り皿は約8%のみが属人器としていた.<BR>各食器の専用・共用実態と家族人数の間には関係がなく, 同居世代数との間には一部関係があった. また, 食事作りを担当している者の年齢との間には食器によっては有意差があり, 若い世代は専用が少なく, 高齢世代は専用が多かった.<BR>2. 食器の共用に対する抵抗感の有無を調べたところ, 抵抗感ありは箸が50.0%ともっとも高く, 次いで湯呑み (39%), 飯碗 (35%), 汁椀 (24%), 取り皿 (5%) であることが分かった. 抵抗感は, どの食器でも有意に女性にありが多く, 男性に少なかった. また, 年齢とは関係がなく, 家族人数とは一部関係が見られただけだったが, 同居世代数とは関係があった. すなわち, どの食器も3世代以上の世帯では抵抗感ありが多く, なしが少なく, 逆に1または2世代世帯では抵抗感ありが少なく, なしが多かった.<BR>3. 家族の中の誰に対して抵抗感があるか調べたところ, どの食器も義理の関係にある者に対しての抵抗感がもっとも強いことが分かった. 次いで父母, 兄弟, 配偶者, 子どもの順であった.<BR>4. 日常の家族との食生活と抵抗感との関係をみたところ, 抵抗感ありの人々では, 食事中家族団欒がほとんどなしが多く, 団欒ありが少なかった.5. 食器共用への抵抗感に寄与する因子を見つけるためにCHAIDを行った結果, 抵抗感なしの人々は実際にその食器を共用していること, また, 抵抗感ありの人々はまず食器は専用としていて, さらに性や同居世代数, または家族との日常の共食実態などが抵抗感の有無に影響していることが示唆された.
著者
掛江 美和子 今井 悦子 香西 みどり 畑江 敬子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.200-209, 2003-08-20
被引用文献数
3

Four alcoholic beverages (beer, wine, sake and chuhi sour) were investigated to evaluate the sensory compatibility between these alcoholic beverages and foods. A total of 876 consumers, including brewery staff in the Kanto area, participated in this study. The participants were asked to grade these beverages on a 6-point scale according to the perceived compatibility with various foods. The average scores indicate that each alcoholic beverage had varying affinity to different foods in the minds of consumers. As a whole, beer tended to score relatively highly regardless of the food variety, whereas wine was considered to have more specific affinity to certain types of food. When the foods were ranked according to the compatibility scores with a particular alcoholic beverage, beer and chuhi exhibited broadly similar profiles. The results are also discussed of a principal component analysis for mapping foods.
著者
今井 悦子
出版者
聖徳大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

嚥下補助食品は、高齢者施設では介護職員等が経験と勘によって使用していた。嚥下補助食品を添加した食べ物の嚥下しやすさを客観的に評価するために、嚥下過程を測定することのできる生体計測法(嚥下筋の表面筋電図、咽頭部の超音波エコー)を用いて検討したところ、食べ物の嚥下しやすさを評価するのは難しいことが示唆された。嚥下補助食品の利便性を高めるために、食べ物の嚥下しやすさを客観的に評価することのできる測定法のさらなる検討が必要と考える。
著者
今井 悦子 早川 文代 畑江 敬子 島田 淳子 相内 雅冶
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.45, no.8, pp.697-708, 1994-08-15
被引用文献数
2

5種類の目皿(細孔の直径2.4,3.4,4.8,6.8および9.6mm)を通した挽き肉(牛,豚および鶏の3種類)を用いてハンバーグ様試料を調製し,試料の官能的識別および物性に及ぼす粒度の影響を検討した.生肉粒,加熱後の肉粒の粒度を測定した結果,加熱による肉粒の収縮率は牛肉>豚肉>鶏肉であった.さらに粒度測定から,牛肉は,目皿の直径が異なる試料間の粒度の識別がもっともしやすく,また鶏肉は結着性がもっとも高いことが示唆された.試料中の水分の保ちやすさは,解凍試料では目皿の直径が大きい試料の方,加熱試料では小さい試料の方であり,さらに鶏肉>豚肉>牛肉という肉種による差があった.剪断破断歪みおよび凝集性は,目皿の直径が大きい試料ほど有意に大きく,また牛肉は他の肉種より,目皿の直径が異なる試料間での変化率が大きかった.これより,牛肉の物性は,目皿の直径が異なる試料間で識別しやすいことが示唆された.官能検査の結果,目皿の直径が異なる試料間で,切り口の粗さ,硬さ,弾力性および肉粒感は3種の肉ともにある程度識別できたが,識別のしやすさには肉種により差があり,牛肉≧豚肉≧鶏肉であることが分かった.この結果より,肉粒の粒度測定および物性測定による示唆が裏づけられた.肉の粒度を官能的に捉える指標の1つである肉粒感は,肉汁の流出率および解凍試料の保水力の2つの物性値で98%予測できることが分かった.また,2つの肉粒の体積の比が1.2〜1.5以上になると粒度の識別ができると考えられた.
著者
今井 悦子 田丸 理恵 畑江 敬子 島田 淳子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.243-253, 1998-03-15
被引用文献数
5

口腔内で食品粒子を粒子として認識する際の最小粒度および粒子の大きさの識別の程度について官能的に明らかにし, さらにそれらと食品物性との関係を検討した.細砕した9種類の食品材料を約1.2倍の等比間隔にある標準ふるいを用いて水中でふるい分けし, 試料(水懸濁液)とした.認識最小粒度は, セルロースに34μmが最小で, 最大は1%寒天ゲルの380μmであり, 材料によって著しく異なった.また粒度の識別の程度は, はんぺんとパン以外は, ある粒度以上において平均1.2倍異なる粒度の識別ができること, また, そのある粒度(識別最小粒度とする)は材料によって異なることが明らかになった.以上の認識最小粒度および認識最小粒度は, 材料の物性値のうち水分含量, 変形定数および密度等の物性値と関係が深いと考えられた.そこで認識最小粒度と識別最小粒度を, 材料の物性値を用いて数値化することを重回帰分析を用いて試みたところ, それぞれ変形定数などを用いた重回帰式で表すことができた.