著者
早川 文代 井奥 加奈 阿久澤 さゆり 齋藤 昌義 西成 勝好 山野 善正 神山 かおる
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.337-346, 2005 (Released:2007-04-13)
参考文献数
40
被引用文献数
19 31

日本語のテクスチャー用語を収集し, 以下の知見を得た. 116人を対象としたアンケートによって用語を収集し, 討議により整理したところ332語を得た. これに文献調査の結果から94語を追加して426語とした. テクスチャーの研究者55人に用語の妥当性を評価させ, 専門家4人に面接調査を行って用語を削除, 追加し, 最終的に445語のテクスチャー用語を得た.1960年代に収集されたテクスチャー用語と比較したところ, “もちもち” “ぷりぷり” など新しい用語がみられた. また, 中国語などと比較すると, 日本語のテクスチャー表現は数が多いことが示された.テクスチャー用語の約70%は擬音語・擬態語であることから, 日本語のテクスチャー表現に擬音語・擬態語が重要な役割を果たすことが示唆された.
著者
早川 文代
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.311-322, 2013-07-15 (Released:2013-08-31)
参考文献数
33
被引用文献数
4 7

Texture terms play an important role in food texture studies, especially in sensory evaluation. A well-organized texture lexicon assists researchers with sensory evaluation of texture. In this study, Japanese texture terms were collected, characterized, and classified in order to develop a texture lexicon. First, 445 texture terms in Japanese were collected from questionnaires to food scientists/technologists, literature searches, and interviews with experts. Next, foods associated with the 445 Japanese texture terms were collected and analyzed. The spatial configuration of the terms showed the structure of the Japanese texture vocabulary. The terms were then classified hierarchically by questionnaires and multivariate analyses. The classification in this study revealed some characteristics unique to the Japanese texture vocabulary, such as a wide variety of terms concerned with stickiness and elasticity. Additionally, the food texture vocabularies of Japanese consumers were investigated through questionnaires. The data showed that the recognition of some terms differed according to the gender, age and/or region of consumers. Some factors, such as eating experiences and dialect usage, could explain the reason behind these differences. The data obtained in this study can be applied to preliminary lexicon sources of descriptive sensory evaluation, and can provide useful clues to the understanding of Japanese texture terms.
著者
早川 文代 馬場 康維
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.447-456, 2002

"まったり" について, 京都・滋賀地方でのアンケート調査および京都市内での専門家による聞き取り調査を行い, 前報の首都圏のデータと比較し, 以下の結果を得た.<BR>(1) "まったり" は, 京都高年層には方言として用いられているが, 京都若年層には, 首都圏若年層の流行語と同様に用いられている.<BR>(2) 方言としての "まったり" は, 食物名による尺度化の精度が悪く, 食物名で "まったり" を説明することは困難であるが, "まったり" している可能性が高い食物は, 栗きんとん, 白味噌などである.<BR>(3) 方言としての "まったり" は, 良いイメージをもつ誉め言葉であり, 感覚用語というよりも, 感性を表現する用語である.まろやかで, 口にゆっくり広がる, 穏やかで, 深みがあり, ほのかに甘い感覚である.<BR>(4) 若年層に用いられている流行語としての "まったり" は, 食物名による尺度化が可能で, カスタードクリームやバタークリームなどの, まろやかで, 口にゆっくりと広がる, ねっとり, こってりした感覚である.
著者
早川 文代
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.69-72, 2009 (Released:2011-05-25)
参考文献数
10
被引用文献数
2
著者
今井 悦子 早川 文代 松本 美鈴 畑江 敬子 島田 淳子
出版者
日本官能評価学会
雑誌
日本官能評価学会誌 (ISSN:1342906X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.108-115, 2002-09-15 (Released:2013-08-15)
参考文献数
7

The effect of granular size on the preference of samples was examined by preparing patties from three kinds of ground meat, i.e., beef, pork and chicken, which had been passed through one of five plates with orifice diameters of 2.4 - 9.6mm. The difference in preference according to the granular size of the pork and beef samples were large, while that of chicken was small. The consistency by the panelists in their granular size preference for the pork samples was higher than that for the beef samples, but the preference for the chicken was inconsistent. The patties of the most-preferred granular size were those prepared from ground meat that had been passed through a plate with an orifice diameter of 3.4 or 4.8 mm. This result indicated that the preference was related the physical properties of the patties.
著者
早川 文代 井奥 加奈 阿久澤 さゆり 齋藤 昌義 西成 勝好 山野 善正 神山 かおる
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.337-346, 2005-08-15
被引用文献数
9 31

日本語のテクスチャー用語を収集し, 以下の知見を得た. 116人を対象としたアンケートによって用語を収集し, 討議により整理したところ332語を得た. これに文献調査の結果から94語を追加して426語とした. テクスチャーの研究者55人に用語の妥当性を評価させ, 専門家4人に面接調査を行って用語を削除, 追加し, 最終的に445語のテクスチャー用語を得た.<br>1960年代に収集されたテクスチャー用語と比較したところ, "もちもち" "ぷりぷり" など新しい用語がみられた. また, 中国語などと比較すると, 日本語のテクスチャー表現は数が多いことが示された.<br>テクスチャー用語の約70%は擬音語・擬態語であることから, 日本語のテクスチャー表現に擬音語・擬態語が重要な役割を果たすことが示唆された.
著者
早川 文代 長縄 省吾 干野 隆芳 風見 由香利 神山 かおる
出版者
農林省食品総合研究所
雑誌
食品総合研究所研究報告 (ISSN:03019780)
巻号頁・発行日
no.75, pp.45-54, 2011-03
被引用文献数
1

ジャムのテクスチャー用語リストを作成することを目的として,エキスパートパネル,プロフェッショナルパネル,一般分析型パネルの3パネル,合計34人に対して,質問紙調査を行った. コレスポンデンス分析の結果から妥当度を算出し,日本語テクスチャー用語445語から,124語をジャムのテクスチャー用語として選定することができた. また,ジャムのテクスチャー用語としての判定には,パネリストの専門性の高さが影響することが示された.
著者
関原 成妙 福留 奈美 早川 文代 品川 明
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.102, 2017 (Released:2017-08-31)

【目的】硬水では良いだしが取れないことは日本の料理界で常識とされる。うま味を含めた5つの基本味の感じ方は水の違いによってどのように変化するのか、本研究では5つの基本味の感じ方の違いを水の硬度の違いと関連づけてとらえることを目的とした。また五味識別テストを行う際の水溶液濃度を味質別に設定する必要性についても検討した。【方法】五味識別テストを市販の飲用水を用いて行うことを想定し、ボトルドウォーター3種(硬度が異なるミネラルウォーター2種と純水)を選んだ。ISO8586のパネリスト選抜基準および訓練テストの濃度を参考に予備実験を行い、甘味(ショ糖)、塩味(NaCl)、酸味(クエン酸)、苦味(無水カフェイン)、うま味(グルタミン酸ナトリウム)の水溶液の濃度を4段階に設定した。18-22歳の都内女子大学の学生24-29名を対象に2016年3-7月に3点識別試験法で官能評価を行った。水別、濃度別に有意差検定を行い、結果をもとに五味識別テストにおける水溶液濃度の設定についての検討を行った。【結果】識別できた人の割合は、うま味については硬度が高い水の方が高く、酸味については硬度が低い水の方が高い傾向が見られた。低濃度の水溶液では、うま味は純水で、酸味は硬度の高い水で有意差が出る傾向にあり、うま味と酸味の味質の感じやすさと水の硬度の違いに逆の傾向が見られた。甘味、塩味、苦味については水の硬度段階の違いによる一定の傾向は見られなかった。以上より、うま味と酸味の感じ方は特に低濃度で水の硬度の違いによる影響を受けるため、五味識別テストを行う際には、テストの目的に応じて呈味物質の濃度や水について十分に検討する必要があることが示唆された。
著者
早川 文代
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.148-153, 2008-04-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
35
被引用文献数
1
著者
有本 恭子 中野 優子 望月 寛子 齋藤 昌義 早川 文代
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2021年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.121, 2021 (Released:2021-09-07)

【目的】みその消費量は年々減少傾向である。しかし、近年では、みその生理学的機能、和食・伝統食の価値の見直しの動きなどの観点から、みそを用いた料理に対する関心は高まっている。本研究では、食生活の変化を示す資料として、NHK「きょうの料理」を用いて、1958年から現在に至るまでの、みそ料理の変化の実態を把握し、その背景を考察した。【方法】1958年〜2020年に発刊されたNHK「きょうの料理」について、創刊年と1960年以降10年間隔で収集した82冊を資料として用いた。掲載料理数、みそ料理数、みそ料理のカテゴリー分類(主食・主菜・副菜・汁物・その他)、みそ料理の料理様式(和風・洋風・中国風)、みそ汁の具材料と作り方を調査項目とした。【結果・考察】みそ汁は、2000年以降、材料と分量、作り方の記載が増加した。背景には、家庭内でのみそ汁の摂食頻度の減少、核家族化の進行、加工食品の普及により、家庭内での料理の継承の機会が減少したことが考えられる。みそ汁の具材料では、全調査期間で野菜類が最も多かった。1990年以降、トウモロコシ、牛乳、キムチ、さば缶などがみそ汁の具に使われるようになり、みそ汁の具に変化がみられた。冊子ページ数の増加とともに掲載料理数は増加したが、みそ料理の掲載数には、大きな変化はみられなかった。みそ料理のカテゴリー分類では、主菜の記事の割合が増加していた。みそ料理の料理様式では、洋風料理と中国風料理の記事の割合が増加しており、食生活の多様化とともに、みそは和風料理だけでなく、さまざまな使われ方をしていることが推察された。本研究により、家庭内の料理を継承する機会の減少や、食生活の多様化に伴って、みそ料理の料理様式や調理法が多様化していることが推察された。
著者
水野 義隆 西村 園子 椛島 真一郎 鍋田 優 早川 文代 稲津 康弘
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-23-00052, (Released:2023-09-19)

カット野菜の製造工程では喫食サイズにカットした野菜を次亜塩素酸ナトリウム水により殺菌することが多く,それが野菜の食味変化や褐変などの原因となることもある.一方,カット野菜の殺菌にはオゾン水も利用できる.本研究は,原体野菜のカットの際にスライサーに界面活性剤を含むオゾン水をかけ流す製造方法(以下,新製法)と,水を流しながら同様にカットし,その後,次亜塩素酸ナトリウム水溶液による浸漬処理を行う製造方法(以下,通常製法)の野菜の殺菌および品質に与える影響を比較した.菌数評価では,カットキャベツ,カットレタスおよびカット大根において,新製法区の一般細菌数および大腸菌群数は通常製法区と統計的に有意な差はみられなかった.成分分析では,カットキャベツおよびカット大根において,通常製法区のアスコルビン酸含有量が新製法区に比べ有意に低下していた.外観評価では,カットキャベツおよびカット大根において,通常製法区は変色しボリュームダウンしていたのに対して,新製法区では変色せずにボリューム感があった.官能評価では,カットキャベツにおいては通常製法区は甘味が弱くなり,カット大根においては通常製法区はシャキシャキ感と甘味が弱くなり,薬品臭,苦味および水っぽさが強くなったのに対して,新製法区では水洗いに近い食味であった.以上の結果より,新製法は通常製法と同等の菌数を示し,野菜本来の食味・外観を劣化させにくいことが判明した.さらに新製法は通常製法と比較すると浸漬処理工程を省略できることから,製造時間の短縮や使用水量の低減につながる技術として利用できるものと考えられる.
著者
森田 亜紀 早川 文代 香西 みどり
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.107, 2020-07-01 (Released:2020-08-09)
参考文献数
26
被引用文献数
1

パンの品質は主に外観,香り,食感,風味から総合的に判断されるが,中でも香りは消費者のパンの嗜好性を左右する重要な品質要因とされている.パンの香りの評価方法として官能評価や香気成分分析などがあるが,パンの香りのイメージを専門家以外で共有することは難しい.本研究では,パンの香りの官能特性を明らかにし,色彩評価による結果と合わせて考察した. パンに含まれる7成分を添加した香りの異なるワンローフ成形の食パンを調製した.パンの香りの強さや質の違いは,10語の評価用語による9段階評定尺度法を用いた評価により表現できた.またPCCS表色系の新配色カード199を用いてパンの香りのイメージに合致する色を選択させたところ,パンの香りは橙,乳に由来する香りは黄と相関があった.また,焼成で生じる香りは明度の高い方向で表現された. 本評価法を利用することにより,パンの香りは言葉で表現可能なだけでなく色彩により可視化できる可能性が示され,より消費者にもわかりやすくパンの香りを伝える手段として提案できた.
著者
高木 和子 山崎 和幸 水上 裕造 早川 文代 何 方 平松 優
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.230-235, 2020-07-15 (Released:2020-07-29)
参考文献数
19

本研究では,加熱殺菌工程が異なる各種牛乳(LTLT牛乳,HTST牛乳,UHT牛乳)をホットミルク(50~60℃程度)の状態にし,熱履歴の違いが風味特性に与える影響を官能評価で調べた.その結果,工程での熱履歴の低いLTLT牛乳およびHTST牛乳はホットミルクにしても生乳に近い風味で,「生乳感」「乳の自然な風味」「すっきり感・さっぱり感」が強く,「加熱臭」が弱いことが確認された.さらに同地域,同工場で同時期に製造されたLTLT牛乳UHT牛乳から香気エキスを抽出,GC-MSおよびGC-O(におい嗅ぎ)に供し,各牛乳の特徴的香気成分をAEDA(希釈分析法)で明らかにした.そして,LTLT牛乳の特徴的香気成分trans-4,5-epoxy-(E)-2-decenal,UHT牛乳の特徴的香気成分sotolonの牛乳への添加試験を行い,LTLT牛乳の風味特徴にフルーティで甘い香気成分trans-4,5-epoxy-(E)-2-decenalが,UHT牛乳の風味特徴にカラメル様の香気成分sotolonが関与していることが示唆された.また,香気成分の添加のみで熱履歴の異なる牛乳の風味特性に近づくことが確認され,特にLTLT牛乳の特徴的香気成分trans-4,5-epoxy-(E)-2-decenalを加熱臭が生じているUHT牛乳製品に添加し,加熱臭が軽減できたのは興味深い.本研究では牛乳の熱履歴が風味に与える影響を調べたが,今後は餌,土壌,環境,牛種,製造工程等の違いと風味の関係を精査し,原因成分の同定まで試みたいと考えている.それら成分と消費者嗜好の相関を調べ,嗜好多様性に応える牛乳を市場に提供できれば,消費者の選択肢が拡がり牛乳市場の活性化が期待できると思われる.
著者
森田 亜紀 早川 文代 大田原 美保
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-22-00084, (Released:2023-02-17)

ベーカリー製品に特化した分析型パネルを評価者として,ベーカリー製品9品目の官能評価の設計や品質情報の伝達の際に参照できるテクスチャー用語体系を構築する一助となる調査と解析を行い,以下の結果を得た.(1)ベーカリー製品9品目のテクスチャー描写に使われる用語のデータを得ることができ,そのうち69語が「ベーカリー製品の主要なテクスチャー用語」と位置付けられた.(2)ベーカリー製品と用語を集計し主成分分析を適用したところ,ベーカリー製品のテクスチャーは、「かたさに関連するテクスチャー」,「空気を含んだやわらかさに関連するテクスチャー」に加え,「油脂由来のテクスチャー」や「咀嚼中に口腔内で感じる水分に関連するテクスチャー」が重要であると解釈できた.(3)官能評価の設定や情報伝達に利用できるデータベースが作成でき,ベーカリー製品毎の代表的なテクスチャー用語とその語彙特徴が明らかとなった.
著者
早川 文代 風見 由香利 阪下 利久 上平 安紘 池羽田 晶文
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.69, 2017

【目的】モモの品質には果肉部の軟らかさや特有の風味が重要である。しかし、部位差、剥皮時の果肉損傷および剥皮後の褐変が著しいため、官能評価が難しく、その報告例は少ない。本研究では、モモの分析型官能評価法を設計し、品種および追熟条件の異なる種々の試料の官能特性の数値化を試みた。<br>【方法】官能評価設計には、2014年、2015年産のモモ9品種(日川白鳳、浅間白桃、一宮白桃、川中島白桃、なつっこ、さくら、幸茜、甲斐黄桃、黄金桃)を用い、官能評価パネルの討議および篤農家への面接調査を行った。本評価では、2016年産の6品種について、出荷翌日の果実を、追熟なし、5℃あるいは20℃で4日間追熟させ、その後24時間20℃に置いて試料とした。パネルは選抜、訓練された9人とし、赤色照明下のブースで評価を実施した。各パネリストに試料1果を提示し、においかぎによる香りの評価後、自身で試料片を調製させ、風味およびテクスチャーを評価させた。あわせて、硬度および可溶性固形分を測定した。<br>【結果】「花様の香り」「ココナッツの香り」等、18特性について、各試料の官能評価データを得た。追熟によって、テクスチャーの軟化と香りの増加がみられ、その変化は20℃で顕著であった。においかぎによる香りの評価は、試料片の口中香の評価よりも、品種間差および追熟条件間差の検出力が高く、皮の香気の影響および味やテクスチャーとの相互作用の影響が推察された。
著者
早川 文代 畑江 敬子 島田 淳子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.197-207, 2000-03-15
参考文献数
8
被引用文献数
13 14

食感覚の擬音語・擬態語が,どのような食物のどのような特性を表現しているのかを明らかにすることを目的に,調査,解析を行ったところ,以下の結果を得た.<br>(1) 各用語が示す食味要因(外観,匂い,味,温度,音,テクスチャー)が明らかになった.<br>(2) これらの用語は,テクスチャーを表現するものが多く,また,音を表現する用語は,同時にテクスチャーも表現していることが明らかになった.さらに,テクスチャーと味,テクスチャーと外観のように,全く質の異なる2つの要因を表現する用語もみられた.<br>(3) 食感覚の擬音語・擬態語は,一部の例外を除くと,「脆性」と「弾性」の2軸からなる平面に布置された.<br>(4) 食感覚の擬音語・擬態語と食物との関係が明らかになった.
著者
早川 文代 井奥 加奈 阿久澤 さゆり 米田 千恵 風見 由香利 西成 勝好 馬場 康維 神山 かおる
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.327-336, 2006-06-15 (Released:2007-06-15)
参考文献数
28
被引用文献数
9 12

日本語テクスチャー用語445語について,消費者を対象とした質問紙による調査を行い,以下の知見を得た.1)認知度が0.75以上の用語を消費者の語彙とし,135語を得た.そのうち,認知度0.90以上のテクスチャー語彙の中核となる用語は66語あった.2)“crisp”,“crunchy”,“juicy”,“soft”,“creamy”に相当する用語は,異種の言語間で共通して消費者パネルによく使用されるテクスチャー表現であることが推察された.
著者
森田 亜紀 早川 文代 香西 みどり
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.13-23, 2020-01-15 (Released:2020-01-27)
参考文献数
27
被引用文献数
1

パルミジャーノ・レッジャーノを添加したチーズブレッドの風味に寄与する成分について,アミノ酸,脂肪酸,有機酸からなる32成分モデルチーズを用いた評価を実施した.チーズブレッドの風味に対して,オミッションテストにより,アミノ酸,脂肪酸の寄与が大きいこと,さらに,アディッションテストにより,グルタミン酸ナトリウム,バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,フェニルアラニン,プロリン,酪酸が風味に影響していることが確認できた.これら8成分を添加することによりパルミジャーノ・レッジャーノを添加したパンの風味に関する官能特性を再現できた.アディッションテストの結果を主成分分析で解析したところ,第1主成分は「チーズの濃厚感」,第2主成分は「パンらしい香ばしさ」,第3主成分は「発酵香」と解釈でき,これらの風味特性のバランスでチーズブレッドの風味が形成されていることが確認できた.グルタミン酸ナトリウムはうま味だけでなく,チーズブレッドの風味形成に大きな役割を果たしていた.揮発性成分の分析結果より,バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,フェニルアラニンを添加することにより,イーストの発酵により生成するアルデヒド類やアルコール類,メイラード反応で生成するアルデヒド類が増加しており,これら成分がチーズブレッドの風味を形成していると考えられた.本研究により,チーズブレッドの風味に寄与する8成分をパン生地に添加することで,チーズブレッドの風味を再現でき,その製パン性はチーズブレッドよりも良好であったことから,良好な品質のチーズ風味ブレッドを作成する手段を提案できた.
著者
吉田 順子 添田 博 菊池 英夫 神山 かおる 早川 文代
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.85-94, 2009-02-15
参考文献数
17
被引用文献数
1

シュウマイの中でも最も生産量の多い肉シュウマイに焦点を当て,8種類の肉シュウマイの評価用語および評価方法を設定し,各試料の官能特性を明らかにした.その結果,以下の結果を得た.<BR>(1) 分析型パネルによる評価用語収集により135語が得られた.専門家パネル4人によって用語を整理し,第一次用語リスト61語を作成した.<BR>(2) 第一次用語リストについて,パネリスト全員に5段階のカテゴリー尺度を用いて試料を評価させた.クラスター分析の結果,61語は20のクラスターに分類された.クラスター分析結果について専門家パネルによる討議を行い,最終的にシュウマイの評価用語を選定し,19語を決定した.<BR>(3) 分散分析の結果,19用語中18語に試料間の有意差が見られた.ジューシー感が強いと,油っぽさが強い傾向がみられたが,一部例外もみられた.有意差のある評価項目間の相関係数の数は,肉の味が最も多かった.肉の味は,肉のくさみ,肉粒の大きさ,弾力感と正の相関があった.従って,肉の味の強さは,様々な評価項目と相関性が高く,肉シュウマイの評価では中核的な項目であることが推察された.<BR>(4) データを一元的に把握するために主成分分析を行った.その結果,第5軸までが意味のある主成分として抽出された.第1軸は「肉の存在感」,第2軸は「味付けの濃さ」,第3軸は「肉汁の量」と解釈した.試料の主成分得点と評価項目の因子負荷量を用いて散布図を作成したところ,それぞれの試料の特徴を読み取ることのできる肉シュウマイの官能特性マッピングを得た.<BR>(5) 8試料以外の肉シュウマイでも,得られた評価方法が適用できるのか否かを検討するために,新たに7種類の肉シュウマイの評価を行なったところ,同様の傾向がみられ,広範囲の肉シュウマイの品質特性を客観的に把握できることがわかった.
著者
早川 文代 井奥 加奈 阿久澤 さゆり 米田 千恵 風見 由香利 西成 勝好 中村 好宏 馬場 康維 神山 かおる
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.488-502, 2007-11-15 (Released:2007-12-31)
参考文献数
19
被引用文献数
4 8

前報2)の調査データを用いて,性別,年齢層別,調査地点別に消費者のテクスチャー語彙およびその中核となる用語を求めた.また,ロジスティック回帰分析によって用語の認知度に及ぼす人の属性の影響を調べた.その結果,以下の結果を得た.(1)各属性の各区分における消費者のテクスチャー語彙およびその中核となる用語を得た.(2)日本語テクスチャー用語445語について,用語の認知度に及ぼす人の属性の影響が明らかになった.(3)消費者のテクスチャー語彙の用語数も,その中核となる用語数も,男性よりも女性の方が多かった.女性の方がテクスチャーを表現する語彙が豊富であることが示唆された.女性の方が認知度の高い用語には“もそもそ”,“もったり”等がみられた.(4)消費者のテクスチャー語彙の用語数も,その中核となる用語数も,高い年齢層の方が低い年齢層に比べて多かった.時代による影響と世代による影響が考えられた.年齢層の高い方が認知度の高い用語には“かゆ状の”,“ぶりんぶりん”等,一方,年齢層の低い方が認知度の高い用語には“ぷにぷに”,“シュワシュワ”等がみられた.(5)消費者のテクスチャー語彙の用語数も,その中核となる用語数も,首都圏の方が多かった.首都圏の方が認知度の高い用語には,“ぼそぼそ”,“ぽくぽく”等,一方,京阪神地区の方が認知度の高い用語には“にちゃにちゃ”,“もろもろ”等がみられた.これらには方言の影響が推察された.以上の結果は,消費者を対象とした官能評価,質問紙調査および面接調査の設計の際に,また,消費者への情報発信を計画する際に重要な情報を提供する.さらに,食嗜好調査や食文化研究の考察の際にも有用な知見であると考えられる.