著者
浦野 直人 岡井 公彦 相川 和也 田中 陽一郎 石田 真巳
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.131-136, 2013 (Released:2014-01-07)
参考文献数
14

多摩川は日本の代表的な都市河川である。近郊の生活廃水や産業排水は、水再生センターを経て再生水として流れ込んでおり、河川水の抗生物質濃度は日本の都市河川中でも高レベルにある。本研究は、多摩川流域における多剤耐性菌の蔓延度の解析を行った報告である。2010年7月に上流(青梅市)、2011年5月に中流(立川市)と下流(川崎市)から、多摩川の表層水と底泥を採集した。1~8種類の抗生物質を含む培地を用いて、採集サンプルから一般細菌および抗生物質耐性菌をスクリーニングした。多摩川の表層水中の一般細菌数と抗生物質耐性菌数は上流から中流・下流へと下るにつれて増大したが、底泥中の一般生菌数と耐性菌数は中流が最も多かった。細菌数は環境中の有機物濃度と相関があると考えられた。多剤耐性菌は、下流では2剤耐性菌が多く、中流では3剤耐性菌、上流では5~8剤耐性菌と川を遡るにつれて、多剤耐性能が高くなった。5-8剤耐性菌群にはBacteroidetes門、2~3剤耐性菌群にはFirmicutes門が多かった。また、上流の一般細菌中にBacteroidetes門、下流のそれにFirmicutes門が多かった。従って、上流に多く生息しているBacteroidetes門は多剤耐性能が高くなり易いと考えられた。各流域において、多剤耐性菌中に重篤な病原性細菌は発見されなかったが、肺炎桿菌、食中毒菌、敗血症菌、腸炎菌の存在が見とめられ、上流に多く発見された。