著者
鈴木 利雄 川治 健一 関口 理希 石川 智士 伊藤 智博 立花 和宏
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.123-1128, 2016 (Released:2016-07-07)

関東大震災をきっかけに固定電話網の整備のためにダイヤル式電話機と自動交換機の技術のニーズは生まれ、黒電話が産声を上げた。終戦を経て高度成長期に黒電話の完成版600型が世に姿を表した。電電公社がダイヤル自動化100 %を目指す中、日本はオイルショックの狂乱物価に見舞われた。黒電話の製造コストを下げるため、完成されたと言われた黒電話600型をさらに改善することを余儀なくされた。山形大学工学部電気工学科を卒業して間もない鈴木を中心として山形県米沢市の田村電機で黒電話601A型ダイヤル開発が行われた。新しく開発された黒電話601A型は日本の家庭を電話で隅々までつないだといっていい。本稿はその開発の状況がいかがなものであったか時代背景とともに書き残すものである。
著者
荻原 祐二
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.149-158, 2017 (Released:2018-01-06)

本稿では、近年の日本における成果主義制度導入状況の経時的変化を分析した。個人の短期的で顕在的な成果・業績に基づいて評価・処遇を行う成果主義制度が、1990年代から日本において導入されてきた。しかし、成果主義制度導入の近年の状況と、その変化の境界条件・調整要因(職層や企業規模)、そして成果主義制度を構成する制度間の経時的変化の違いは十分に明らかでなかった。日本における企業活動の歴史と現状を客観的に把握し、経営・経済制度と相互に影響を与え合っている人々の心理・行動の変化を理解するためにも、これら3点を含めて成果主義制度導入状況の経時的な変化を明らかにする必要がある。そこで本稿では、日本生産性本部と厚生労働省が、1991年から2016年まで継続して実施している2つの大規模な調査を用いて分析を行った。その結果、2つの調査で一貫して、1996年から2016年にかけて、年齢や勤続年数に基づいて評価・処遇を行う年功制を導入している企業の割合は低下していた。さらに、1991年から2014年にかけて、労働者の短期的な業績に応じて賃金を年単位で設定する年俸制を導入している企業の割合及び適用労働者の割合は増加していた。年功制の低下と年俸制の増加は、職層と企業規模に関わらず、広範囲の企業及び労働者において見られた。よって、ここ約30年で成果主義制度は、様々な企業の多様な労働者を対象にして、より広範に導入されるようになっていることが明らかとなった。一方で、企業規模が大きいほど、年功制の導入率の低下が大きく、年俸制の導入率の増加が大きかった。また、管理職において年俸制の導入率の増加が大きかった。さらに、年功制の導入率は1990年代から2010年代まで直線的に減少し続けている一方で、年俸制の導入率は1990年代から2005年頃までは増加し続けているが、2005年頃以降は単調な増加傾向を示していなかった。
著者
松本 和也 羽鳥 剛史 竹村 和久
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.165-172, 2015 (Released:2015-12-25)

本研究の目的は、オルテガの論ずる「大衆」とウェーバーの論ずる「官僚制」の概念を用い、今日の我が国における官僚批判の心理構造について実証的に検討することである。この目的の下、大衆性を測定する大衆性尺度及び官僚制化に関わる形式性追求傾向尺度、政治・社会の官僚制化に関わる態度指標を用いたアンケート調査(n = 400)を行い、これらの関連を調べた。その結果、大衆性尺度と形式性追求傾向尺度との間に正の関連性が示され、大衆性の高い個人ほど、マニュアル等の形式性を追及する傾向にあることが示された。また、大衆性と政治の官僚制化に関わる態度の関係性として、傲慢性と吏員型官僚支持意識との間に正の関連性が、自己閉塞性と政治的官僚支持意識との間に負の関連性が示された。さらに、大衆性と社会の官僚制化に関わる態度の関係性として、傲慢性と社会の官僚制化に関わる態度との間に総じて正の関連性が示された。最後に、本研究の結果が大衆による官僚制化の弊害を抑止する上で示唆する点について考察を行った。
著者
高橋 孝治
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.189-196, 2015 (Released:2015-12-25)

日本における教育は文系と理系に区分されている。この区分に対して今まで多くの疑義が示されてきた。本稿は文系の代表的な分野である法学と理系の代表的な分野である数学が実はその本質は同じものなのではないかというアプローチから、文理区分に対して疑義を示すものである。本稿は、文系思考とは何か、理系思考とは何か、学説対立の有無、数学者と法律家は歴史的に一体性などを見る。その結果、法学も数学も共に人間の造ったものであり、共に論理であるがゆえ解釈の違いがあることを明らかにする。さらに、その問題解決法にも類似が見られ、歴史的にも法律家と数学者は同一人物であることが多く、両者には非常に密接な関係にあることも述べる。これらのことから法学と数学は一体的なものであり、単に「文系と理系であるために異なる学問である」とすることは、法学の発展、数学の発展の双方にとっても望ましいこととは言えないと述べる。
著者
二宮 隆次 小野 浩幸 高橋 幸司 野田 博行
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.93-104, 2016 (Released:2016-07-07)

本研究では、産学官連携の現場の諸活動について、大量の質的(定性的)データを基に計量的分析を実施し、可視化した情報として提供することを試みた。具体的には、日経産業新聞の連載記事「ベンチャー仕掛け人」を、テキストマイニング手法「KH Coder」を用いて分析した。その結果、①大学の共同研究センター等を中心とした産学官連携活動、②インキュベート施設を中核とした活動、③資金に関するベンチャーキャピタルや金融機関を中心とした活動、のそれぞれの活動において、出現する言葉に特徴があることが明らかになった。また、特徴的な3つのグループにプロットされた語から特定語を選択して共起分析した結果、①の「産学」による分析では、研究、開発、技術および連携の4つ語が強く共起関係を結び、加えてそれぞれの語がほかの関連語とネットワークを結び、産学官連携の活動パターンを形成していることが確認できた。②の「施設」と「入居」による分析では、主たる活動は起業、事業を育成することであることが見て取れた。施設と入居の語の共起分析から、施設には入居タイプと入居がないものがあり、入居は技術、経営の語の共起関係が比較的高く、施設は、地域、開発および相談が高いことがわかった。③の「上場」と「ファンド」による分析では、起業・研究フェーズでの事業の元手となる出資やベンチャーキャピタル、実用化・会社設立フェーズでのファンド・株式、事業経営の維持・拡大フェーズでの銀行等金融機関の融資などが共起していることが確認された。以上のことから、本研究は、産学連携活動を効率的、かつ、効果的に実施するうえで重要な情報を提供しうるものと考えられる。
著者
Yu Saito Yuto Koseki Bunpei Hatano Kazuaki Sato Susumu Okubo Hitoshi Ohta Tateaki Ogata
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.61-68, 2018 (Released:2018-07-05)

The spin-trapping ESR (ST-ESR) method, which observes unstable radicals as stable spin adducts using electron spin resonance (ESR), is an effective experimental method for evaluating chemical reactions involving radical reactions. For instance, reactive oxygen species (ROS) such as hydroxyl radicals and so on is trapped well by spin-trapping reagent like as DMPO. In this research, we considered the analytical conditions of generation and detection of singlet oxygen. All conditions were decided based on the viewpoints of high usability for the singlet oxygen scavenging/quenching evaluating method. In addition, all experimental conditions were examined with a solvent-independent measurement method. In this study, a nonaqueous solution is N,N-dimethylformamide (DMF), and an aqueous solution is phosphate buffer solution (PBS, 100 mM pH 7.4). In each solvent CDCl3 or D2O was added at a 10 vol.% ratio respectively. Because heavy solvent was previously reported as an extending lifetime of singlet oxygen. The experimental conditions of singlet oxygen were examined by two different generation/detection methods. Photosensitization method using organic dye and thermal decomposition method by naphthalene derivative endoperoxide were studied as generation method, and 4,4’-bis (1-p-carboxyphenyl-3-methyl-5-hydroxyl) pyrazole (DRD156) and 2,2,5,5-tetramethyl-3-pyrroline-carboxamide (TPC) were studied as detection reagent, respectively. As a result, DRD156 and thermolysis method was good combination for singlet oxygen generation and detection in aqueous solution (around neutral condition) and nonaqueous solution.
著者
市川 熹 大橋 浩輝 仲 真紀子 菊池 英明 堀内 靖雄 黒岩 眞吾
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.113-122, 2016 (Released:2016-07-07)

母語話者の話者交替時の重複タイミング現象である話者移行適格場(TRP)に注目し、日本語と英語について、それぞれの母語話者とその言語を十分に習得している非母語話者の実時間対話を分析した。両言語ともに、対話者が母語話者の組み合わせ以外ではTRPの制約が成立していなかった。このことは、非母語話者が発信している言語情報は話者交替の予告情報にはならず、言語情報の裏に必然的に存在するプロソディにあることを示唆している。また日本語母語話者の5歳児と6歳児と成人の対話を分析し、さらに先行研究結果を参考にしたところ、日本語母語のTRPの制約は5歳児ころまでに獲得されることが推察された。母語話者の話者交替タイミング制御のモデルを提案した。
著者
高橋 孝治
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.151-155, 2016

三角形の面積公式にはいろいろなものがある。三角形が決定されるときには、三角形の面積も決定しているはずである。確かに、三角形の面積公式は、「底辺かける高さ割る2」以外の式は、全て三角形の決定条件と関連している。そこで、本稿は、三角形の決定条件を用いて、これまで一般的に知られていない三角形の面積公式を探ることを試みる。本稿では特に一角と一辺、辺の総和の三つが明らかな三角形の面積公式を探ろうとする(この三つが明らかな場合にも三角形は決定する)。本稿での証明では当該一角が分かっている一辺の両角の一つなのか対角なのかで式が変わってしまった。そのため、三角形の一角と一辺、辺の総和の三つが明らかなだけでは足りず、当該一角の位置も明らかとなる必要があるとするが、今までに一般的に示されていなかった三角形の面積の求め方を示すという作業に一歩程度は貢献できたものと考えると述べる。
著者
横田 正 加藤 久喜 宮下 知也 衛藤 英男
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.121-126, 2014 (Released:2015-01-06)
被引用文献数
1

現在、コーヒーは様々な疾患のリスクの減少や予防などの研究が報告されており、非常に機能性のある嗜好性飲料といえる。亜臨界水を用いて、生コーヒー豆を抽出することで、より多くの成分を抽出できることが期待される。そこで、熱水抽出サンプル(通常のコーヒー)と亜臨界水抽出サンプルとの官能評価、各成分の比較を行った。官能評価では3 MPa、200 ℃、3分の抽出が最も熱水抽出サンプルに近かった。凍結乾燥物重量は、熱水抽出サンプルよりも2倍以上を示した。タンパク質、総アミノ酸、グルコース、全糖、クロロゲン酸類、桂皮酸類、カフェイン、トリゴネリン、およびメラノイジンにおいても高抽出量であった。さらに、抗酸化活性も高くなり、機能性が期待できるコーヒー様エキスが製造できた。
著者
中山 満子
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.127-132, 2018 (Released:2018-12-30)

本研究では、高校生の友人関係とSNS利用に伴うネガティブ経験(以下、SNSネガティブ経験)との関連を検討した。近年の日本の高校生の友人関係にはいくつかの類型があると言われる。本研究では、高校一年生(175名)を対象として質問紙調査を実施し、高校生の友人関係を類型化したうえで、友人関係がSNSネガティブ経験の程度にどのような影響を持つのかを検討した。また、SNSネガティブ経験は利用しているSNSに影響されることも想定されるので、本研究では、LINE、Twitter、Instagramの3種類のSNSに着目して、友人関係の類型とSNS利用パターン及びSNSネガティブ経験との関連について分析した。友人関係の類型としては先行研究と類似の関係回避群、気づかい・群れ群、内面関係群の3群を得た。SNSネガティブ経験のうち閲覧強迫、情報拡散不安、社会的比較は、内面関係群に比べて気づかい・群れ群で多いことが示された。また友人関係類型とSNS利用パターンの分析から、内面関係群では複数のSNSを並行利用する傾向にあり、LINE利用時間は3群中もっとも長いこと、関係回避群は他のSNSを利用せずLINEのみを利用する者が多いことが示された。これらの結果から、SNS利用の多寡それ自体よりも友人関係のあり方がSNSネガティブ経験に影響することが示唆され、先行研究で示されている友人関係類型と心理的適応との議論を踏まえて考察された。
著者
古川 安彦 荻原 隆
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.47-52, 2016 (Released:2016-07-07)

パルス燃焼噴霧熱分解法により炭素を複合化したリン酸鉄リチウム(LFP/C)ナノ粒子を合成した。SEM観察からLFP/C粒子は、球状、楕円状、不規則形状などが含まれていた。粒度分布測定により求めたLFP/Cナノ粒子の粒径は50 nmであった。ICP分析によるLFPの化学組成は、出発溶液の組成とほぼ一致していた。熱処理後のXRDからはLFP/Cの結晶構造は、空間群Pnmaのオリビン構造であった。DTGから求めたLPF/Cナノ粒子の炭素含有量は出発溶液濃度と良く一致していた。LFP/Cを正極活物質とした2032コインセルを作製し、2.5 V~4.3 Vの範囲で充放電試験を行った。1C充放電によるLFP/Cの放電容量および500サイクル後の容量維持率はそれぞれ170 mAh/gおよび93 %であった。充放電レートの増加に伴いLFP/Cの放電容量および容量維持率は減少し、30 Cではそれぞれ95 mAh/gおよび85 %であった。50 ℃のとき、LFP/Cの放電容量は30 Cで100 mAh/gを示し、100サイクル後の容量維持率は89 %であった。
著者
進 夏未 當山 美唯 東 美空 田中 和子 吉村 耕一
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.85-88, 2017 (Released:2017-06-30)

トップアスリートは、集中力を高めてプレイを成功させるためにプレイの直前にある決まった動作(ルーティン動作)を付け加えている。本研究では、非アスリートにおいても、ルーティン動作を付加することにより、集中力が増して作業の精度が高まるか否かについて実験的に検討した。非アスリートの学生13人を対象とし、ルーティン動作に続けて、ダーツ、計算または記憶の作業を課した。ルーティン動作なしを対照実験とした。集中力評価のために、脳波を測定した。その結果、ルーティン動作により、ダーツと記憶作業中の集中力が増した。さらに、ルーティン動作により、ダーツ作業の精度が向上した。これらの結果から、非アスリートにおいても、ルーティン動作により集中力を高めて作業精度を向上できる可能性が示された。
著者
羽鳥 剛史 福田 大輔 三木谷 智 藤井 聡
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.107-114, 2012 (Released:2013-01-11)
参考文献数
26
被引用文献数
1

本研究の目的は、モノに関する記憶の想起がそのモノに対する愛着意識にどのような影響を及ぼすかについて実証的に検討することである。この目的の下、具体的なモノとして「自転車」に着目し、大田区在住の自転車利用者704名を対象として実験を行った。この実験では、自転車に関する記憶を想起する条件を設定し、自転車への愛着意識に及ぼす影響を検証した。併せて、放置駐輪問題に関して、実験対象者の放置駐輪に対する態度を測定し、実験条件との関連を検討した。その結果、自転車に関する記憶を想起することにより、自転車への愛着意識が向上する効果が示された。さらに、自転車への愛着意識が放置駐輪を控える傾向と関連している可能性が示された。自転車に関する記憶の想起と放置駐輪に関わる態度との間には直接的な関連性は認められなかったが、共分散構造分析より、自転車に関する記憶の想起が愛着意識を活性化し、愛着意識が放置自転車配慮傾向(及び放置駐輪抑制意図)、放置自転車配慮傾向が放置駐輪抑制意図を活性化する、という因果プロセスの妥当性が示された。また、自転車に関わる記憶の想起による効果がどのような条件に依存しているかについて検証したところ、主な交通手段が自転車でない人、有料駐輪場を利用しない人、盗難経験のない人においては、自転車に関わる記憶を想起することによって、自転車への愛着が向上する効果がとりわけ強いという結果が示された。最後に、本研究の結果が放置駐輪問題に対して示唆する点についてとりまとめた。
著者
西村浩樹 桑原 教彰
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.59-66, 2017 (Released:2017-06-30)

日本において、1980年代に提唱された「ゆとり教育」により、学習内容の削減や指導時間の大幅な削減が行われ、学校は、週5日制授業が導入された。OECD(経済協力開発機構)が、2000年から3年ごとに実施している学習到達度調査(PISA)では、読解力において2003年に8位から14位、2006年には15位に順位を大幅にさげ、数学的リテラシーにおいても、2003年には1位から6位、2006年に6位から10位に下げる結果になるなど、「ゆとり教育」におる削減された学習指導要領での指導の影響から日本の学力低下問題が指摘されるようになった。ゆとり教育を取り入れた背景として、それまでの「詰め込み教育」と呼ばれ、1970年代までに実施されていた知識重視の増大した学習量が、創造力の欠如やテストが終わると忘れてしまう剥落学力と言われる問題があるとされたこと、また、学習内容を理解し、知識として取り入れていくことができず、授業についていけないことが原因で生徒間の学力格差が広がり、不登校や落ちこぼれなどの問題があったことが要因としてある。このため、2008年の「脱ゆとり教育」と称された学習指導要領では、「生きる力」を育むとし、学習面では、主に「基礎的な知識・技能の習得」を目的に改訂され、授業時間数は増加し、学習内容も増加させるなど大きく方向転換が図られた。また、基礎学力以外にも思考力、表現力を身につける必要性が指摘されている。この学習指導要領の改訂により、読解力では、2012年には15位から7位、数学的リテラシーでは、10位から7位に順位を上げる結果となった。つまり、基礎学力を習得することは、思考力・応用力・表現力を育成する上で必要な力であると言える。そこで本研究は、学習者が、学習をする際の認知過程に焦点をあて、学習材料と自身の知識を関連づける学習方法を検討するため、文字に着色することによる視覚的効果によって学習効果を向上させる目的に使用される蛍光マーカーペンを用いた学習方法が、学習時の認知過程、特に視線移動回数や視線停留時間にどのような影響を及ぼすかを検証し、その評価システムの開発を目的とした。
著者
杉田 正明 西村 明展 加藤 公 福田 亜紀 松田 和道 須藤 啓広
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.31-34, 2013 (Released:2013-07-04)
参考文献数
14

高地で行われるスポーツ競技会に対し、平地と同様のパフォーマンスが発揮できるよう「高地順化」が求められる。しかし、高地にまとまった期間、滞在しトレーニングを行うには経済的、時間的にも負担が大きく、さらに高地でのトレーニングではトレーニングの強度や量の低下が心配される。2010年に開催されたワールドカップ南アフリカ大会のサッカー男子日本代表は、事前に平地(国内)で安静時に低酸素を吸入し、高地順化を促進する取り組みを行い、ある一定の成果を収めることができたとされている。しかし、特殊なツールを用いた安静時での低酸素吸入に関しては、不明な部分も多く、トレーニングの順序性を考える上で、安静時の低酸素吸入がその直後に行うトレーニングへ悪影響を及ぼす可能性が危惧されるところである。そこで、本研究の目的は、低酸素吸入後にオールアウトまでの運動を行い、通常環境(常酸素)で行った運動と比較して、生体への負担度や運動能力に影響が生じないかどうかを検討することである。8名の健常な男性を対象とし、安静時に低酸素吸入ツールを用いて低酸素吸入(SpO2 88~92 %;1時間のプログラム)をさせ、安静(常酸素)30分後にハンドエルゴメーターを用いて多段階漸増負荷法でトレーニングをさせた。また、低酸素吸入をしない環境(常酸素)でも同様のことを行わせた。各負荷での心拍数、血中乳酸濃度および主観的運動強度(RPE)の値は負荷が上がることに上昇したが、各測定項目の最大値も含めて低酸素吸入の有無による差は認められず、運動継続時間についても有意な差は認められなかった。本研究の結果より、平地で安静時に低酸素吸入をさせても、30分後の平地での通常の運動トレーニングには悪影響を及ぼさないと考えられた。
著者
二宮 隆次 小野 浩幸 野田 博行
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.125-130, 2017 (Released:2018-01-06)

2002年から2010年までの8年6か月間に発刊された新聞記事から、年代別の産学連携活動の内容を読み取るために、分析対象記事に発刊年度の見出しを付して出現パターンの似通った語を探索し、さらに対応分析を行い活動の特徴についてテキストマイニング手法を用い分析した。その結果、①2002年度から2004年度のグループ(黎明期)、②2005年度から2007年度グループ(発展期)、③2008年度から2010年度のグループ(停滞期)の3グループに分類されることがわかった。黎明期では、産学連携の語群は主な活動の語に隣接し、大学、共同研究、教授、特許などの語と近接していることから活発に活動されていることが推測された。また、インキュベーション活動は、主な活動の語群から隔離していたが、施設入居のほか、運営の語が確認され、前向きな活動の実施が推測された。発展期では、インキュベーション活動は主な活動の語群内部に組み込まれ、起業家育成などが活発化していたと推測される。また、産学連携は主な活動の語群に隣接し、学生、製品、特許などの語が増えていることが見て取れた。さらに、ベンチャーキャピタルには、株式、公開、上場、キャピタル、銀行などがグループ化され活発化していたことが推測された。停滞期になると産学連携の語群は、主な活動の内部に組み込まれ、製品や商品開発活動が実施されていたが、インキュベーション活動やベンチャーキャピタルの活動はグループの語数が減少し、新たな起業活動や投資活動は停滞していたものと推測された。以上の結果は、政府による政策やグローバルな経済環境の変動などと一致し、わが国における産学連携活動は、これらに大きく影響していることが明らかになった。
著者
浦野 直人 岡井 公彦 相川 和也 田中 陽一郎 石田 真巳
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.131-136, 2013 (Released:2014-01-07)
参考文献数
14

多摩川は日本の代表的な都市河川である。近郊の生活廃水や産業排水は、水再生センターを経て再生水として流れ込んでおり、河川水の抗生物質濃度は日本の都市河川中でも高レベルにある。本研究は、多摩川流域における多剤耐性菌の蔓延度の解析を行った報告である。2010年7月に上流(青梅市)、2011年5月に中流(立川市)と下流(川崎市)から、多摩川の表層水と底泥を採集した。1~8種類の抗生物質を含む培地を用いて、採集サンプルから一般細菌および抗生物質耐性菌をスクリーニングした。多摩川の表層水中の一般細菌数と抗生物質耐性菌数は上流から中流・下流へと下るにつれて増大したが、底泥中の一般生菌数と耐性菌数は中流が最も多かった。細菌数は環境中の有機物濃度と相関があると考えられた。多剤耐性菌は、下流では2剤耐性菌が多く、中流では3剤耐性菌、上流では5~8剤耐性菌と川を遡るにつれて、多剤耐性能が高くなった。5-8剤耐性菌群にはBacteroidetes門、2~3剤耐性菌群にはFirmicutes門が多かった。また、上流の一般細菌中にBacteroidetes門、下流のそれにFirmicutes門が多かった。従って、上流に多く生息しているBacteroidetes門は多剤耐性能が高くなり易いと考えられた。各流域において、多剤耐性菌中に重篤な病原性細菌は発見されなかったが、肺炎桿菌、食中毒菌、敗血症菌、腸炎菌の存在が見とめられ、上流に多く発見された。
著者
渡部 真 宍戸 道明
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.41-46, 2016 (Released:2016-07-07)

人間の精神状態はスポーツや知的作業の結果に影響を与え、とくに高い集中状態のとき良好な結果を得ることができる。この集中力向上のアプローチのひとつにバイオフィードバック (Biofeedback: BF) が挙げられる。BFは、工学的な手法を用いて生体情報を利用者の視覚あるいは聴覚へとフィードバックし、心身の随意的制御を可能とする技法である。このとき、生体情報の呈示手法の違いにより集中力向上効果には差異が生じると考えられる。そこで本研究では、集中力向上を目的としたBFの装置の開発設計を行い、視覚と聴覚のBFにおける集中力の向上効果を比較した。とくに(1)BF前後における集中力の向上度、(2)継続的なBFによる平均集中力の推移について評価した。実験(1)では、被験者は12名とし呈示手法により6名ずつに分け、各被験者の安静時とBF時の平均集中力を比較した。その結果、視覚呈示法は6名中5名、聴覚呈示法は6名全員の集中力が向上した。一方、実験(2)では被験者3名とし、実験(1)と同様の実験を10日間継続して行った。その結果、両呈示手法にて集中力の向上が確認された。しかし、関心意欲の低下や、聴覚呈示法が困難であるために向上効果にばらつきが生じるなどの問題点が明らかとなった。以上の結果より、BFの効果は感覚器官の特性に依存しないことが明らかとなった。そのため、BFの装置の設計では呈示手法のデザインが重要であるといえる。