著者
船曳 和彦 岡崎 圭子 仲本 宙高 有賀 誠記 相澤 昌史 金子 松五 蒔田 雄一郎 堀越 哲 富野 康日己
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.318-323, 2008-09

目的:順天堂東京江東高齢者医療センターは2002年6月1日に開院し,質と安全度の高い先端的な高齢者医療を提供してきた.開院後5年間における血液浄化室にて施行した血液透析患者について解析し,今後の高齢者に対する透析療法に活かすため,わが国全体の慢性透析療法の現況と比較検討した.対象・方法:2002年6月より2007年5月までの5年間に,当センター血液浄化室にて透析療法を施行された慢性維持血液透析入院患者および維持血液透析療法に導入された入院患者計431名(男性265名,女性166名)を対象とした.対象患者を1年毎に性別,平均年齢,新規血液透析導入患者数を統計学的に評価するとともに,新規血液透析導入患者の原疾患および入院中の死亡原因について調査し,日本透析医学会の統計調査と比較検討を行った.結果:毎年透析患者数は増加傾向で開業時と比較して直近で約3倍となっていた.5年間の平均年齢は,70.8歳(男性69.4歳,女性73.4歳)であった.また,5年間で計89名(男性61名,女性28名)が新規導入され,平均年齢は71.6歳(男性66.7歳,女性76.4歳)であった.患者の原疾患は,糖尿病性腎症46名(51.7%),腎硬化症17名(19.1%),慢性糸球体腎炎7名(7.9%)であった.当センター入院中に46名が死亡し,原因として感染症が最も多く(14名),死亡患者全体の30.4%を占めていた.悪液質/尿毒症により死亡した5名の入院時平均血清アルブミン値は,24g/dlと低下していた.結論:当センター血液浄化室にて透析療法を施行された患者は増加傾向であり,2006年6月からの1年間では平均年齢73.6歳と全国と比較して7.2歳高齢であった.原疾患も糖尿病性腎症が半数以上を占め,急速進行性糸球体腎炎の比率も高いことは高齢化に起因すると思われる.死亡原因としては感染症が最も多く,患者の高齢化や糖尿病患者の割合が多く免疫不全により誤嚥性肺炎や敗血症に罹患しやすいためと考えられた.悪液質/尿毒症による死亡者は全例が高齢で長期透析患者であり,低アルブミン血症を伴っていたことから当センター入院中の高齢長期透析患者に対する適切な栄養管理および透析効率の確保が一層必要と思われる.