著者
是澤 紀子 堀越 哲美
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.39.3, pp.145-150, 2004-10-25 (Released:2017-08-02)
参考文献数
21
被引用文献数
1

本研究では、京都市街地を通過する花折断層南部の周辺地域を取り上げ、地震情報としての活断層を含む自然環境の条件と、信仰の場としての神社の立地との関係性を探ることによって、立地場所の地形地質的要素が神社とその周辺における景観の様相に及ぼす影響を把握し、景観整備のための景観形成を評価する指標を探ることを試みた。神社立地の頻度分布において活断層付近の神社は、活断層沿いに分布する様相を呈していることが示された。地形と地質の構成を検討した結果、活断層周辺の神社景観を形成する自然環境の表出は、基盤岩と被覆層という地質条件により区別できる可能性が考えられ、地形的特徴となる断層崖の地質のうち隆起した被覆層は、神社立地と自然環境との関わりを考察する上で、両者のインターフェースかつ指標であると推察される。このような自然環境条件の指標は、その土地固有の自然と文化により構成されるものであり、建造物と一体化した神社の周辺環境すなわち景観を保存整備していく上で重要である。
著者
藏澄 美仁 堀越 哲美 土川 忠浩 松原 斎樹
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.5-29, 1994-04-01 (Released:2010-10-13)
参考文献数
41
被引用文献数
60

日本人の体表面積の現状を把握するために, 45人の青年の体表面積を実測し比較・検討を行った.実測は, 体表解剖学上の区分に従って区分された区域毎に, 直接非伸縮性の粘着テープを貼付することで行った.その結果, 1) 性別による体表区分面積の間に有意な差が認められた.また, 同様に体型別による体表区分面積の間にも有意な差が確認された.2) 体表面積算出式の根拠となっているDuBoisら, 高比良, 藤本・渡邊らの行った実測値と本実測値との間に有意な差が認められた.3) 身長や体重といった身体諸値の一要因による体表面積の推定値は, 身長と体重の両方を構成要素とする算出値に比べ, 実測値との偏差が大きくなる傾向がある.4) 実測の結果より, 現在の日本人に最も適合性のある体表面積の算出式として, S=100.315W0.383H0.693を提案した.また, 日本人に対してDuBoisの体表面積算出式の定数項を修正した結果, S=72.18W0.425H0.725を提案した.
著者
横山 尚平 堀越 哲美
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.65, no.528, pp.89-94, 2000-02-28 (Released:2017-02-03)
参考文献数
30

The objective of this paper is to review the development of building services in Japanese hotels from Meiji era to the end of WWII. The beginning of Meiji, individual heating facilities were installed in hotels. Central heating systems were introduced during Taisho era. Steam heating was utilized in the most of hotels. Air conditioning systems was firstly installed in Kyoto Hotel in 1928 and all of rooms in Shin-Osaka Hotel in 1935 were air-conditioned. There were few hotels which had guest rooms with bath up to Showa. Water toilets were introduced to guest rooms in the same period. A history of the office building services in hotels were also described. Historical development was compared.
著者
長野 和雄 志村 恭子 三嶋 真名美 井上 司 桐山 和也 須藤 美音 堀越 哲美
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.81-94, 2020-11-12 (Released:2021-04-23)
参考文献数
39

本研究はアスファルト道路舗装材の改質によって夏季の屋外歩行者への熱的影響を緩和できるかを検討した.密粒,透水性,遮熱性,保水性アスファルト舗装および対照として芝生を加えた5種類の舗装体を豊田市内の屋外試験場に各5m四方の大きさで敷設した.観測項目は,各舗装体における鉛直温度分布・4成分放射量・蒸発水量,代表1点における気温・湿度・風向・風速・降水量・全天日射量,透水性舗装および保水性舗装の2小試験体の含水量変化であった.最も表面温度が低かったのはアルベドが約0.2であった芝生で,次いでアルベドが約0.3と最も高かった遮熱性舗装であった.アルベドが芝生と同程度であった保水性舗装の表面温度は遮熱性舗装よりわずかに高かった.これは芝生と保水性舗装では蒸発冷却によって表面温度上昇が抑えられていたためである.遮熱性舗装とは対照的に,密粒・透水性舗装はアルベドが0.1未満のため表面温度が非常に高いが,上向き短波長放射量は非常に少なかった.そのため新たに開発した体感指標・有効受感温度OETを用いて評価すると,全放射の体感影響は遮熱性舗装が最も大きく,保水性舗装が2番目に小さく,芝生が最も小さかった.ただし晴天日が続くと芝生の蒸発冷却効果は低下するが保水性舗装では継続するため,保水性舗装は歩行者の熱ストレス緩和に対し効果的と評価された.
著者
橋本 剛 鈴木 健次 長野 和雄 石井 仁 兼子 朋也 堀越 哲美
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.75, no.656, pp.907-913, 2010-10-30 (Released:2011-02-16)
参考文献数
24
被引用文献数
2 3

The objective of this study is to clarify the effect of a series of windbreaks on the microclimate in a settlement. Horage settlement is located in Tsukuba City where the seasonal cold wind called“Tsukuba-Oroshi”blows in winter, and that settlement is surrounded with windbreaks. Field observations of air temperature, humidity, wind direction and velocity were conducted in winter of 2006 and 2007. The protecting effect of windbreaks against the seasonal prevailing wind was observed clearly in the daytime when the strong wind blew in the observation area. Wind velocity in the built-up area was decreased with about 45% of that in the outside of the settlement. The heat island appeared clearly in the early morning and at night when the wind was weak or calm. Daily ranges of air temperature were small in the northeast area covered with dense windbreak woods.
著者
堀越 哲郎
出版者
東海大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

本研究は、アンチセンスRNA増幅法の導入により、ウミウシという各種の遺伝子の塩基配列が未知の動物について、古典的条件付けによる神経細胞での遺伝子発現量の変換を検出することを当初の目的として行った。遺伝子発現を検出するためには各遺伝子のDNAプローブが必要であり、神経可塑性に関与する可能性のある遺伝子としてPLC、CREB、PKC、TRK遺伝子、および全mRNA量の指標として解糖系酵素GAPDHの遺伝子のDNAプローブを作製した。文献とのDNAデータベース検索により各遺伝子の保存性の高い領域を探し、それに相当するDNA断片をラットまたはマウス脳cDNAからPCR法にて増幅し、精製してプローブとした。これらのプローブが軟体動物腹足類に対して使用可能かどうかを、モノアラガイ中枢神経系からジゴキシゲニン標識アンチセンスRNAを作製し、ドットブロットハイブリダイゼーション法で判定した。その結果、複数のプローブが使用可能なことが確認されたが、いずれもシグナルが弱く、単一神経細胞レベルでの検出は困難であると思われた。アンチセンスRNAを電気泳動で観察すると比較的短いRNA断片が多く、テンプレートである2本鎖cDNA作製法に問題があることが示唆された。cDNA作製法を改良するためにはcDNA合成効率を見積もる指標が必要であると考え、モノアラガイras遺伝子の部分塩基配列の決定を行ない、PCR法により検出することで指標とした。その結果、これまでのcDNA作製法ではモノアラガイ中枢神経系約2万分の1個分のcDNAからras遺伝子発現が検出された。現在はcDNA作製過程を改良しており、予備実験では少なくとも100倍程度増やすことが可能となってきている。モノアラガイ中枢の神経細胞数が約2万5千個であることを考え合わせると、今後、単一神経細胞レベルで遺伝子発現量が測定できるものと考えている。
著者
福島 英和 堀越 哲美
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間-生活環境系シンポジウム報告集
巻号頁・発行日
vol.36, pp.29-32, 2012-11-21

本研究は天候、時刻、景観構成要素の異なる景観に対する心理評価実験を行い、測定した物理量との関係も含めて考察することで、天候や時刻の変化により移ろう自然環境や、景観構成要素の違いが、建築とそれを取り囲む周辺環境との関係、すなわち建築のたたずまい方に与える影響を明らかにすることを目的としている。名古屋市内において歴史・文化の残る地区および現代的な街並にある9建築(群)を対象とし、2012年9月5日~11日に、各日の日出直後、太陽南中時、日没直前に各地点で写真撮影、照度・色度・輝度の測定を行った。得られた画像を用いてSD 法による心理評価実験を行った。天候の変化が「空気感」に、景観構成要素の違いが「美的感」に影響していることや、朝、夕方は景観構成要素の支配力、昼は天空の支配力が大きいことが確認された。心理反応を証明する物理量を見出した。
著者
豊田 一恵 谷本 光生 松本 昌和 合田 朋仁 堀越 哲 富野 康日己
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.387-394, 2011-08-31 (Released:2014-11-11)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

目的: オウギ (黄蓍;astragali radix) は, マメ科のギバナオウギ, ナイモウオウギの根から調製される生薬で, 血圧低下・利尿・肝保護・免疫増強・抗菌・強壮・鎮静作用などを有し, 種々の漢方薬に調合されている. 慢性腎不全患者において, オウギ投与により血清クレアチニン値の低下することが報告がされている. しかし, そのメカニズムは十分には解明されていない. また, 腎不全では, 酸化ストレスマーカーの一つである一酸化窒素合成酵素 (NOS) が腎組織で過剰発現しており, 腎不全の進展・増悪因子の一つとして知られている. 今回, 腎不全モデルである5/6腎摘ラットを用い, オウギ投与による腎機能ならびに腎組織におけるNOSの発現抑制効果について検討した. 方法: 8週齢で5/6腎摘出術を施行した雄性SDラットを, 12週齢から12週間 (1) オウギ10g/kg体重/日を混餌投与したオウギ投与群 (n=5), (2) 未治療群 (n=5) の2群に分け, (3) 非腎摘出群 (n=5) を対照とした. それぞれの群に対して, 尿中アルブミン/クレアチニン比 (ACR), 血清クレアチニン, 血中尿素窒素 (BUN), クレアチニンクリアランス (CCr), 尿中8-hydroxy-2'-deoxyguanosine (8-OHdG) を測定した. また, 24週齢で腎組織の糸球体硬化指数 (Sclerosis Index) をPAS染色により算出し, 血管内皮型NOS (eNOS), 誘導型NOS (iNOS) および酸化ストレスマーカーであるニトロチロシンの発現を腎免疫組織染色により検索した. 結果: CCrは, オウギ投与群で有意な改善が認められた (p<0.05). 血清クレアチニン, BUNは, オウギ投与群で未治療群と比較し低下傾向がみられた. しかし, ACRや尿中8-OHdGには有意な差はみられなかった. オウギ投与群の腎糸球体硬化指数 (Sclerosis Index) は, 未治療群に比べ有意な低下が認められた (p<0.0001). また, オウギ投与群におけるeNOS, iNOSおよびニトロチロシンの発現は, 未治療群に比べ有意な低下が認められた (p<0.0001). 結論: オウギは, 腎におけるNOS (eNOS, iNOS) およびニトロチロシンの発現抑制を伴って, 腎糸球体硬化病変の進展を抑制する可能性が示された.
著者
福島 英和 堀越 哲美
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間-生活環境系シンポジウム報告集
巻号頁・発行日
vol.37, pp.33-36, 2013-11-22

本研究は時刻、天候、景観構成要素の異なる景観に対する心理評価を行い、時刻や天候の変化により移ろう周辺環境や、景観構成要素の違いが、移ろう周辺環境との関係の中から表出される建築の印象すなわち建築のたたずまいに与える影響を明らかにすることを目的としている。名古屋市内において歴史・文化の残る地区および現代的な街並にある9建築(群)を対象とし、2013年8月7日〜13日に、各日の日出直後、太陽南中時、日没直前に各地点で写真撮影を行った。得られた画像を用いて建築のたたずまいについて各建築毎に最も美しい場面を選択し、それについてSD法による心理評価を行った。その結果、全体では朝26%、昼46%、夕28%の割合で場面が選ばれ、朝夕に比べて昼の景観が高い評価を得た。朝夕の景観では、朝日の反射により建築が輝いているものや、朝焼けや夕焼けにより印象的な空を持つものが選ばれる傾向が見られた。建築のたたずまいについて、時刻や天候の移ろいによる景観の演出性の効果が示された。
著者
藏澄 美仁 土川 忠浩 近藤 恵美 石井 仁 深川 健太 大和 義昭 飛田 国人 安藤 由佳 松原 斎樹 堀越 哲美
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.115-127, 2012-11
参考文献数
55
被引用文献数
1

本研究の目的は、屋外環境における至適温熱環境の範囲を提案することである。実験は、夏季と冬季の屋外温熱環境における人体の生理的・心理的反応を求める実測を被験者38名を用いておこなった。延べ実測数は906であった。ETFeと人体の生理的・心理的反応との関係を明確にした。得られた知見を以下に示す。暑くもなく寒くもない温熱的に中立な温冷感申告をすると考えられる夏季のETFeは31.6℃、冬季のETFeは36.0℃を得た。季節により温冷感申告の評価に違いが示され、夏季の場合と比較して冬季の場合の方がETFeに対する傾きが大きくなり、暑さに対する反応よりも寒さに対する反応が強くなる傾向を明らかにした。快でもなく不快でもない快適感申告をする寒い側の温冷感申告値は44.7、暑い側の温冷感申告値は55.1を得た。この条件を快適温熱環境範囲としてETFeと温冷感申告値との関係から快適なETFeの範囲を求めると、ETFeが31.6〜38.5℃を得た。
著者
大西 一也 堀越 哲美
出版者
大妻女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

近年の住宅設計においては、過度にエネルギーに依存した建築計画、設備計画が主体となっており、自然の恩恵を享受する新たな現代的手法を目指すことが課題となっている。本研究は、昭和戦前期における中小住宅の平面型が確立していく過程で、住宅の洋風化、独立性の確保とともに、通風環境や日照環境が置かれた状況を分析し、住宅デザインに及ぼす環境的な配慮と気候設計理論を考察し、現代的展開の可能性を探ることを目的とした。昭和戦前期に『朝日住宅図案集』及び雑誌『住宅』に掲載された文化住宅において、居間の通風環境を、住宅の規模や平面形状と関係づけて分析を行った。また、大正から現代までの住宅の通風環境の史的変容についても、住宅図案集をもとに比較分析した。調査方法として、開口部の関係により居間の通風状況を簡易に算定できる指標として「通風可能面積率」を開発し、住宅の平面形状と関係づけて居間の通風環境や通風輪道を分析した。気候風土や現代の生活様式に適応した住宅を設計する上で、この通風状況を簡易に算定する指標は有効になると考えられる。『朝日住宅図案集』に掲載された住宅を対象に、断面図と平面図に基づき、住宅の採光環境を日照到達距離という断面的な簡易指標で検討し、夏季の日射遮蔽と冬季の日照確保に最適な断面形状を得た。昭和戦前期において展開した気候設計理論についてまとめることを目的として、昭和戦前期に研究者や建築家により単行本として刊行された文献や雑誌記事を対象として、室内気候設計手法を抽出整理し、当時のパッシブ手法を分析した。また雑誌『住宅』に掲載された住宅事例を対象として、室内気候設計手法の実践及び通風環境の状況を検証した。
著者
梅宮 弘光 矢代 眞己 大川 三雄 土崎 紀子 野沢 正光 堀越 哲美 米山 真理子
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住宅総合研究財団研究論文集 (ISSN:18802702)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.265-276, 2007 (Released:2018-01-31)

山越邦彦は,1930年代に設計した2つの実験住宅において,次のような当時における新しい技術を導入した。1)将来の生活変化に対応可能な住宅建築のための乾式構造(トロッケンバウ),2)生理学に基づいた快適環境を実現する輻射熱暖房(床暖房),3)住人を生態系に位置づける循環型住宅諸設備(浄化槽,メタンガス発生装置等)。これらは,生活の快適性を介して人間の生命現象に密接に関係するものであり,その試みは,人間疎外につながる近代化に対してオルタナティブな近代建築像を提示しようとするものだったと考えられる。ここに,山越のアヴァンギャルドとしての姿勢をみることができよう。それはまた,今日さまざまな環境問題に直面している私たちにとって示唆に富む。
著者
鄭 椙元 堀越 哲美 梅村 茂樹 宮本 征一 水谷 章夫
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.62, no.493, pp.77-84, 1997-03-30 (Released:2017-02-02)
参考文献数
29
被引用文献数
7 6

The purpose of this paper is to assess the solar radiation load on thermal comfort in outdoor thermal environments. An urban street canyon and an open space were selected as sites for field survey. Outdoor climatic conditions, subject's thermal sensation and skin temperatures were measured on the sites for a few day in summer, autumn and winter. A modified mean radiant temperature was introduced to indicate the effect of solar radiation and radiation interchange between outdoor objects on the human body. An operative temperature and a standard operative temperature were calculated based on the modified mean radiant temperature. There are high correlation between the operative or standard operative temperature and thermal sensation or mean skin temperature. Those indices, especially the standard operative temperature, are considered to be effective in the outdoor environment.
著者
持田 徹 堀越 哲美 落藤 澄 嶋倉 一實
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会 論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.48, pp.39-47, 1992-02-25 (Released:2017-09-05)
被引用文献数
1

人体と環境との間の熱平衡式を基礎にして,温熱指標を作成しようとする時,蒸汗放熱量の表現がその全体像を決めると言っても過言ではない.本論文では,まず蒸汗放熱の表示式の特徴と,それらが熱平衡式の中で果たす役割について考察した.次に,生理実験の結果から,一定の平均皮膚温の下で,ぬれ面積率の値がある範囲内で変化することを確認し,このような挙動を示すぬれ面積率を考慮した場合,等平均皮膚温線は,湿り空気線図上で曲線を描くことを導いた.さらに,平均皮膚温ごとに,取り得るぬれ面積率の最大値と最小値を,実験データと理論的な検討から決定し,ぬれ面積率の特性曲線を定めた.そして,この特性曲線を基に,新しいタイプの温熱指標となる,等平均皮膚温線群を提案した.
著者
長野 和雄 堀越 哲美
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.23-34, 2017-05-01 (Released:2017-05-31)
参考文献数
41

奈良県旧宗檜村の土地台帳に記載されているすべての小字の中から日当たりの良悪を表す日向地名・日陰地名を収集し,その地の日照・日射特性を GIS により検証した.日陰地名は日向地名に比べ標高が低く,天空率が低く,可照時間が短い.日陰地名の傾斜方位は北・北西・北東,日向地名は南西・南に多い.冬至における日陰地名の日積算散乱日射量,直達日射量は日向地名のそれぞれ 81%,21% と顕著に少ない.しかしながら日陰地名を持つ地にも日向地名同様に住宅地・農作地があり,土地利用形態に明確な差は認められない.また住民は既に小字名をあまり用いず,日当たりに対する認識も必ずしも明確ではない.
著者
馬渕 浩一 堀越 哲美
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.69, no.578, pp.41-48, 2004-04-30 (Released:2017-02-09)
参考文献数
66
被引用文献数
1 1

The aim of this study is to provide some suggestion on the establishment of Nagoya Municipal Science Museum (NMSM). The result of the analysis are as follows: 1)NMSM was established by Nagoya City as a first public museum of science and industry in Japan after the World War II, being introduced the concept of German Museum in Munich. 2) Dr. Shimizu, the president of Nagoya Institute of Technology and the former director of Education Ministry, designed the exhibition of NMSM to encourage the practical science and technology education for visitors. His plan was supported by both local private sectors and universities.
著者
渡邊 慎一 堀越 哲美
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.49-59, 2012 (Released:2012-08-10)
参考文献数
50
被引用文献数
3

屋外の温熱環境を評価する際,日射は極めて重要な要素である.多くの温熱指標は,その算出において平均放射温度を入力値として要求している.本報では,長波長および短波長放射を考慮した屋外における平均放射温度の算出方法を概説した.まず,屋外における平均放射温度の算出理論を記述した.そして,長短波放射計を用いた 6 方向および上下 2 方向の測定に基づいた算出方法を示した.さらに,より簡便な測定方法であるグローブ温度計を用いた算出方法を示した.実際に測定を行う際には,使用できる測定器および要求される精度から適切な算出法を決定する必要がある.
著者
兵頭 昌雄 大岩 忠彦 岩澤 宏哲 清水 英寿 中山 一大 藤江 康光 堀越 哲郎
出版者
東海大学
雑誌
東海大学紀要. 開発工学部 (ISSN:09177612)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.213-222, 2000-03-10
被引用文献数
1

真核生物のリボソーム遺伝子(rDNA)は,ゲノム内で反復配列として数百コピー存在し,核小体の中心を形成している。このDNA領域の塩基配列は分子進化学における研究対象となっている。我々の研究室で維持されている4系統の日本産メダカ(0ryzias latipes)における18S rDNA領域の構造について研究する目的で,このDNA配列をPCR法により増幅する条件について検討した。その結果得られた最適条件は,(1)鋳型DNA量;100ng,(2)プライマー濃度;0.2μM,(3)変性;94℃1分,アニーリング;60℃1.5分,伸張;72℃2分,(4)サイクル数;35,であった。この条件下で約1.8kbと比較的長いDNA鎖である18S rDNAが増幅でき,その反応液中の収量は19.5ng/μ1であった。18S rDNAの収量をさらに増加させるために,PCR産物を鋳型として再増幅することを試みた。しかし,再増幅では,1.8kb以外の長さの異なるバンドも増幅されており,有効ではないことが明らかになった。つぎに4系統のメダカ(近交系野生型クロメダカ〔HB-32C系統〕,沼津市浮島地区で採取された野生型クロメダカ〔BMT系統〕,体色に関する変異株であるヒメダカおよびアルビノ〔i/i系統〕)のゲノムDNAをもとにPCRにより18S rDNAを増幅した。その結果いづれの系統のDNAからもほぼ同量の18S rDNAが得られ,ゲノムあたりのコピー数は一定であることが示唆された。