著者
眞田 英毅
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.69, 2018-08-30 (Released:2019-11-08)
参考文献数
30

本稿の目的は,学校外教育が出身階層の低い子どもたちの高校進学に与える効果を検証することにある.高校進学段階での教育達成に関する多くの先行研究では,進学校に進学したか否かで学校外教育の効果を測っているが,進学校以外の高校への進学も含めた教育達成は等閑視されている.また多くは,教育における効果はどのサンプルでも一定であるという仮定をおき,観察されない異質性も考慮しておらず,学校外教育の効果を十分に検討しているとはいえない.そこで本稿ではこれらの課題を克服するため,傾向スコアを用いて反実仮想的な状況を作り出し,進学校以外の高校(中堅校・進路多様校)への進学も含めた高校進学における学校外教育の効果を検証した.結果,通塾経験は進路多様校から進学校・中堅校への進学を促進させており,特に中堅校進学では親学歴の不利を埋めていた.また,親学歴が低い男性が家庭教師や通信教育を経験することで,進路多様校より進学校に進学しやすいことが示された.他方,女性では家庭教師経験や通信教育経験は親学歴の不利を埋める効果を確認することはできなかった.これらの結果により,学校外教育を経験することで進学率の高い学校に進学できる可能性が高まると部分的にいえる一方,男女によって学校外教育の効果が異なることや学校外教育の種類によって学力が底上げされる層が異なる可能性も示唆された.