著者
紅粉 睦男 井川 裕之 森 孝之 山口 美香 北口 一也 島崎 洋 赤池 淳 真尾 泰生 川崎 君王
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.32-39, 2021 (Released:2021-07-01)
参考文献数
19

目的:当院人間ドック健診では,2010年より頚部超音波検査を導入し,動脈硬化性病変評価と同時に甲状腺スクリーニング検査も実施している.2010年~2013年度の4年間の甲状腺超音波検診の成績と課題について報告する.対象と方法:オプション検診として12,827例に実施.男女ほぼ同数,平均年齢56.8±11.0歳であり,50歳代,60歳代が多かった.甲状腺には治療対象にならない軽微な病変も高頻度にみられ,受診者に過剰な不安・負担を与えないように当院独自の判定基準を作成した.5mm以上の悪性を疑う病変,10mm以上の濾胞性腫瘍,びまん性の甲状腺病変を精密検査の対象とした.結果:①何らかの超音波所見を有する頻度は,男性42.1%,女性61.6%で,その多くは嚢胞や腺腫様結節,小さな濾胞性腫瘍であった.②精査を要するC判定は359例:2.8%で,そのうち腫瘍性病変は205例:1.6%であった.当院での精査受診率は57.1%であった.③4年間の甲状腺がん発見数は54例(濾胞癌,髄様癌が各1例,乳頭癌52例)であった.甲状腺微小乳頭癌18例で,手術13例,経過観察5例であった.④甲状腺がん発見率は0.42%で,精査を要する全例が当院受診したと仮定した場合の甲状腺がん推定発見率(罹患率)は0.74%であった.結論:当院独自の精査基準により,要精査率を多くせず効率よく甲状腺がんが診断され,人間ドック健診での甲状腺超音波検査の有用性が示唆された.さらなる甲状腺検診の精度向上は必要と思われ,特に甲状腺微小乳頭癌への対応が重要と思われた.
著者
紅粉 睦男 工藤 ひとみ 豊島 哲子 松本 啓 関口 雅友 真尾 泰生
出版者
THE JAPAN DIABETES SOCIETY
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.867-871, 2008

インスリン自己免疫症候群(IAS)は,インスリン自己抗体に関連した自発性低血糖を来す疾患である.今回,糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)にて発症した特異なIASの1例を経験した.症例は44歳,女性.減量目的でαリポ酸摂取を2006年6月より開始.同年7月下旬,感冒様症状に引き続きDKAを発症.入院時血糖431 mg/d<i>l</i>, 尿ケトン(4+)で膵酵素の上昇も認めた.インスリン治療開始前の血中IRI: 5,644 μU/m<i>l</i>, インスリン抗体結合率:99%と著明高値を示した.HLAはDRB 1*0406を有しており,αリポ酸が誘因のIASと診断した.DKA治癒後早期にインスリン注射は中止でき,αリポ酸中止によりインスリン抗体結合率も低下した.本例では抗体のインスリン結合能が高度で,血中遊離インスリンが枯渇した状態に,ウイルス感染・膵炎を併発したためにDKAを発症したと推察された.健康食品ブームの中,安易なサプリメント摂取への注意喚起が必要である.