著者
矢部 沙織 高橋 博之 後藤田 裕子 森 孝之 井川 裕之 工藤 ひとみ 松本 哲 紅粉 睦男 関口 雅友
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.34-40, 2015-01-30 (Released:2015-02-04)
参考文献数
16
被引用文献数
1

62歳男性.30歳時に糖尿病を発症しインスリン治療を開始され,10年前より1日4回のインスリン強化療法を施行していた.62歳時,糖尿病性壊疽のため左足第I趾切断術目的に当院の心臓血管外科に入院.術後創部治癒は良好であったが,空腹時血糖値が50~500 mg/dl台と激しく変動したため,血糖コントロール目的に当科転科となった.インスリンを増量したが,600 mg/dl以上の高血糖が数日間持続した.腹部の診察をしたところインスリン注射部位に,径4 cm大の皮下硬結を2カ所認めた.皮膚生検の結果,インスリン頻回注射部位に形成された皮下限局性アミロイド沈着と診断した.注射部位変更後,血糖コントロールは著明に改善し,総インスリン量は減少した.長期インスリン治療患者に対しては注射手技指導を徹底し,さらに血糖コントロール不良例では,皮下限局性アミロイド沈着の形成を念頭に置いた丹念な身体診察が重要である.
著者
紅粉 睦男 工藤 ひとみ 豊島 哲子 松本 啓 関口 雅友 真尾 泰生
出版者
THE JAPAN DIABETES SOCIETY
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.867-871, 2008

インスリン自己免疫症候群(IAS)は,インスリン自己抗体に関連した自発性低血糖を来す疾患である.今回,糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)にて発症した特異なIASの1例を経験した.症例は44歳,女性.減量目的でαリポ酸摂取を2006年6月より開始.同年7月下旬,感冒様症状に引き続きDKAを発症.入院時血糖431 mg/d<i>l</i>, 尿ケトン(4+)で膵酵素の上昇も認めた.インスリン治療開始前の血中IRI: 5,644 μU/m<i>l</i>, インスリン抗体結合率:99%と著明高値を示した.HLAはDRB 1*0406を有しており,αリポ酸が誘因のIASと診断した.DKA治癒後早期にインスリン注射は中止でき,αリポ酸中止によりインスリン抗体結合率も低下した.本例では抗体のインスリン結合能が高度で,血中遊離インスリンが枯渇した状態に,ウイルス感染・膵炎を併発したためにDKAを発症したと推察された.健康食品ブームの中,安易なサプリメント摂取への注意喚起が必要である.