著者
真崎 美矢子 道津 安正 増山 泰治 山下 京子 古賀 宏延 須山 尚史 河野 茂 山口 恵三 広田 正毅 斉藤 厚 原 耕平
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.35, no.9, pp.709-713, 1987-09-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
14

マクロライド系抗生剤であるEM, JM, TE-031, RKM, Ru-28965の5薬剤について, ヒト多形核白血球内への移行性をradioisotope 14Cをラベルした薬剤を用いて測定した。37℃培養下での移行率 (細胞内/外濃度比) は, EM; 6.6倍, JM;15.5倍, TE-031;16.4倍, RKM;30.5倍.Ru-28965;21.9倍と.いずれも高値を示した。ホルマリン処理好中球および低温培養下での移行率は5薬剤ともに著明に低下した。また, pHが酸性になるほど移行率は低下し, pH依存性が示唆された。細胞のエネルギー代謝阻害剤であるフッ化カリウムおよびシアン化ナトリウムを添加すると, それぞれ2~47%, 4~38%程度の移行率の低下が認められた。またヌクレオシドの一種であるアデノシンの添加ではEM以外の4薬剤で8~17%の移行率の低下がみられた。細胞内へ移行した5薬剤は, 細胞外の薬剤を除去するといずれも急速に細胞外へ流出し, 5分後には30%以下に低下した。今回我々が用いた5種類のマクロライド系抗生物質は, いずれも良好な細胞内移行性を示し, これらの細胞内への移行には能動輸送が関与していることが示唆された。