著者
矢部 岳広 高嶋 敦史
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p>大径木は、亜熱帯性照葉樹林において保全すべき森林の指標であると考えられている。沖縄島北部やんばる地域ではヤンバルテナガコガネやケナガネズミなどの大径木に依存する希少な固有種が多く生息しており、大径木の生育状況を把握することは生態系保全のために重要であると考えられる。そこで本研究では、同地域の非皆伐天然林において胸高直径30cm以上の大径木の生育状況を調査した。第二次大戦頃から強度な伐採活動が認められない森林域の尾根から斜面にかけて試験地を設定した。その結果、大径木の密度は全樹種合計で約160本/haであり、第一優占種はイタジイ、第二優占種はイスノキで、イジュは極めて少ない割合であった。やんばる地域の主要構成樹種であるオキナワウラジロガシは出現しなかった。やんばる地域の非皆伐林天然林を調査した既往の研究と比較すると、遷移後期種であり非皆伐老齢林の指標と考えられているイスノキがより多くみられ、攪乱依存種で明るい林床で更新するイジュの本数が少なかった。このことから、本試験地は非皆伐天然林の中でも特に安定した成熟林であると考えられた。</p>