著者
植田 睦之 岩本 富雄 中村 豊 川崎 慎二 今野 怜 佐藤 重穂 高 美喜男 高嶋 敦史 滝沢 和彦 沼野 正博 原田 修 平野 敏明 堀田 昌伸 三上 かつら 柳田 和美 松井 理生 荒木田 義隆 才木 道雄 雪本 晋資
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.F3-F11, 2014-10-01 (Released:2014-10-15)
参考文献数
29

2009年から2013年まで,全国21か所の森林で繁殖期の鳥類の個体数変化についてモニタリングを行なった.98種の鳥が記録され,そのうち10地点以上で記録された25種を対象に解析を行なったところ,薮を生息地とするウグイスとコルリが減少しており,キビタキが増加していた.ウグイスとコルリはシカの植生への影響が顕著な場所で個体数が少なく,シカによる下層植生の減少がこれらの種の減少につながっていることが示唆された.しかし,シカの影響が顕著でない場所でも減少傾向にあり,今後のモニタリングにより減少の原因のさらなる検討が必要である.
著者
八木橋 勉 渡久山 尚子 石原 鈴也 宮本 麻子 関 伸一 齋藤 和彦 中谷 友樹 小高 信彦 久高 将洋 久高 奈津子 大城 勝吉 中田 勝士 高嶋 敦史 東 竜一郎 城間 篤
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p>ヤンバルクイナは沖縄島北部のやんばる地域のみに分布しており、環境省のレッドリストで絶滅危惧IA類(CR)に分類されている。森林面積や外来種とヤンバルクイナの繁殖分布の関係を明らかにするため、沖縄島北部でプレイバック法による調査を2007年から2016年の繁殖期に3年ごとに4回実施し、確認個体数を応答変数とするGAMMによる統計解析を行った。その結果、ヤンバルクイナは、マングースが少ない場所ほど多い、広葉樹林面積が大きい場所ほど多い、畑地草地面積が大きい場所ほど多い、2007年と比較して近年確認個体数が増加している、という統計的に有意な関係がみられた。また、確認地点数も増加していた。これらの結果から、地上性のヤンバルクイナは、外来種であるマングースの影響を強く受けているが、マングース防除事業の効果により、近年分布が回復していると考えられた。ヤンバルクイナは広葉樹林面積が大きい場所で多いことから、近年大面積伐採が減少していることも分布回復に有利に働いていると考えられた。同時に畑地草地面積が大きい場所で多いことから、林内だけでなく、林冠ギャップ、林縁や草地なども生息環境として重要である可能性が考えられた。</p>
著者
阿部 真 阿部 篤志 齋藤 和彦 高嶋 敦史 高橋 與明 宮本 麻子 小高 信彦
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p>大型の着生ラン、オキナワセッコク(<i>Dendrobium okinawense</i> Hatusima et Ida)は、沖縄島北部やんばる地域を代表する固有種のひとつである。戦後の森林伐採や乱獲のために激減したとされ、環境省と沖縄県が絶滅危惧種(それぞれIB類、IA類)に指定する。本研究は、本種野生株の分布情報から、その適切な保護・回復のために有効な森林管理を検討する。これまでに本種が成熟林に依存すること、着生木(ホスト)樹種の選好性があること、また、2018年までに整備された国立公園の保護区域が現生する株の多くをカバーすることを明らかにした。本報告では、探査を重ね400近くになった着生木の情報から、本種の生育に求められる環境条件を、林齢や地形について絞り込む。伐採や盗掘のリスクを抑えつつ適切な林分や配置を誘導することにより、本種の分布について効果的な回復が期待できる。研究は(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費(課題番号4-1503及び4-1804)の支援を受けた。また、環境省の調査資料(やんばる地域希少植物生育状況調査、平27~28)の提供を受けた。</p>
著者
高嶋 敦史 中西 晃 森下 美菜 阿部 真 小高 信彦
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p>沖縄島やんばる地域の亜熱帯林において、樹洞はケナガネズミやヤンバルテナガコガネなどの希少野生生物も利用する重要な生態学的資源である。そこで本研究では、やんばる地域の非皆伐成熟林2箇所に試験地(面積0.36haと0.25ha)を設け、胸高直径(DBH)15cm以上の幹を対象にDBHと樹洞の発生状況を調査した。なお、樹洞は立木の幹、枝、根に発生している奥行き10cm以上の穴と定義した。調査の結果、試験地内の立木の第一優占種はイタジイで、それに次いでイスノキやイジュが多かった。イタジイの樹洞を有する率(以下、樹洞発生率)は全体では22%であったが、DBH40cm以上では52%に達するなど、DBHが太くなるほど樹洞発生率が高くなる傾向が確認された。イスノキでも同様にDBHが太くなるほど樹洞発生率が高くなる傾向が確認されたが、樹洞発生率は全体で52%、DBH30cm以上では77%、同40cm以上では90%となっており、イタジイと比べてより細い幹でも高い樹洞発生率を呈していた。その一方、イジュにはまったく樹洞が発生していなかった。このように、樹洞発生率はDBHが太くなるほど高くなる傾向があるものの、樹種間による違いが大きいことが明らかになった。</p>
著者
大嶋 優希 高嶋 敦史
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p>沖縄島北部やんばる地域の代表的な針葉樹であるリュウキュウマツは、人工林や里山などに広く植栽されているほか、林道沿いなどの人為的影響を受けた開けた場所に定着していることが多い。リュウキュウマツは、世界自然遺産候補地やその周辺にも広く分布しているが、既往の研究は人工林における木材生産を扱ったものが中心で、天然林における出現傾向や生育密度などは十分に検証されていない。そこで本研究では、やんばる地域に広がる天然生二次林においてリュウキュウマツの出現と地形の関係を評価することを試みた。現地調査では、天然生二次林内の主に尾根に沿って設定された合計約4.5kmの複数の歩道で、左右両側10m内のリュウキュウマツを記録した。リュウキュウマツの定着位置はGPSで記録し、その後GISで出現傾向と地形との関係性を検証した。その結果、記録されたリュウキュウマツは30本と少なく、尾根の先端部にまとまって出現する傾向があったことから、天然林におけるリュウキュウマツの生育環境は極めて限定的である可能性が考えられた。</p>
著者
高橋 與明 高嶋 敦史 小高 信彦
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p>沖縄島北部のやんばる地域に分布している亜熱帯林は、世界的に見ても希少な植物相を育む森林であり、多くの固有種や希少種が生息している。沖縄県は台風の常襲地域であるため、森林は台風の影響を受け、高い頻度で撹乱が発生する(小多ら、2015)。例えば2012年には、最大瞬間風速が50m/sを超えるような大型の台風によってやんばる地域の森林が広範囲に渡り大きく攪乱されたが、そのような攪乱が森林生態系に与える影響は大きいと考えられる。広大な森林域の生態系に対する攪乱の影響を正しく評価するためには、局所的な生態系調査は必要であるとともに、林冠木が暴風によって被害を受けた地理的な位置を広域で把握することも必要となる。本研究では、後者について大型の台風による攪乱前後の二時期の航空機リモートセンシングデータからやんばる地域の森林変化を検出する手法を考案し、変化量をマッピングした。使用したリモートセンシングデータは航空機LiDARデータ(台風攪乱前)と空中写真測量データ(台風攪乱後)である。マッピングの結果、負の変化量が大きな場所は林冠木の樹冠が損傷している被害地(二次元的な空間分布)を的確に表現していることが示された。</p>
著者
矢部 岳広 高嶋 敦史
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p>大径木は、亜熱帯性照葉樹林において保全すべき森林の指標であると考えられている。沖縄島北部やんばる地域ではヤンバルテナガコガネやケナガネズミなどの大径木に依存する希少な固有種が多く生息しており、大径木の生育状況を把握することは生態系保全のために重要であると考えられる。そこで本研究では、同地域の非皆伐天然林において胸高直径30cm以上の大径木の生育状況を調査した。第二次大戦頃から強度な伐採活動が認められない森林域の尾根から斜面にかけて試験地を設定した。その結果、大径木の密度は全樹種合計で約160本/haであり、第一優占種はイタジイ、第二優占種はイスノキで、イジュは極めて少ない割合であった。やんばる地域の主要構成樹種であるオキナワウラジロガシは出現しなかった。やんばる地域の非皆伐林天然林を調査した既往の研究と比較すると、遷移後期種であり非皆伐老齢林の指標と考えられているイスノキがより多くみられ、攪乱依存種で明るい林床で更新するイジュの本数が少なかった。このことから、本試験地は非皆伐天然林の中でも特に安定した成熟林であると考えられた。</p>
著者
村上 拓彦 吉田 茂二郎 高嶋 敦史
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.101, no.4, pp.163-167, 2019-08-01 (Released:2019-10-24)
参考文献数
17

1660年頃作成の屋久島の古い絵図「屋久島古図」が存在する。この絵図は非常に詳細で,島内の集落名,山頂名,河川名,場所名,スギを含む数種の樹木の存在,島中央への歩道等が書き込まれている。そこで本研究では,この地図を現代図と重なるようにGIS上で補正し,当時のヤクスギ分布を推定した。さらに現代図のヤクスギ分布域との比較から,その間の変化を把握しかつその変化要因を分析し,最後にこの地図の今後の利用可能性を検討した。その結果,この地図は現代図と非常に良く重ね合わせることができ,当時のヤクスギ分布域は島東部の安房川流域に偏り,標高200 m付近の低標高域にも存在していたことが判明した。1660年当時にヤクスギが分布していた地域で,その後の伐採でヤクスギが消失した地域は,低標高の地域と川の近くに多かった。以上からこの屋久島の地図は,作成当時の森林状態を詳細に記録した地図として活用できる可能性が示唆された。
著者
村上 拓彦 吉田 茂二郎 高嶋 敦史
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.101, no.4, pp.163-167, 2019

<p>1660年頃作成の屋久島の古い絵図「屋久島古図」が存在する。この絵図は非常に詳細で,島内の集落名,山頂名,河川名,場所名,スギを含む数種の樹木の存在,島中央への歩道等が書き込まれている。そこで本研究では,この地図を現代図と重なるようにGIS上で補正し,当時のヤクスギ分布を推定した。さらに現代図のヤクスギ分布域との比較から,その間の変化を把握しかつその変化要因を分析し,最後にこの地図の今後の利用可能性を検討した。その結果,この地図は現代図と非常に良く重ね合わせることができ,当時のヤクスギ分布域は島東部の安房川流域に偏り,標高200 m付近の低標高域にも存在していたことが判明した。1660年当時にヤクスギが分布していた地域で,その後の伐採でヤクスギが消失した地域は,低標高の地域と川の近くに多かった。以上からこの屋久島の地図は,作成当時の森林状態を詳細に記録した地図として活用できる可能性が示唆された。</p>
著者
高嶋 敦史 大島 順子
出版者
森林計画学会
雑誌
森林計画学会誌 (ISSN:09172017)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.59-65, 2019

<p>大径木は,亜熱帯性照葉樹林の保全において重要な指標であると考えられている。そこで本研究では,沖縄島やんばる地域に広がる約65年生の二次林において,大径木の分布と地形の関係を小流域レベルで調査した。その結果,胸高直径30cm以上の大径木の密度は全樹種合計で91.0本/haであり,そのうちイタジイが65.2%,イジュが20.9%,オキナワウラジロガシが6.4%を占めていた。やんばる地域の非皆伐成熟林を調査した既往の研究と比較すると,大径木の密度は半分以下に留まっていた。調査対象の小流域を尾根,中間斜面,谷の3つの地形に区分して大径木の密度やサイズを比較したところ,尾根では大径木の密度が谷や中間斜面の半分以下であった。また,イタジイやイジュは,尾根より谷でサイズが大きくなっていた。このように,やんばる地域の約65年生の二次林では,谷を中心にサイズの大きな幹が分布していた。また,谷から中間斜面にかけては過去の伐採を免れた老齢な大径木も僅かながら残っており,谷や中間斜面は二次林においても生態系管理や生物相保全の面で大きな役割を果たす重要な立地である可能性が示唆された。</p>
著者
阿部 真 阿部 篤志 齋藤 和彦 高嶋 敦史 安部 哲人 高橋 與明 宮本 麻子 小高 信彦
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.130, 2019

<p>沖縄島北部やんばるに固有の着生ラン、オキナワセッコク(<i>Dendrobium okinawense</i> Hatusima et Ida)は、地域を代表する植物種のひとつだが、森林伐採や乱獲により激減したとされる。発表者らはこれまで、着生木(ホスト)について樹種の選好性を明らかにし、また、林分情報の整理から分布における成熟林の重要性を指摘した。本研究は、2015(平27)年から2018年にかけて確認した野生株の情報をさらに集積し、林分履歴や地形との関係を解析した。これによって同種の分布をより正確に把握すると共に、立地条件を明らかにし、希少種の適切な保護・回復のために有効な森林管理を検討する。研究は(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費(4-1503及び4-1804)の支援を受けた。また、環境省の調査資料(やんばる地域希少植物生育状況調査、平27〜28)の提供を受けた。</p>