- 著者
-
矢野 勝也
- 出版者
- Japanese Society for Root Research
- 雑誌
- 根の研究 (ISSN:09192182)
- 巻号頁・発行日
- vol.15, no.1, pp.11-17, 2006-03-24 (Released:2009-12-18)
- 参考文献数
- 20
- 被引用文献数
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陸上植物の根は, むき出しの「根」で存在するよりも, 共生微生物の菌根菌が共生した状態の「菌根」で存在しているのが普通である. 最も普遍的にみられるのがVA菌根であり, この菌根が形成されると宿主植物のリン獲得能が向上することはよく知られている. しかし, 多くの生態系で植物の成長を律速しているのはリンよりもむしろ窒素であるが, VA菌根菌が宿主植物の窒素栄養に関与しているかどうかは議論が続いてきた. 私たちは最近, アンモニアを吸収したVA菌根菌は速やかに宿主にその窒素を提供するのに, 硝酸を吸収した場合には自らが利用するだけで宿主に受け渡さない, という選択的な窒素供給現象を見いだした. 本稿では, VA菌根菌が宿主植物の窒素栄養にどのように関与するのかについて, 私たちの研究を紹介しつつ, 過去の研究の問題点について議論する.