著者
原 大周 小塩 平次郎 佐々木 淳 矢野 貴久 弓取 修二
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
年次大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.21, pp.1100-1103, 2006
参考文献数
3

過去の教訓に学びつつ、プロジェクト担当者がマネジメント上の分岐点で判断する際に参照できる情報を蓄積し、まとめることは極めて重要である。筆者らは、プロジェクトの中間・事後評価又は追跡調査・評価等から得られる情報を活用し、「NEDO研究開発マネジメントガイドライン(以後、「ガイドライン」という。)を作成した。このガイドラインは、プロジェクトの進捗段階に応じて立ち上げ段階から終了段階まで6つのフェーズに分類し、レビューポイントを明確化した。具体的には、「(1)先導調査の提案」として、先導調査の着手の判断を行うフェーズ、「(2)先導調査の実施・予算要求」として、プロジェクト予算要求の是非の判断を行うフェーズ、「(3)プロジェクト基本計画の策定」として、プロジェクトの骨格となる基本計画を策定するフェーズ、「(4)プロジェクトフォーメーションの決定」として、プロジェクトの実施体制・スケジュール等の詳細決定を行うフェーズ、「(5)実施段階」として、日々のマネジメントと各種評価の反映を行うフェーズ、「(6)終了段階」として、終了間近な時点におけるフォローアップを行うフェーズ、を設定した。全6つのフェーズのうち4つを立ち上げ段階が占めるのは、これらが特にプロジェクトの成功・失敗に大きな影響を及ぼすと考えられるためである。本稿ではこの立ち上げ段階にターゲットを絞り、ガイドラインで示した着目すべき指標とNEDOのマネジメントのあり方について検証した。
著者
矢野 貴久
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.142, no.4, pp.172-177, 2013 (Released:2013-10-10)
参考文献数
38
被引用文献数
2 2

薬剤性腎障害は,診断もしくは治療のために使用した医薬品による有害事象であり,実臨床における重要な課題の一つとされている.しかしながら多くの薬剤では腎障害の発現機序が不明であり,有効な対策法の確立には未だに至っていない.そこで著者らは,培養腎細胞や実験動物を用いて薬剤性腎障害評価モデルを作製し,各薬剤により生じる腎障害の細胞内分子機構の解明を行った.その結果,造影剤や抗MRSA薬バンコマイシンは腎尿細管細胞にアポトーシスを引き起こし,その発現はいずれもミトコンドリア機能障害に起因したカスパーゼ9およびカスパーゼ3活性化に基づくものであったが,その一方で詳細な細胞死分子機構は異なっていることが明らかとなった.造影剤は,スフィンゴ脂質であるセラミドのde novo合成を活性化し,Aktリン酸化ならびにCREBリン酸化の抑制に基づくBax/Bcl-2の発現変化によってミトコンドリア機能障害やアポトーシスを惹起するが,バンコマイシンは,ミトコンドリア呼吸鎖複合体Iの活性化を抑制し,スーパーオキシドを産生することでアポトーシスシグナルを誘導することを見出だした.一方,抗真菌薬アムホテリシンBは腎細胞にミトコンドリア機能障害に基づくネクローシスを引き起こしたが,その発現分子機構は主作用に類似したものであり,アムホテリシンBが腎細胞膜のコレステロールに結合して小孔を形成し,細胞内へのNa+流入を惹起すると共に小胞体やミトコンドリア由来のCa2+上昇を引き起こして細胞死に至ることが明らかになった.さらに,ミトコンドリア分子機構に基づく腎保護薬の研究を進めた結果,プロスタサイクリン誘導体ベラプロストが腎細胞内のcAMPレベルを上昇させ,造影剤腎障害に対して顕著な保護効果を示すことを見出だした.本研究により明らかとなった知見が,薬剤性腎障害の対策法の確立において一助となることを期待する.