著者
石丸 知之 植村 俊亮
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.349-357, 1995-03-25
被引用文献数
9

本論文では,オブジェクト指向データモデルを拡張した「多態オブジェクト」データモデルを提案する.多態オブジェクトモデルの目的は,マルチメディアデータを自然にデータベース内に表現することである.マルチメディアデータの一つの特徴は,実世界の実体の多用な表現である.多態オブジェクトモデルでは,実体をオブジェクトとして理解し,そのオブジェクトに複数の完結した表現を与えることのできるモデルを提案する.このようなオブジェクトを多態オブジェクトと呼ぶ.多態オブジェクトモデルでは,一つのオブジェクトが複数のインスタンスを表現としてもち得る.クラスはインスタンスの形式を定義する.同じオブジェクトの複数のインスタンスはクラス名で識別する.複数のインスタンスの属性が同一のスーパクラスで定義されているときには,その属性は同一の意味をもつとみなし,インスタンスの間で値を共有し一貫性を達成する.多態オブジェクトの実現例として,現在試作中のデータベース管理システム「沙羅」のアーキテクチャについて述べる.