著者
門田 暁人 高田 義広 鳥居 宏次
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.80, no.7, pp.644-652, 1997-07-25
被引用文献数
34

ソフトウェアの保守, 再利用などのためには, 解析や理解の容易なプログラムを作成しておくことが重要である. ところが, 完成したプログラムを多数のユーザに配布する場合には, システムの安全性の確保や知的財産権の保護などのために, 内部の解析が困難なプログラムの作成が要求される場合がある. そのような場合には, 解析が容易なように作成したプログラムを, 解析が困難になるように変換する方式が有用であると考えられる. このようなプログラムの等価変換を, プログラムの難読化と呼ぶ. 本論文では, ループを含むプログラムを自動的に難読化する2通りの方法を提案し, それぞれの方法の有効性を評価するための実験について報告する. 実験の結果, 極めて小規模なプログラムに対しても, 提案する方法が有効であることがわかった.
著者
高田 義広 鳥居 宏次
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.77, no.9, pp.646-655, 1994-09-25
被引用文献数
6

ソフトウェア開発管理の観点から,プログラマの能力を客観的,正確,かつ,容易に測定する方法が要求されている.この問題に対して,本論文ではキーストロークからプログラマのデバッグ能力を測定する方法を提案する.ここで言うデバッグ能力とは,ソフトウェア故障を発見してからその原因を修正するまでの時間的効率である.提案する方法では,まず,キーストロークを監視して,各時刻のプログラマの活動を分類する.次に,得られた活動系列にプログラマモデルを適合させることによって,プログラマの特徴を表すパラメータを抽出する.このプログラマは,活動系列をマルコフ過程とみなして定義した.最後に,それらパラメータからデバッグ能力の評価値を算出する.主な評価値は,1個の欠陥の修正に要する時間の推定値Dである.適用実験の結果から,本方法が実際のソフトウェア開発において有効に働くことがわかった.特に,生産性に関する尺度(共通な仕様に対するプログラムの作成時間)とDとの間に強い相関が見出せた.
著者
大澤 幸生 ベンソン ネルス E 谷内田 正彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.391-400, 1999-02-25
被引用文献数
108

文書検索において, 検索対象となる各文書からキーワードを抽出しておくことは, 検索時間の短縮と検索結果の質の向上の両面において重要である. 本論文では, 文書の主張の内容を表すキーワードの抽出を目指す. そのようなキーワードは文書の要約をしたり, ユーザの検索語に近い主張をもつ文書を検索したりするのに役立つであろう. このような目的にとっては, ユーザの興味に関連する既存分野を代表する文献を選ぶ場合とは違い, 検索対象文書の著者独特の考えを把握する新たな技術が必要となる. そこで本論文では, 文書は著者独自の考えを主張するために書かれており, その考えを表すために内容が構成されるという仮定に基づき, 共起グラフの分割・統合操作によってキーワードを抽出する新しい手法KeyGraphを提案し評価する.
著者
羽生 貴弘 樋口 龍雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.54-62, 1993-02-25

連想メモリは,大規模データベースシステム等のハードウェアエンジンとして極めて有用であり,近年の超微細加工技術の急速な発展を背景に,いっそうの高性能化が望まれている.しかしながら,通常の連想メモリにおける各種検索演算は,アレー構造に起因した逐次的処理に基づいて行われているため,データ語長に依存して処理速度が劣化するという問題点があった.本論文では,多進木網に基づいて検索演算の超高速化を図ると共に,それを多値電流モード回路で直接実現することにより,高性能な連想メモリを構成する方法を提案する.多進木網に基づく検索演算とは,各けたごとに検索演算が行われた結果に対し,それぞれ2進数のべき乗で重み付けをして線形加算することにより,大小比較演算を並列処理する方法である.多値電流モード回路の積極的活用により,本検索演算アルゴリズムで重要となる線形加算が結線のみで行えるため,全体として高密度な回路構成が可能となる.実際,本提案の構成方法に基づく4値連想モメリは,同等機能のものを通常の2値CMOS演算回路で実現した場合と比較し,2値ハードウェアと同程度の高速性を有しながら,2値実現の1/4程度のハードウェア量と動的消費電力で実現できることを明らかにしている.
著者
西田 誠幸 辻野 嘉宏 都倉 信樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.936-945, 1996-11-25

Bird-Meertens Formalism (以下BMF)は関数型プログラムを記述する手法の一つで,これによって問題の仕様記述から具体的な手続きの記述を導出することができる.BMFで記述されるプログラムの有用性を明確にするため,また導出の方針を与える一手段として,導出されるプログラムのコストを評価する手法を提案する.この手法は,Moggiの提案したモナドを用いた計算の表現法を応用したもので,プログラムのセマンティクス,コストの種類,プログラムを実行するアーキテクチャによって決定されるコストを表現できる.また,関数型言語Haskellによるコスト評価法の実現を示す.
著者
谷口 秀夫 伊藤 健一 牛島 和夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.492-499, 1995-05-25
被引用文献数
24

計算機を24時間無停止で継続動作させるため,サービスを実現しているプロセスの走行中に,そのプログラムの一部分を入れ替える方式を提案する.具体的には,プログラムの部分入替え可能な条件として,プログラムへの条件とプロセスへの条件を示す.プログラムへの条件としてはインタフェース/処理内容/外部変数アドレスについてであり,プロセスへの条件としてはプロセスの実行状態に関するものである.また,入替え可能な状態の判定と検出の方法として,プログラムの実行状態を把握するフラグの導入を提案する.更に,そのフラグを利用してプロセスの動作を制御し,プログラムの部分を入れ替える方法を述べる.実現時の課題として,オペレーティングシステムが提供する機能と内部の処理方式を示す.試作と評価により,入替えの処理がサービスに与える影響は小さく,入替えの処理はプログラムを入れ替えられるプロセスの実行環境で行う方法が良いことを示す.本方式により,計算機を動かした状態で,ソフトウェアの保守運用や機能向上が可能になる.
著者
高橋 直也
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.76, no.7, pp.339-346, 1993-07-25

ジュークボックス型光ディスク装置を使用するクライアントサーバ型の光ディスクファイルシステムの性能向上策として,画像データ先読み方式を提案した.ジュークボックスでの光ディスクの入れ替えがシステム性能のあい路になっていることから,ワークステーションで表示,あるいは印刷する予定の画像データをファイルサーバからある程度まとめて先読みすることにより,システムの性能を向上するもので,実用規模のシステムに適用して,その効果を確認した.なお,一つのワークステーションに対応する光ディスク入替え待ち時間を,他のワークステーションに対するサービスに活用することにより,更に性能の向上が図れることも実測により確認した.
著者
石川 英彦 有澤 博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.291-299, 1997-03-25
参考文献数
10
被引用文献数
2

ほとんどのデータモデルは, 多量の情報を扱う必要性から, 特定の意味をもつ情報の集まりを一つのものとして扱う方法を提供しているが, この情報と集まりとの関係として, 数学における要素と集合との関係が最もよく用いられている. このとき, 「要素」がどのように「集合」に所属できるかという情報はデータの秩序を保つために重要であるにもかかわらず, それを十分に表現できる方法は数少ない. また, データベーススキーマを設計する立場からは, 表現力が高いだけでは不十分で, 直観的に設計を行えることが必要である. 本論文では, 要素が所属の際に守るべき集合の間の関係を直観的に表現できる表記法を提案し, その表記法が十分な表現力を有することを示す. また, 表記の集合が与えられたときに, それが矛盾を含むことを検出したり, 要素の所属を制限するための方法について考察し, 本手法がデータベーススキーマの設計手法として妥当であることを示す.
著者
籠谷 裕人 南谷 崇
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.77, no.8, pp.548-556, 1994-08-25
被引用文献数
12

従来,認識されてきた非同期式回路の有用性が,近年の論理素子の高速化に伴い再び注目を集めている.本論文では,論理素子遅延や配線遅延の上限が予測できないという厳しい遅延仮定のもとに,非同期式回路を合成する基本的な手法を提案する.本手法は,レジスタ間の転送や演算といった基本的な操作の間に成り立つべき依存関係を仕様とし,それを信号遷移の因果関係に直接写像することによって非同期式回路を実現する.具体的にはまず基本操作間の依存関係からなるグラフを仕様として与える.この依存性グラフから正しく回路が合成できるための条件としてsafenessなどを定義する.次にこれをもとに,その機能ノードを対応した回路素片に置換し,これらを接続することで制御回路を合成する.この制御回路はハンドシェークによって2相方式でデータパス部の制御を行う.本手法は,並列性を仕様中に容易に記述でき,論理合成のコストが低いという特徴がある.
著者
川村 恭也 松原 隆 古賀 義亮
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.81, no.10, pp.1141-1148, 1998-10-25

本論文では, 内部の誤り検出および誤りを訂正するフラッシュ型A-D変換器の構成法に関し, 従来提案されている方法についてまとめた結果を紹介し, 誤りの補正・訂正を行うと共に誤りの検出結果を単一誤りと多重誤りに区別して外部に表示するA-D変換器の構成法を提案する.従来の方法では, 回路内部の誤りの処理についての詳細情報が外部に表示されないため, A-D変換器がどの程度誤りの処理を行っているか判定できないという問題がある.提案する構成法では, A-D変換における単一誤り, 多重誤りの情報を外部に表示することができるので, A-D変換器の状態および出力データの信ぴょう性を判定することができる.
著者
湯淺 太一 貴島 寿郎 小西 浩
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.200-209, 1995-02-25
被引用文献数
10

NCXは,超並列計算実用化のための重要な計算モデルの一つであるデータ並列に基づくプログラミングのために設計された拡張C言語である.C言語からの移行が容易であること,効率の良い処理系が低コストで実現できこと,統一のとれた言語であること,などを目指して設計された.フルセットのC言語を実行する能力をもつ仮想プロセッサ群を基本とし,プロセッサ間通信などのデータ並列計算機能を,ベースとなるC言語の設計方針にできるだけ従って設計されている.さまざまなアーキテクチャ上で使用されることを前提としており,実際にいくつかの異なるアーキテクチャをターゲットとした処理系の開発が現在進められている.本論文では,NCXの主要な拡張機能を,プログラム例と共に概説し,仮想プロセッサという単純明解な概念を基本としながら,データ並列計算に十分な機能をNCXが提供できることを示した.
著者
山田 茂 有本 孝 尾崎 俊治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.19-23, 1993-01-25
被引用文献数
2

本論文では,ソフトウェアのテスト工程および運用段階におけるソフトウェアエラー発見事象は異なるものと仮定した上で,運用段階における運用労力および瞬間エラー発見率に基づいてソフトウェア信頼度成長モデルを記述し,ソフトウェアアベイラビリティを考察する.
著者
秦 淑彦 塚田 晶宇 尾崎 稔 坊 覚
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.234-246, 1999-01-25
被引用文献数
11

本論文では, 分散型履歴映像サーバにおける効果的な検索・再生方式とその実装について述べる. 分散型履歴映像サーバとは, 映像監視やスポーツ中継等において, 複数のカメラで撮影された履歴映像をディジタル化してカメラごとに分散蓄積し, 操作者の要求やイベントを引き金として映像の読出し・伝送・表示を行うものである. まず, カメラ, 撮影時刻, イベント等のメタデータを自動生成して蓄積・管理し, このメタデータを用いて映像を検索する方式を提案する. これにより, 履歴映像の本質であるいつ, どこで, なぜ撮影されたかという視点からの検索が可能となる. 次に検索した映像を効果的に提示する新たな再生方式を提案する. 一つは映像のディジタル化による方式であり, 緊急時でも見落とさない, 詳細な状況分析ができる等の効果を発揮する. もう一つは建物や設備の3次元モデルを映像と連動させる方式であり, 多数のカメラが設置された場合どこを撮影しているのかわからない, 霧や煙等でよく見えないといった問題を解決する. 更に, これら再生方式を実現するための映像配信や撮影範囲データの蓄積・伝送方式を考案する. そして, 提案方式をプロトタイプにより評価する.
著者
岡本 龍明 太田 和夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.315-323, 1993-06-25
被引用文献数
12

本論文では,実際の現金や従来提案されている電子現金方式における問題点を解決する初めての理想的電子現金方式を提案する.ここで,理想的という意味は,利用者の匿名性(プライバシー)を保証した上で,不正使用を検出でき,更に支払い時の処理がオフラインでできると共に,1回発行された電子現金を額面の金額になるまで何回でも使うことができるといった特長をもつものである.本方式は,ICカード上において効率的な実現が可能である.例えば,額面金額に関係なく,1個の電子現金のデータサイズは,たかだか100バイトであり,Rabin暗号LSIの存在を仮定すれば,電子現金支払い時の処理時間は数秒程度である.本方式の安全性は,素因数分解の困難さに依存する.
著者
富田 悦次 今松 憲一 木幡 康弘 若月 光夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.1-8, 1996-01-25
被引用文献数
13

本論文では, 無向グラフ中の最大クリークを抽出するための単純で効率の良い分枝限定アルゴリズムを提唱する. ここで, いかにして分枝の制限を強力に働かせて解の探索領域を小さくするかが, アルゴリズムの効率化の重要な指標となる. しかし, その分校制限実現のために要する処理時間をできるだけ小さく抑える必要がある. そこで本論文では, その両者の兼合いを適切に達成した, 非常に単純で巧妙な逐次近似彩色-整列法を考案し, それにより探索の各段階において見出し得る最大クリークの上界を得て分技制限を効果的に実現し, 総実行時間も小さく抑えることに成功した. 本アルゴリズムは, 他のいくつかの代表的アルゴリズムと直接実験的比較, あるいは論文上の数値比較により, それらに対して600節点以内の広い範囲の多くのランダムグラフおよび1000節点のいくつかのランダムグラフについて, より高速であることを確認した.
著者
吉田 成志 吉井 健一 松本 英昭 大貫 淳 曽禰 元隆
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.11-20, 1997-01-25
被引用文献数
1

マルチDSPシステムは, 高速性と汎用性を備えた計算機として国際的に注目を浴びているが, マルチDSPシステムに演算処理を行わせる上での問題点として, DSP間のデータ通信によるシステム稼動率の低下が挙げられる. 稼動率の低下を防ぐためには, ハードウェア設計段階においてデータ通信時間を考慮したタスクスケジューリングをさまざまな相互結合網に対して行い, 演算処理に最適な相互結合網および並列アルゴリズムを十分に検討しなければならない. そこでデータ通信時間をあらかじめ正確に把握するためのシミュレーション方法が不可欠となる. 本論文では, マルチDSPシステムに演算処理を行わせた場合に生じるデータ通信の正確な時間を, アセンブラプログラムのインストラクションサイクル数から作成した数式を用いて求める方法について示す. 本手法を用いることにより, 使用するDSPの種類, プログラマ, DSP間の接続方式およびハードウェアシステムの仮装・実装にかかわらず正確な通信時間を理論的に求められる. 演算処理の例として行列積算と連立1次方程式の求解を取り上げた結果, 最適なトポロジーを選択することが数式によりシミュレーション上で容易に可能となることを示した.
著者
高松 雄三 塩坂 知子 山田 輝彦 山崎 浩二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.81, no.6, pp.872-879, 1998-06-25
被引用文献数
12

本論文では, CMOS回路の短絡故障に対する一つのモデルを提案し, そのテスト生成法を述べる.CMOS回路における短絡故障の振舞いは故障点の回路構造と信号値に依存するので, 短絡している信号線の信号の強さから, あるいはアナログシミュレーションで計算した値からテストを生成するという方法が提案されている.しかしながら, これらの方法は計算量が多く効率が良くない.CMOS回路における短絡故障の多くは論理値で表されることが知られている.そこで, 本論文では「正常回路で互いに異なる論理値を有する信号線間に短絡故障が生じたとき, いずれか一方の故障信号線が正常値とは異なる論理値となる」という短絡故障のモデル(以下, Uモデルと呼ぶ)を提案する.次にUモデルに対するテスト(以下, Uテストと言う)を定義し, Uテストの一生成法を述べる.最後に, 提案する生成法をベンチマーク回路に適用してUテストの生成実験を行い, その有効性を考察する.
著者
古宮 誠一 澤部 直太 櫨山 淳雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.79, no.9, pp.544-557, 1996-09-25
被引用文献数
19

大規模なソフトウェアの開発は,労働力を結集するためにプロジェクトを組んで行われるのが一般的である.しかも,どのようなライフサイクルモデルを採用しようとも,ソフトウェア開発プロジェクトには開発計画というものが必ず存在する.これは動員した労働力を有効に機能させるためである.従って,プロジェクトを成功へと導くためには,この計画をもとに管理目標を設定し,その達成度をフォローするという方法が効果的である.しかし,これはそれほど容易なことではない.なぜなら,ソフトウェア開発においては,作業量の見積もりやプロジェクトのリスクの予測が困難だからであり,このため,ソフトウェア開発計画の立案やソフトウェア開発における各作業の実質的な進ちょく把握が困難だからである.このため,プロジェクト管理者の負荷を軽減すると共に,高度なプロジェクト管理ができるように,ソフトウェア開発プロジェクトのプロジェクト管理を強力に支援するシステムを開発することが必要不可欠である.本論文では,プロジェクト管理のためのソフトウェアプロセスのメタモデルを提案すると共に,このメタモデルをベースにしたソフトウェアプロジエクト管理システムの枠組みが「ソフトウェア開発計画の立案」の支援に有効であることを,システムの実行例を用いて示している.
著者
川原 洋人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.78, no.7, pp.573-587, 1995-07-25
被引用文献数
2

コンピュータネットワークのルーティング方式の研究においては適応型ルーティングに比べ,固定ルーティング方式の研究は少ないが,実際のネットワークではその方法の簡易性から,固定ルーティングを用いているものが少なくない.固定ルーティングは,ノードやリンクの障害により,ルートが不通となったとき,他のルートに切り換える方法に問題がある.すなわち,多くの場合,固定ルーティングにおいては,パケットを送出するリンク(出方路と呼ぶ)が障害であることを検出したノードが,あらかじめ定められた優先順に従って,予備の出方路に切り換えることにより,ルートの切換えを行うが,ピンポン現象や,ループ現象などの誤ルーティングを起こすことがあり,完全ではない.本論文では,この問題を解決するために,ノード同士が情報を交換し,そのような現象の起こらないルート切換えを実現する分散アルゴリズムを与える.次に,障害が回復したときに,元のルートへ復元するアルゴリズムを与える.最後に,それらのアルゴリズムに基づく一連の操作が,複数同時に進行しても,誤ルーティングが起こらないことの証明を与える.
著者
八木 哲也 亀田 成司 飯塚 邦彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.104-113, 1998-02-25
被引用文献数
32

網膜は, 生体の実時間画像情報処理に欠くことのできない, 優れた視覚知能センサである.網膜の超並列画像処理機能を, アナログCMOS集積回路(ビジョンチップ)として実現した.チップは1次元ラプラシアン-ガウシアン型の受容野を備え, 網膜の順応機構に習いその幅が可変となっている.チップの光センサ部には, 電荷蓄積型のものを用い, 蓄積時間を変えることで光応答感度が制御できるようにした.チップには, 素子の特性のばらつきによるノイズを補償する回路が組み込まれており, 実験の結果自然照明下での実用に十分な出力精度が得られることが確認できた.本チップは, 信号と雑音の空間周波数帯域に応じて効率的に画像を抽出する場合に, 前処理プロセッサとして応用できる.