著者
石井 正典 嘉村 多聞 室岡 良伸
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.98-104, 1998-05-16
被引用文献数
1

本研究では, 夏期(7〜9月)の河川流量と降水量, 平均気温および森林蓄積の関わりを調べた。1.降水量の増加, 気温の降下および森林蓄積の減少は河川流量の増加に影響することがわかった。2.平均流量に対する3変数の寄与は, 降水量, 気温, 森林蓄積の順であるが, 降水量の寄与は大きく, 気温と森林蓄積は降水量の1〜2割と小さい。3.河川流量が大きいとき(豊水時流量)は降水量の寄与が大きい。4.河川流量が小さいとき(渇水時流量)は降水量に加えて, 気温および森林蓄積の寄与も大きくなる。5.降水量の減少, 高温および森林蓄積の増大は水枯れの原因となるから, 更新に伴う森林の伐採は, 少なくとも, 研究対象流域では水枯れ防止に役立つものと推察される。
著者
岸原 信義 石井 正典
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.373-381, 1982-10-25
被引用文献数
2

本論は日本の山地流域からの流出に関する総合的な研究の第一歩として, 流出地帯区分を主体に流出の地域性に関する検討を行ったものである。解析は全国319流域の月流出量の資料を用いて行われ, その結果夏期流出比率の多少によって2大区分がなされた。表日本型(非積雪型)と裏日本型(積雪型)の流域群ともいえる。ついで時期別(厳寒期, 融雪期, 梅雨期, 台風期, 初冬期)の流出比率と年流出量の多少とによって, 10の流出地帯区が分類された。各流出地帯区の流出特性は, 夏期流出区では流出のピークが梅雨期か台風期かによって, 冬期流出区にあっては融雪流出の開始, 終了と融雪流出のピークの月によって特徴づけられる。日本の山地流域からの平均年流出量は約2,110mmで, これに蒸発散量を加えれば, 山地流域という点を考慮に入れても, 降水量の過少推定が指摘される。