著者
石井 洋一 佐々木 一郎 碇屋 隆雄 佐分利 正彦 吉川 貞雄
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1985, no.3, pp.465-472, 1985-03-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
65
被引用文献数
4

プロキラルあるいはメソ形構造の 1,4-または 1,5-ジオールからアルケンへの水素移行反応において,Ru2Cl4((-)-DIOP)3 が有効な触媒となり光学活性の γ-または δ-ラクトンを光学収率 ~16.9% で与えることを見いだした。この反応は均一系錯体触媒の反応としては例の少ないエナンチオ場区男仮応に分類される。不斉誘導の方向はジオールの置換基の位置により決定され,γ-置換ジオールは R 体のラクトンを過剰に生成するのに対し β,β'-二置換ジオールはカルボニル基の α-位が S の絶対配置をもつラクトンを優位に与える。またジオールのエナンチオトピックなヒドロキシメチル基の一方を選択的に脱水素して光学活性なヘミアセタールを与える第一の不斉誘導と,ヘミアセタールの異性体問での脱水素速度の違いにより動力学的分割の起こる第二の不斉誘導の両方がこの反応に関与していることが判明した。