著者
石井 紀子
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.167-191, 2005-03

一八八〇年代から一九〇〇年代にかけて北中国ミッションと日本ミッションに赴任した医師の資格を持つ一人のアメリカ女性宣教師の本国宛の書簡を手がかりに、伝道地の主体性、宣教師の専門性、ジェンダーと伝道活動の相互作用を検討した。その結果、伝道活動を決定する要因として伝道地の事情が宣教師個人の専門性より優先することが明らかになった。本事例でホルブルックは中国で専門を生かして診療所開設の上、「医療バイブル・ウーマン」を養成できたのに対し、日本では女子高等教育の中の理科教育、家庭衛生教育の分野で自身の専門性を生かした。女性宣教師はジェンダーの分離を根拠に女性のための伝道を正当化していた上、海外伝道の目的として伝道と女性の地位の向上を矛盾したものとはとらえていなかったので、ホルブルックにとって二つの伝道活動は一貫していたといえる。
著者
増井 志津代 大塚 寿郎 高柳 俊一 飯野 友幸 金山 勉 石井 紀子
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、17世紀植民地時代から21世紀に至るまでのアメリカ史におけるキリスト教の果たした歴史的、社会的、文化的役割を特に土着化(Contextuahzation;Americanization)の視点から通史的かつトピカルに分析研究することを目指した。従来の神学的キリスト教研究や教派研究というよりも、キリスト教の果たした役割を宗教史の狭い領域的研究の枠組みから解放し、より広い歴史的、地理的、社会的状況におけるダイナミズムの中で検証し、アメリカ的キリスト教の特性、さらにアメリカ化の過程を詳細に検討することとした。さらに、アメリカ人宣教師による日本における宣教活動を追うことにより、アメリカニズムとキリスト教との関係にも注目した。タイムスパンを長期に設定することで、通事的な研究を目指し、日米から多様な研究者を集めた。初年度には、初期アメリカ研究者David D.Hall教授を招聘し、植民地時代ピューリタニズムについての研究会を開催した。平成18年度は、Richard W.Fox教授を迎え、アメリカ文化とキリスト教についての研究会を開いた。両教授とも、専門研究者との交流だけでなく、ひろく一般、学生に向けた講演も行ない、本領域における学的関心を広く喚起できた。Mark A.Noll教授は来日は果たせなかったが、福音主義とアメリカ政治の関係についての論文を最終報告書に寄稿した。研究代表者、分担者共に、日本とアメリカを往復し、国内外での研究交流をはかると共に、リサーチを勢力的に行ない、学会発表、論文出版により成果を発表した。報告書は今後、研究書としてまとめ、出版を予定している。
著者
石井 紀子
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要
巻号頁・発行日
vol.30, pp.167-191, 2005-03-25

一八八〇年代から一九〇〇年代にかけて北中国ミッションと日本ミッションに赴任した医師の資格を持つ一人のアメリカ女性宣教師の本国宛の書簡を手がかりに、伝道地の主体性、宣教師の専門性、ジェンダーと伝道活動の相互作用を検討した。その結果、伝道活動を決定する要因として伝道地の事情が宣教師個人の専門性より優先することが明らかになった。本事例でホルブルックは中国で専門を生かして診療所開設の上、「医療バイブル・ウーマン」を養成できたのに対し、日本では女子高等教育の中の理科教育、家庭衛生教育の分野で自身の専門性を生かした。女性宣教師はジェンダーの分離を根拠に女性のための伝道を正当化していた上、海外伝道の目的として伝道と女性の地位の向上を矛盾したものとはとらえていなかったので、ホルブルックにとって二つの伝道活動は一貫していたといえる。