著者
石原 香絵
出版者
学習院大学大学院人文科学研究科アーカイブズ学専攻
雑誌
GCAS report = 学習院大学大学院人文科学研究科アーカイブズ学専攻研究年報 (ISSN:21868778)
巻号頁・発行日
no.3, pp.4-19, 2014

本論は、日本における映画保存史の中でも、とくにGHQによる占領期に着目し、この時期に法定納入の対象から映画が除外された事実とその背景を明らかにするものである。池田義信(日本映画製作者連盟初代事務局長)は、戦中・戦後の混乱期の資料散逸を悔い、映画フィルムの収集保存先として国立国会図書館(1948年開館)に期待をかけた。国立国会図書館法は文化保存の観点から法定納入を定め、当初は映画もその対象としたが、当時のフィルムの燃えやすく危険な性質や、小売価格の半額程度を支払う「代償金」の負担が重いこと等から、1949年の法改正時にその納入を免除した。その後、小規模ながらフィルム・ライブラリーを有していた東京国立近代美術館(1952年開館)へと映画の収集保存先としての期待が移り、民間による〈映画保存運動〉が1960年に始動するが、ここではこの運動が始まるまでの状況を扱うとともに、映画の法定納入の重要性を改めて検討する。
著者
石原 香絵
雑誌
人文 (ISSN:18817920)
巻号頁・発行日
no.17, pp.259-281, 2019-03

長年にわたってアーカイブズ振興に取り組んできたユネスコは、アーカイブズの一部を占める視聴覚資料を確実に収集・保存し、アクセスを提供する活動の基盤となる知識を体系化すべく、オーストラリアを代表する視聴覚アーキビストのレイ・エドモンドソンに基礎文献の執筆を委託した。この基礎文献は初版が出版された1998 年以来読み継がれ、最新の『視聴覚アーカイブ活動──その哲学と原則 第3 版』が2016 年に出版されたところである。視聴覚アーキビスト養成やネットワーク強化の重要性を説き、専門用語を定義し、デジタル格差・アドボカシー・環境インパクトといった新しいトピックを取り入れつつも、視聴覚アーカイブ活動の揺るぎない根幹を成す哲学と原則を講じる同文献は、日本におけるこの領域の立ち遅れを改善するための示唆に満ちている。本調査の成果として2017 年に完成した邦訳の公表をきっかけに、視聴覚資料の救済に向けた議論の深まりが期待される。|UNESCO is a long-term supporter of archival studies. In 1998, Ray Edmondson, a leading audiovisual archivist in Australia, was entrusted with the task of assembling a basic primer on audiovisual archiving to ensure the collection, preservation, and provision of access to audiovisual materials. Since then, his Audiovisual Archiving: Philosophy and principles has become a key text in the field with its lates(t 3rd)edition published in 2016. The book defines basic terminology and emphasizes the importance of education and training of audiovisual archivists, as well as networking within the profession, and although it introduces new topics such as the digital divide, advocacy, or environmental impact, its core philosophy and principles remain consistent. The Japanese version published in 2018 is expected to stimulate discussion and raise awareness of this area of study in order to save audiovisual materials, in which Japan lags behind other countries.