著者
小松 悦子 福田 弥生 鵜原 日登美 遠田 栄一 石坂 裕子 山門 實
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.641-645, 2013 (Released:2014-03-28)
参考文献数
13

目的:三井記念病院総合健診センター(以下,当センター)における寄生虫陽性率の経年的変化を検討し,今後の人間ドックにおける寄生虫検査の継続意義について考察した.方法:対象は1994年8月から2012年3月までに当センターを受診した1泊人間ドック受診者4,673名で,虫卵の検出法はホルマリン・エーテル沈殿集卵法で行った.この他,当センターから提出された虫体の同定も行った.結果:集卵法総依頼件数4,673件中,寄生虫陽性件数は219件,陽性率は4.7%であった.年別陽性率は,1994年2.6%から1999年21.1%と経年的に増加傾向であったが,2000年には5.2%と減少した.2000年以降の年間陽性率は平均3.7%と横ばい傾向であった.集卵法で検出された寄生虫卵(重複患者を除く)の内訳は,横川吸虫が150件,ランブル鞭毛虫12件,大腸アメーバ2件,肝吸虫1件,鞭虫1件,サイクロスポーラ1件であった.虫体同定依頼件数8件の結果は,アニサキス7件,回虫1件であった.結論:本研究の成績,すなわち,当センターでも特に症状のない人から2005年以降2~3%の検出率で寄生虫が検出されていることや,5類感染症のランブル鞭毛虫が検出されている事実は,人間ドックが健康チェックのために行われるのであれば,寄生虫感染症を調べることは重要であり,受診者の高齢化も考慮すると日和見感染防止のためにも,今後も続ける意義があるものと考えられた.
著者
山門 實 新原 温子 山本 浩史 山本 麻以 谷 瑞希 戸田 晶子 石坂 裕子
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.673-677, 2013 (Released:2014-03-28)
参考文献数
19
被引用文献数
2

目的:がん患者と健常人の血漿中アミノ酸濃度(PFAA)のバランスの違いを「アミノインデックス技術」を用いて統計解析し,がん罹患の確率を予測する新規がん検診として,アミノインデックス®がんリスクスクリーニング(AICS)が開発され,現在,肺,胃,大腸,前立腺,乳腺,子宮・卵巣の6種のがんに対するスクリーニング検査が実用開始された.本研究では,AICSの精密検査対象となるランクCの割合とAICS値の分布の妥当性について,AICS導出時の理論値と人間ドック受診者での検査結果を比較検討した.方法:三井記念病院の人間ドック受診者799名(男性494名,女性305名,平均年齢59±11歳)を対象とし,各がん種に対するランクCの割合とAICS値について,AICS導出時の理論値と比較した.結果:人間ドック受診者のランクC割合は,AICS(大腸),AICS(乳腺),AICS(子宮・卵巣)では,6.8%,3.0%,3.8%であり,理論値の5%と有意差がみられず,AICS値の分布も理論値と同等であった.AICS(肺),AICS(胃),AICS(前立腺)のランクC割合は,10.1%,10.8%,11.3%と理論値より有意に高く,AICS値分布も理論値と有意差がみられた.結論:ランクC割合およびAICS値分布が理論値とほぼ同等であったことは,AICSが新規がん検診として応用可能であることを推察させた.
著者
田中 孝幸 安東 敏彦 高橋 三雄 石坂 裕子 谷 瑞希 山門 實
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.24-28, 2007-06-29 (Released:2012-08-20)
参考文献数
21

目的:環境の変化や人間関係,過労などに心身の適応が困難な場合,精神的身体的緊張を引き起こし様々なストレス疾患が表れる.一方で,アミノ酸を摂取することによってストレスに対する抵抗性が高まることを示す研究結果が報告されており,ストレス下において血中アミノ酸パターンが変化していると予測された.今回は,アミノ酸を測定することにより,ストレス疾患の早期発見・治療につながる可能性が得られたので報告する。方法:ストレス負荷の定量的評価として当センターで用いているストレス関連問診票より職業性ストレス簡易調査票に対応する問診項目を抽出しスコア化した.また,当センターの問診票からDSM-IV(Diagnostic and Statistical Manualof Mental Disorder,4th ed)診断基準を準用し,大うつ病を判定した.上記ストレス問診結果と血中アミノ酸の解析を行った.成績:「ストレスなし」群をコントロールとして,他の群と各アミノ酸の血中濃度を比較したところ,「抑うつ」群および「大うつ病」で有意にリジンが低下していた.また,うつ病患者においてトリプトファンの低下が報告されているが,今回の結果でも大うつ病にてトリプトファンの有意な低下がみられた.結論:人間ドックにおけるアミノ酸測定は,ストレス群のようなうつ病予備軍の発見・治療において有用な情報を提供できる可能性があると言える.
著者
山門 實 山本 浩史 菊池 信矢 新美 佑有 谷 瑞希 戸田 晶子 山本 麻以 石坂 裕子
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.681-688, 2017 (Released:2017-06-27)
参考文献数
23

目的:がん患者と健常人の血漿中アミノ酸濃度の違いを「アミノインデックス技術」を用いて統計解析し,がん罹患の確率を評価し,精密検査対象者を抽出するがん検診法アミノインデックス®がんリスクスクリーニング(AminoIndexTM Cancer Screening:AICS®,以下.AICS)は,7種のがんに対する検査として実用化されている.既報では,AICS受診者799例中の精密検査対象となるランクCの割合,精密検査結果等を報告したが,本報では,より大規模な受診者5,172例のランク分布,ランクC判定者の精密検査結果,各種AICSの陽性的中率を報告する.方法:三井記念病院における2011年9月~2015年12月のAICS受診者5,172例(男性2,757例,女性2,415例)のランク分布,ランクC判定者の精密検査結果を検討し陽性的中率を算出した.結果:ランクC判定者の精密検査により,肺がん1例,胃がん3例,大腸がん3例,前立腺がん6例,乳がん4例が発見された.各種AICSの陽性的中率は,AICS(肺):0.37%,AICS(胃):0.75%,AICS(大腸):1.19%,AICS(前立腺):1.80%,AICS(乳腺):3.57%,AICS(子宮・卵巣):0%であった.AICSによるがんの発見率は0.33%と,2015年度人間ドック全国集計成績報告の0.26%より高頻度であった.結論:これらの成績は,AICS®の新規がん検診としての有用性を推察させた.