著者
力丸 宗弘 高橋 大希 小松 恵 石塚 条次 清原 玲子 山口 進 高橋 秀彰
出版者
秋田県農林水産技術センター畜産試験場
巻号頁・発行日
no.25, pp.75-83, 2011 (Released:2013-10-08)

比内地鶏は一般的なブロイラーより官能評価が良好である。本研究では,鶏肉のおいしさに影響する要因を特定するため,比内地鶏とブロイラーのもも肉における一般成分,遊離アミノ酸,イノシン酸,脂肪酸組成の分析および官能評価を行った。比内地鶏とブロイラーを同じ日にふ化し,(1)8週齢ブロイラー区,(2)22週齢ブロイラー区,(3)22週齢比内地鶏区の3区を設定した。比内地鶏とブロイラーを同じ環境下で飼育し,8および22週間同じ飼料を給与した。8週齢ブロイラー区は22週齢比内地鶏区より遊離アミノ酸とグルタミン酸含量が有意に高かった。22週齢比内地鶏区は8週齢ブロイラー区よりインシン酸含量が有意に高かったが,22週齢比内地鶏区と22週齢ブロイラー区に有意な差は認められなかった。これらの結果からイノシン酸含量は肉用鶏間の違いよりむしろ日齢(週齢)間の違いを反映していることが示唆された。一方,アラキドン酸含量は比内地鶏とブロイラーとの間で有意な差が認められた。また,「蒸し肉」あるいは「スープ」の官能評価においても22週比内地鶏区は22週ブロイラー区より有意に味,うまみ,こくみ,後味が強く,嗜好性が高かった。これらの結果からアラキドン酸が比内地鶏のおいしさに関与している可能性が示唆された。しかしながら,比内地鶏のアラキドン酸含量とおいしさとの関与を解明するためには更なる研究が必要である。
著者
力丸 宗弘 石塚 条次 高橋 秀彰
出版者
秋田県農林水産技術センター畜産試験場
巻号頁・発行日
no.21, pp.57-64, 2006 (Released:2012-12-06)

比内鶏の遺伝的多様性を明らかにするため、秋田県農林水産技術センター畜産試験場(以下、「秋田畜試」) で維持している比内鶏集団と秋田県声良鶏・比内鶏・金八鶏保存会(以下、「保存会」) の比内鶏集団について、マイクロサテライトマーカー24座位を用いて、両集団の遺伝的多様性を調査した。その結果、秋田畜試集団では、24マーカー座位全てにおいて多型性を示す一方、保存会集団では23マーカ一座位が多型性を示し、1座位は単型性であった。1座位当たりの平均対立遺伝子数は、秋田畜試集団が3.67個、保存会集団が3.58個、平均ヘテロ接合率は、秋田畜試集団が0.439、保存会集団はO.385であった。これらの結果から、保存会の比内鶏は維持集団の規模が試験場に比べて小さいため、遺伝的多様性が失われる傾向にあることが示唆された。また、秋田畜試と保存会の比内鶏集部間の遺伝距離はO.104であり、同一の集団から分化した遺伝的に非常に近い集団であることが示唆された。
著者
小松 恵 力丸 宗弘 石塚 条次
出版者
秋田県農林水産技術センター畜産試験場
巻号頁・発行日
no.22, pp.75-80, 2008 (Released:2012-12-06)

1997年に比内鶏およびロードアイランドレッド種の新たな種鶏群(以下「G7」とする)を造成してから10年が経過した。そこで、G7と現在の種鶏群の能力を比較するため、比内鶏およびロードアイランドレッド種の性能調査を行った。1 比内鶏の300日齢体重は雄が3,692g 、雌が2,874gであり、G7世代と比較して雄では296g 、雌では142g大きくなった。2 ロードアイランドレッド種の300日齢体重は雄が3,916g、雌が3,009gであり、G7世代と比較して雄では77g、雌では63g大きくなった。3 比内鶏の300日齢卵重は56.8gとG7世代より5g大きくなった。4 ロードアイランドレッド種の300日卵重は57.0gとG7世代より1.5g大きくなった。しかし、産卵率については両種鶏ともG7世代より劣っており、今後さらに改良する必要がある。
著者
力丸 宗弘 石塚 条次 小松 恵 高橋 秀彰
出版者
秋田県農林水産技術センター畜産試験場
巻号頁・発行日
no.22, pp.56-60, 2008 (Released:2012-12-06)

秋田比内地鶏のDNA識別手法を確立するため、マイクロサテライトマーカーを用いて秋田比内地鶏の父親となる比内鶏の遺伝的特性について調査を行った。秋田県農林水産技術センター畜産試験場で維持している比内鶏160検体について調査した結果、5つの常染色体マーカー(ABR13、ABR277、ABR500、MCW298、MCW327)、5つのZ染色体マーカー(ABR89、ABR241、ABR311、ABR633、ADL250)において、それぞれ一つの対立遺伝子に固定していた。すなわち、比内鶏とのF1個体では、比内鶏で固定している10個のマーカーの対立遺伝子が必ずセットで検出されなければならないことがわかった。固定した遺伝子型を示した単型性マーカーの割合を常染色体、Z染色体別に比較すると、常染色体マーカーでは92個中5個(5.4%)、Z染色体マーカーでは22個中5個(22.7%)であり、常染色体よりZ染色体において、比内鶏に特徴的なマーカーが存在することが示唆された。これらのことから単型性マーカーの割合や生産形態を考慮すると、秋田比内地鶏のDNA識別には、Z染色体マーカーの方が常染色体マーカーよりも有効であることが示唆された。