著者
石山 賢 渡邉 千之
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.331-343, 1994

リムルステスト〔血中エンドトキシン(Et)検出法〕が,1970年LevinとBangによって発表されて以来4半世紀を経過した。本法は,検体がタンパクを含まない溶液の場合には何ら問題がなく,鋭敏度や特異性の検討も詳しく行われて満足のいく検査であることが確かめられた。しかし,ヒトの血漿が検体である場合には,血漿中のリムルス反応阻害物質のためにうまくいかない。阻害物質としては,lysateの活性化を直接干渉ないし阻害する血液中の凝固因子や諸酵素,Etに親和性をもちEtと結合してEtの活性を抑制するようなcarrierタンパクであるHDL, apolipoprotein,あるいはIgM, IgGなどが考えられている。この反応阻害物質,干渉物質を排除する技法として,従来から種々考案されてきた。クロロフォルムによる抽出法,血漿の希釈および加熱法,弱酸による除タンパク法などが代表的であるが,いずれも少しずつ欠陥がある。今日わが国では,岩永らによって開発された合成発色基質を用いる定量法が普及し臨床検査として定着しつつある。しかし本法とて反応阻害に関しては同じである。血漿の前処理法としては主として過塩素酸処理法を用いるよう推奨されているが,これではタンパクと結合したEtが沈澱するために実際に血中に存在するEtの大部分が測定されないことになり,実測値としてはいわば水面に現れた氷山の一角のみをみているに過ぎないというおそれがある。この点を克服するために,酸によって生じた沈澱を再溶解する方法,全血を用いる方法,血中からEtをクロマトグラフィーによって抽出するなど種々試みられているが,未だ満足すべき技法の確立に至っていない。本稿では,リムルステストの原理を解説し,現行の技法の問題点を考察して得られる実測値の吟味を行った。