著者
林 亮平 北本 幹也 野田 育江 渡邉 千之 山田 博康 今川 勝 松本 陽子 田中 未央 児玉 美千世 平本 智樹 赤木 盛久 隅岡 正昭 西阪 隆
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.50, no.9, pp.527-531, 2009 (Released:2009-09-24)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

症例は86歳女性.肝障害の精査の為に入院したが,原因となり得るウイルス感染および服薬歴,アルコール飲酒歴は認めなかった.抗核抗体は陽性であり,肝生検を施行しAIH scoreは17点となり自己免疫性肝炎と診断した.HLA typeはDR4陽性であった.プレドニゾロン(PSL)30 mg/日とウルソデオキシコール酸(UDCA)600 mg/日の内服を開始し,ALTは持続正常化した.UDCA 600 mg/日と併用することで,PSL 10 mg隔日投与としている現在も肝障害再燃は認めていない.
著者
平賀 裕子 渡邉 千之
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.296-312, 2022 (Released:2022-03-22)
参考文献数
13

大腸EMRは外来で日常的に施行されている内視鏡手術であり,粘膜内(Tis)癌の治療にも有用である.EMRはESDに比べ,時間も費用も通電ダメージも患者にやさしいが,スネアリング時に正常粘膜が全周性に含まれたかどうかの確認と切除深度のコントロールが難しいという欠点がある.その手軽さ故に一度に多数の病変のEMRをすることも多いが,この欠点を踏まえて,一つ一つの病変に対して,スネア切除直後に潰瘍底と潰瘍辺縁の観察をしなければならない.まず潰瘍底の状態を見て,穿孔や出血・露出血管の有無を確認し,次に潰瘍辺縁を残存病変がないか拡大観察で確認することが有用で,わかりにくい時は画像強調や色素撒布も用いる.特に分割EMRの場合には辺縁のみならず分割の継ぎ目も丁寧に観察し,病変の遺残を認めた場合や疑わしい場合は追加治療を行う.後出血リスクのある潰瘍に対してはクリップ閉鎖などの後出血予防が必要であり,通常のクリップ閉鎖が困難な場合も種々の内視鏡的縫縮術が選択可能である.大腸EMR前だけでなく後にも十分な観察と必要な処置を加えることが,外来での安全で堅実な内視鏡治療を行うために必要である.
著者
石山 賢 渡邉 千之
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.331-343, 1994

リムルステスト〔血中エンドトキシン(Et)検出法〕が,1970年LevinとBangによって発表されて以来4半世紀を経過した。本法は,検体がタンパクを含まない溶液の場合には何ら問題がなく,鋭敏度や特異性の検討も詳しく行われて満足のいく検査であることが確かめられた。しかし,ヒトの血漿が検体である場合には,血漿中のリムルス反応阻害物質のためにうまくいかない。阻害物質としては,lysateの活性化を直接干渉ないし阻害する血液中の凝固因子や諸酵素,Etに親和性をもちEtと結合してEtの活性を抑制するようなcarrierタンパクであるHDL, apolipoprotein,あるいはIgM, IgGなどが考えられている。この反応阻害物質,干渉物質を排除する技法として,従来から種々考案されてきた。クロロフォルムによる抽出法,血漿の希釈および加熱法,弱酸による除タンパク法などが代表的であるが,いずれも少しずつ欠陥がある。今日わが国では,岩永らによって開発された合成発色基質を用いる定量法が普及し臨床検査として定着しつつある。しかし本法とて反応阻害に関しては同じである。血漿の前処理法としては主として過塩素酸処理法を用いるよう推奨されているが,これではタンパクと結合したEtが沈澱するために実際に血中に存在するEtの大部分が測定されないことになり,実測値としてはいわば水面に現れた氷山の一角のみをみているに過ぎないというおそれがある。この点を克服するために,酸によって生じた沈澱を再溶解する方法,全血を用いる方法,血中からEtをクロマトグラフィーによって抽出するなど種々試みられているが,未だ満足すべき技法の確立に至っていない。本稿では,リムルステストの原理を解説し,現行の技法の問題点を考察して得られる実測値の吟味を行った。