著者
石川 玲 工藤 正美 宇野 光人 三上 雅史 高橋 真由美 山口 美穂子
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.B0451-B0451, 2004

【目的】筋強直性ジストロフィー(myotonic dystrophy,MyD)は,筋ジストロフィーの中でデュシェンヌ型(Duchenne muscular dystrophy,DMD)に次いで有病率が高い。しかし,Myd患者の機能的能力に関する研究報告は極めて少ない。そこで我々は,将来,MyD患者の障害像に適合した障害段階分類とADL検査表を作成するために,今回予備調査として,小人数のMyD患者を対象に,69項目の動作能力を調べ,能力低下の特徴について分析することを目的とした。<BR>【方法】対象は国立療養所青森病院入院中の成人発症型MyD患者14名(男9名,女5名,年齢36~68歳)。院内での生活動作を,起居移動,入浴,清潔,トイレ,更衣,食事,手指関連動作の7つにカテゴライズし,総計69項目の動作を選定した。そして,それぞれの項目について遂行状況を観察し,遂行能力を「自力可能」または「自力不可能」の二つの基準で判定した。これらの判定結果をもとに,起居移動動作の難易度を順位付けした。さらに,起居移動動作を除く6カテゴリーについて,歩行可能かどうかによって動作遂行能力に相違がみられるかどうかを調べるためにフィッシャーの直接確率を求めた(有意水準5%)。<BR>【結果】起居移動では,車椅子移動と寝返りは全員可能であり,以下,床上座位保持,ずり這い,四つ這い,起き上がり,移乗,つかまり歩行,椅子に座る,立っている,独歩,階段昇降,床に座る,椅子から立つ,床からの立ち上がり,片脚起立,しゃがむ,の順に自力遂行可能な者が減少した。独歩が可能な5名と不可能な9名の間では,起居移動,入浴,清潔,手指の強い把持を必用とする動作能力に有意差(p<0.01)がみられ,トイレ,更衣,食事,手指の巧緻動作では有意差がみられなかった。カテゴリー別にみると,起居移動では立位と関連する動作に加えて,起き上がりでも有意差(p<0.05)がみられた。入浴では浴槽の出入り,体を拭く,背中を洗う,洗髪で,清潔動作では手指と足指の爪切りで,手指の強い把持ではペットボトルの蓋開け,缶切り,ナイフでの皮むき,栓抜き,缶のプルトップ開けで有意差(p<0.001~0.05)がみられた。<BR>【考察】起居移動動作の難易順からみて,MyDでは立位動作における能力低下の進み方がDMDと異なる様相を呈することが推察される。また,歩行能力によって生活動作の遂行能力に違いがみられたことから,歩行能力はMyDの筋力低下や能力障害を反映する重要な指標であると言える。他の生活動作では,上肢挙上を伴う動作や手指での強い把持を必用とする動作が他の動作に比べて早くから障害されるという特徴がみられた。これらは,MyDでは三角筋と手外来筋の筋力低下が早期から生じることおよび手のミオトニアと関係していると考えられる。<BR>【まとめ】MyDでは起居移動動作能力の障害進展過程がDMDと異なる可能性が示唆された。また,上肢筋力と強い把持を必用とする動作能力が,他のADLに先んじて低下するという特徴がみられた。今後はさらに例数を増やして検討を続ける予定である。
著者
石川 玲 香川 幸次郎 伊藤 和夫 小野 洋一 伊藤 日出男 対馬 均 進藤 伸一 菅原 正信 三浦 孝雄
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.433-438, 1988-09-10

寒冷や積雪が在宅脳卒中後遺症者の生活に及ぼす影響について検討するために, 青森県内2ヶ町村の在宅脳卒中後遺症者115名を対象に実態調査を行った。更に3年後39名について追跡調査を実施し, 以下の結果を得た。(1)非積雪期の生活で何等かの訴えを有する者は18%であったが, 積雪期では60%以上の者が訴えを有していた。(2)非積雪期の訴えは夏ばてや付添い者の多忙により通院できない等訴えの内容が多岐にわたっていたが, 積雪期では外出の制限や身体症状の増悪に関することに集中していた。(3)非積雪期での主な外出先は医療機関, 福祉・保健センター, 友人宅, 散歩であり, 積雪期では友人宅や散歩に出かける者が減少する反面, 医療機関や福祉・保健センターに出かける者の数は減少していなかった。寒冷や積雪は対象者の生活に多大な影響を及ぼしているが, 冬の外出は自己の行為に対する意味づけの軽重に規定されると考えられた。