- 著者
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鍋島 耕二
石川 隆義
三浦 一生
長坂 信夫
- 出版者
- 一般財団法人 日本小児歯科学会
- 雑誌
- 小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
- 巻号頁・発行日
- vol.26, no.2, pp.415-422, 1988-06-25 (Released:2013-01-18)
- 参考文献数
- 38
舌の先天異常としては,舌癒着症,葉状舌,巨舌症,小舌症,無舌症などがある.そのうちの小舌症,無舌症はきわめて稀な疾患である.我々は,本学小児歯科外来を訪れた8歳5カ月の男児の小舌症に遭遇し,次の所見を得た.1.患児に,小舌症,下顎前歯部の先天性欠損,上下顎の劣成長,高口蓋,口蓋粘膜下破裂を認めた.また,先天性心室中隔欠損症の既往があった.2.舌は口腔底のほぼ中央部に位置し,舌根部に異常はないが,舌体は長さ約2cm,幅約1cmで舌尖に向かって狭いV字状の形態を示した.3.舌の運動,嚥下運動,味覚の異常は認めなかった.また発音は,舌背が軟口蓋に接触してできる「キ」「ギ」「ケ」「ゲ」などの破裂音に歪を認めたが,他の構音障害は軽度で日常会話はかなり明瞭であった.4.妊娠2カ月時の風疹ウイルスによる子宮内感染が原因の1つとして考えられた.5.今後,小舌症自体の手術等による処置は不可能と考えられるが歯列,歯周組織を含めた総合的な口腔管理の必要性があると思われた.