著者
海原 康孝 天野 秀昭 三浦 一生 長坂 信夫 石田 房枝
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.695-699, 1999-09-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
16
被引用文献数
1

うつぶせ寝育児が顎顔面歯列の形態や咬合に与える影響について,歯科的検討が行われている。本研究では側貌頭部エックス線規格写真分析により,乳児期にうつぶせ寝で育てられた小児の乳歯列期における顎顔面形態について検討し,日本小児歯科学会の標準値と比較した結果,以下のような傾向が認められた。1)男子はS-Nが大きい傾向が認められ,女子はS-N,N-Me,A'-Ptmが大きい値を示した。2)Facial angleが小さく,Y-axisが大きい傾向が認められた。3)プロフィログラムからは,特に男子において下顎の後退傾向が認められた。以上より,うつぶせ寝で育てられた小児の顎顔面形態は,前脳頭蓋底および顔面高さが長く,下顎が後退する傾向が認められた。
著者
鍋島 耕二 石川 隆義 三浦 一生 長坂 信夫
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.415-422, 1988-06-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
38

舌の先天異常としては,舌癒着症,葉状舌,巨舌症,小舌症,無舌症などがある.そのうちの小舌症,無舌症はきわめて稀な疾患である.我々は,本学小児歯科外来を訪れた8歳5カ月の男児の小舌症に遭遇し,次の所見を得た.1.患児に,小舌症,下顎前歯部の先天性欠損,上下顎の劣成長,高口蓋,口蓋粘膜下破裂を認めた.また,先天性心室中隔欠損症の既往があった.2.舌は口腔底のほぼ中央部に位置し,舌根部に異常はないが,舌体は長さ約2cm,幅約1cmで舌尖に向かって狭いV字状の形態を示した.3.舌の運動,嚥下運動,味覚の異常は認めなかった.また発音は,舌背が軟口蓋に接触してできる「キ」「ギ」「ケ」「ゲ」などの破裂音に歪を認めたが,他の構音障害は軽度で日常会話はかなり明瞭であった.4.妊娠2カ月時の風疹ウイルスによる子宮内感染が原因の1つとして考えられた.5.今後,小舌症自体の手術等による処置は不可能と考えられるが歯列,歯周組織を含めた総合的な口腔管理の必要性があると思われた.
著者
山本 益枝 宮崎 結花 三浦 一生 長坂 信夫
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.86-94, 1991
被引用文献数
7

我々はスポーツドリンクの脱灰能とそれに影響を及ぼす要因との関連を明らかにする目的で,スポーツドリンクの性状分析と,ハイドロキシアパタイトからのCa溶出量測定を行い,以下のような結果を得た.<BR>1)スポーツドリンクのpHは,2.91~4.07であった.<BR>2)スポーツドリンクの主糖質量は3.24~5.95%であり,糖質の種類は,Sucrose, Glucose, Fructoseが主となっているが,その割合は,各スポーツドリンクによって異なっていた.<BR>3)スポーツドリンクによるハイドロキシアパタイトからのCa溶出を経時的に観察し,スポーツドリンクの H, Ca濃度と, 溶出パターンの関係を検討すると, 攪拌時間1分及び5分では,スポーツドリンクのpHとCa溶出量との間に負の相関を,また,10分及び20分ではスポーツドリンクのCa濃度とCa溶出量との間に負の相関を認めた.<BR>4)スポーツドリンクに糖質を添加しても,ハイドロキシアパタイトからのCa溶出量に影響は認められなかった.<BR>従って,歯牙がスポーツドリンクに接する初期の段階においては,pHの低いものほど歯牙脱灰量は多く,また,歯牙が長時間同じスポーツドリンクに浸漬されているような場合には, そのCa濃度が低いものほど歯牙脱灰量は多いと考えられる.