著者
石橋 芳雄
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 = Japanese journal of medical mycology (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.147-149, 2009-07-30
被引用文献数
3

<I>Malassezia</I> は皮膚の常在真菌であるが,癜風,マラセチア毛胞炎,脂漏性皮膚炎などの皮膚疾患にも関連しており,さらに<I>M. globosa</I> と<I>M. restricta</I> はアトピー性皮膚炎(atopic dermatitis;AD)の増悪因子の一つとして注目されている.<I>Malassezia</I> の皮膚定着とADとの関連性を解明するため,この2菌種について主要アレルゲンの同定を試みるとともに,表皮ケラチノサイトのサイトカイン応答に及ぼす影響について解析した.AD患者血清IgEと反応する<I>Malassezia</I> 抗原を検索した結果,<I>M. globosa</I> の42 kDa,PI 4.8のタンパクが主要アレルゲンとして検出された.さらにプロテオーム解析により,この抗原はheat-shock protein 70(hsp70)ファミリータンパクの分解産物であることが明らかになった.表皮ケラチノサイトのサイトカイン応答に及ぼす影響については,ヒトケラチノサイトに<I>M. globosa</I> を暴露した場合,IL-5,IL-10,IL-13などのTh2型サイトカインの分泌が認められた.また,<I>M. restricta</I> 刺激ではTh2型サイトカインであるIL-4のみの分泌が認められた.これらの結果は,<I>M. globosa</I> と<I>M. restricta</I> は単にアレルゲンとして作用するだけでなく,ヒトケラチノサイトに対してそれぞれ異なるTh2型サイトカイン応答を誘導することを示しており,それぞれのサイトカインが相乗的に作用することによりTh2免疫応答の誘導を介したアトピー性皮膚炎の増悪に関与している可能性が示唆された.