著者
新見 京子 新見 昌一
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会雑誌 = Japanese journal of medical mycology (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.57-66, 2009-04-30
参考文献数
79
被引用文献数
2 5

真菌の細胞壁骨格多糖 &beta; &ndash; 1,3 &ndash; グルカンの合成を阻害するエキノキャンディン(キャディン)系抗真菌薬は,<I>Candida</I>や<I>Aspergillus</I>に対して高い抗菌活性を示し,ヒトに対する副作用も少ないことから深在性真菌症の治療における重要な選択肢となっている.アゾール薬に比べて耐性菌出現の問題は少なく,発売から数年を経ても低感受性菌分離の報告は欧米を中心に散見されるに過ぎない.しかし,その報告例は徐々に増加している.低感受性株のほとんどは<I>C. albicans</I>であるが,<I>C. glabrata</I>,<I>C. krusei</I>,<I>C. tropicalis</I>でも見られ,これらの株はキャンディンに対する感受性が100倍近く低下し,膜画分中の &beta; &ndash; 1,3 &ndash; グルカン合成酵素もキャンディン耐性を示す.耐性との強い関係が示唆されているのは,この酵素の触媒サブユニットをコードする遺伝子<I>FKS</I>のエキノキャンディン耐性領域(Ech<SUP>R</SUP>)と呼ばれる部分のアミノ酸置換である.しかし,アミノ酸置換がどのように耐性とかかわっているか,詳細は不明である.一方,キャンディンは真菌のストレス応答を惹起し,それにかかわるネットワーク特にcell wall integrity伝達経路と呼ばれるシグナル経路が働くことによって,薬剤に対して寛容の状態となる.真菌の細胞壁合成酵素はヒトにはないタンパクであり,有望な薬剤の標的分子である.今後より幅広い抗菌スペクトルをもつ細胞壁合成阻害薬を開発するには,耐性機構の解明と標的分子の構造解析が必要であろう.
著者
時松 一成 門田 淳一
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会雑誌 = Japanese journal of medical mycology (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.155-159, 2006-07-31
参考文献数
20
被引用文献数
1

2002年に発売開始されたミカファンギンや2005年に発売開始されたボリコナゾールは, アスペルギルス属に対して抗真菌活性を有する薬剤である. 欧米における大規模臨床試験の結果, ボリコナゾールは, アムホテリシンBに比べ, 侵襲性肺アスペルギルス症に対し優れた有効性を有し, ミカファンギンと同じキャンディン系抗真菌薬であるカプソファンギンは, 好中球減少期における発熱に対し有効性を示した.<br>このように, 今後, ますますアスペルギルス症に対する治療薬剤の選択肢は増加し, その治療方法も大きく変化すると予想される一方, 薬剤選択の多様性から生じる臨床現場の混乱を避けるため, 新たな標準的治療法の確立が望まれる.<br>本稿では, 新規抗真菌薬をめぐる問題として, non-<i>fumigatus Aspergillus</i> の中でも最近増加が懸念されている<i>Aspergillus terreus</i> 感染症に対する新規抗真菌薬の有用性と, 新規抗真菌薬使用下に発生するブレイクスルー感染について記述した.
著者
石橋 芳雄
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 = Japanese journal of medical mycology (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.147-149, 2009-07-30
被引用文献数
3

<I>Malassezia</I> は皮膚の常在真菌であるが,癜風,マラセチア毛胞炎,脂漏性皮膚炎などの皮膚疾患にも関連しており,さらに<I>M. globosa</I> と<I>M. restricta</I> はアトピー性皮膚炎(atopic dermatitis;AD)の増悪因子の一つとして注目されている.<I>Malassezia</I> の皮膚定着とADとの関連性を解明するため,この2菌種について主要アレルゲンの同定を試みるとともに,表皮ケラチノサイトのサイトカイン応答に及ぼす影響について解析した.AD患者血清IgEと反応する<I>Malassezia</I> 抗原を検索した結果,<I>M. globosa</I> の42 kDa,PI 4.8のタンパクが主要アレルゲンとして検出された.さらにプロテオーム解析により,この抗原はheat-shock protein 70(hsp70)ファミリータンパクの分解産物であることが明らかになった.表皮ケラチノサイトのサイトカイン応答に及ぼす影響については,ヒトケラチノサイトに<I>M. globosa</I> を暴露した場合,IL-5,IL-10,IL-13などのTh2型サイトカインの分泌が認められた.また,<I>M. restricta</I> 刺激ではTh2型サイトカインであるIL-4のみの分泌が認められた.これらの結果は,<I>M. globosa</I> と<I>M. restricta</I> は単にアレルゲンとして作用するだけでなく,ヒトケラチノサイトに対してそれぞれ異なるTh2型サイトカイン応答を誘導することを示しており,それぞれのサイトカインが相乗的に作用することによりTh2免疫応答の誘導を介したアトピー性皮膚炎の増悪に関与している可能性が示唆された.
著者
藤広 満智子
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 = Japanese journal of medical mycology (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.191-195, 2008-07-30
参考文献数
17
被引用文献数
3 3

<I>Trichophyton tonsurans</I> 感染症は,東海地方では2000年秋に岐阜県で第1例が確認され,急速に広がっている.このタイプの白癬はKOH鏡検だけでなく,真菌培養がその診断に必要である.著者はセロファン粘着テープを真菌検査に用いることを推奨し,この5年間に東海地方の皮膚科医からテープ検体を郵送してもらい,この感染症を診断している.75例すべてKOH法陽性で,うち61例から<I>T. tonsurans</I> が得られた.その内訳は,男54例,女7例,競技別では柔道32例(52%),レスリング24例(39%),相撲2例,家族・友人3例であった.年齢別では高校生46例(75%),大学生・成人9例(15%),中学生以下6例(10%),ほとんどの症例で顔面,頚部,頭部に病巣を認め,手の爪白癬例の高校レスリング部員例もあった.体部白癬からの検体の数枚に,生毛内に寄生する菌糸が認められた.今回の流行では報告されている患者は氷山の一角と考えられる.私たちは岐阜県柔道協会の医科学委員と協力し,啓蒙に努め,大会前のブラシ検査などの要望にもこたえられる体制を作りつつある.今後このシステムを継続し,<I>T. tonsurans</I> の水際での蔓延防止に役立てたいと考えている.
著者
木内 哲也
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 = Japanese journal of medical mycology (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.289-292, 2006-10-31

我が国でも実質臓器移植における感染症が議論される機会が増えているが, 腎臓移植以外の領域での臨床経験期間はまだ短く, 生体臓器移植の経験も肝臓を除くと極めて限られている. 臓器移植患者における深在性真菌症のリスクは, 移植される臓器の種類や免疫抑制の強さばかりでなく, 移植時の臓器不全に伴う免疫不全状態や感染歴に大きく依存しており, 手術因子や術後の侵襲因子と併せて総合的に, かつ経時的にリスクを評価する必要がある. こうしたリスク評価の上に立った予防処置に加え, さらに臨床症状・画像情報・監視培養・血清学的指標を定量化して先制治療が開始されることが望ましい. 臓器毒性が低く治療効果の高い新しい抗真菌薬の出現に伴って治療の概念も変化していく可能性がある一方で, 安易な印象的先制治療開始の傾向もみられている. 欧米で得られた知見をそのまま我が国の臓器移植医療に適用できるかどうかはまだ疑問であり, 我が国における診断・疫学・危険因子, さらに抗真菌薬の予防的・先制治療的使用の基準を求めるためには, 広範な情報の集積が必要である.
著者
光武 耕太郎
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 = Japanese journal of medical mycology (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.167-169, 2006-07-31
被引用文献数
1

臓器移植領域における深在性真菌症は, 発生頻度は低くても治療は容易でなく, とくにアスペルギルス症は依然として死亡率が高い. 移植領域では抗真菌薬の予防投与・先制攻撃的治療・経験的治療が重要視されるが, その基準は必ずしも明確ではない. 新規抗真菌薬の登場もふまえて, 今後, 薬剤の位置づけと選択方法が示されていくであろう.
著者
西本 勝太郎 西本 勝太郎
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 = Japanese journal of medical mycology (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.103-111, 2006-04-30
被引用文献数
28 45

日本医真菌学会・疫学調査委員会による2002年度の皮膚真菌症調査成績を報告した. 方法および調査項目は前2回 (1991~1992, 1996~1997) に準じ, 全国に分布した皮膚科外来14施設において, 調査用紙にしたがった検索をおこない, 結果を集計した.<br>1. 全施設をあわせた年間の総患者数 (その年における新患数) は72,660名であった.<br>2. 疾患別では皮膚糸状菌症 (全病型を合わせて7,994例) が最も多く, ついで皮膚カンジダ症, 癜風を含むその他の疾患群であった.<br>3. 皮膚糸状菌症の病型別では, 多い順に足白癬4,813例 (男2,439, 女2,374), ついで爪白癬2,123例 (男1,093, 女1,030), 体部白癬497例 (男281, 女216), 股部白癬299例 (男249, 女50), 手白癬248例 (男144, 女104), 頭部白癬・ケルスス禿瘡14例 (男6, 女8) の順であった.<br>4. 足白癬・爪白癬は夏期に, また人口比では主として高齢者に多くみられ, 特に爪白癬は年を追って増加する傾向が見られていた.<br>5. 原因菌別では<i>Trichophyton rubrum</i> が最も多く分離され, 病型別では, 足白癬で<i>T. rubrum</i> 1,431株対<i>Trichophyton mentagrophytes</i> 829株以外, 手白癬, 体部白癬, 股部白癬, 爪白癬で分離株数の約90%は<i>T. rubrum</i> によるものであった. <i>Microsporum canis</i> は16株と減少し, <i>Trichophyton tonsurans</i> が12株分離された.<br>6. 皮膚カンジダ症は755症例が見られ, 間擦疹が347例で最も多く, ついで指間びらん (103例), おむつ部カンジダ症 (102例) の順であった. いずれも高齢者に, 局所の日和見感染として発症した例が多かった.<br>7. 癜風・マラセチア感染症その他を含め220例が見られたが, 施設ごとの症例は少なくまた偏りがあり, 施設や性別などで特徴的な所見は出なかった.
著者
小林 めぐみ 早出 恵里 高橋 栄里 助川 のぞみ 清 佳浩 伊藤 弥生
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 = Japanese journal of medical mycology (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.217-220, 2008-07-30

71歳女性の高度に変形,肥厚した爪カンジダ症の1例を報告する.初診,2006年4月5日.基礎疾患に糖尿病,慢性関節リウマチなどあり.ステロイド長期内服中.初診時,両3,4指爪甲は爪郭から1/3のところで横に断裂し,爪甲下角質増殖を認めた.KOH直接検鏡にて仮性菌糸と桑実型の胞子を検出.病理組織では爪甲中にGrocott染色,PAS染色いずれも無数の菌要素を認めた.ATG寒天培地による培養の結果,<I>Candida albicans</I> が分離され,PCRを用いた非培養法でも<I>C. albicans</I> のみ検出され,爪カンジダ症と診断した.同年4月8日よりフルコナゾール100 mg/dayの連日投与を開始.治療開始8週間後には,後爪郭から末梢に向かい2mm程度正常な爪甲を認めた.治療開始14週間後には,爪甲の混濁,肥厚,色調ともに著明に改善した.同年7月25日多臓器不全のため死亡した.
著者
秋山 一男
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 = Japanese journal of medical mycology (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.149-155, 2000-07-30
被引用文献数
1 6

ダニ,花粉,ペットとともに真菌は気管支喘息の原因アレルゲンとして重要な位置づけがなされているが,実地臨床の場での診断においては必ずしも容易ではない.原因アレルゲン確定のスクリーニングとして実施される皮膚テストにおける即時型陽性アレルゲンに対する血中IgE抗体の陽性頻度はダニ,花粉等に比べると低く,さらに粘膜アトピー反応検索の手段としての眼反応,吸入誘発反応の陽性頻度はさらに低い.最近はこれまでの屋外飛散真菌相のみならず屋内真菌のアレルゲンとしての意義についても検討されている.多数の抗原決定基を有する真菌の抗原分析により主要アレルゲンを決定することは容易ではない.我々は気管支喘息の原因アレルゲンとしてのヒト皮膚,粘膜常在真菌である<i>Candida albicans</i>(<i>C.alb</i>)が分泌する酸性プロテアーゼ(CAAP)及び細胞壁構成多糖体マンナン(Mn)のアレルゲンとしての役割を検討した.CAAPに対するIgE抗体陽性患者は<i>C.alb</i>による末梢血白血球ヒスタミン遊離反応,結膜誘発反応が陽性を示し,CAAPは<i>C.alb</i>による粘膜アトピー反応の重要なアレルゲンであることが示唆された.Mnは各種真菌アレルゲン間の交叉反応に関与するアレルゲンではあるが,粘膜アトピー反応への関与は少ない.一方,<i>C.alb</i>に対するIgG抗体は,Mnに対する抗体と考えられる.難治性喘息と非難治性喘息では各種<i>C.alb</i>関連抗原へのIgG抗体価には差はなかった.人体常在真菌である<i>C.alb</i>は内因型喘息の病態機序に関わる可能性が示唆されている.
著者
望月 隆 田邉 洋 若狭 麻子 河崎 昌子 安澤 数史 石崎 宏
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 = Japanese journal of medical mycology (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.57-61, 2006-04-30
被引用文献数
3 7

<i>Trichophyton</i> (<i>T</i>.) <i>tonsurans</i> 感染症の集団発生例への対処法として近年ブラシ検査を用いた診断・治療のガイドラインが作成され, 本症に対する対応が効果的に行われるようになってきた. このブラシ検査に影響があると考えられる要素のいくつかについて, 高等学校柔道部員を対象に検討した. その結果, ブラシ検査は十分な指導のもとに行うこと, 練習後は付着による偽陽性者が出るので練習前に行うこと, ブラシ検査は抗真菌剤の外用直後は陰性化していることが明らかになった. また, 練習前の抗真菌剤外用による菌の付着の防止効果は約3時間の練習に対しては不十分であることも判明した.<br>分子疫学的検討では, 当科に保存してあった全国各地からの臨床分離株198株についてNTS領域のPCR-RFLP分析を行った. その結果, 格闘技由来株に2つの分子型が認められ, 流行が2つの分子型の菌に起因することが明らかになった.
著者
菅波 盛雄 廣瀬 伸良 白木 祐美 比留間 政太郎 池田 志斈
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 = Japanese journal of medical mycology (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.319-324, 2006-10-31
被引用文献数
11 17

<i>Trichophyton tonsurans</i> 感染症は, 高校, 大学生の柔道・レスリング選手を中心に拡大していることは知られているが, 中学校柔道選手へも感染が拡大しているか否かは不明である. 本研究では, 平成17年度の全国中学校柔道大会において調査を行った. 対象は全参加1,039名のうち, 本調査の検査に同意した男子218名, 女子278名の計496名であった. 調査は質問紙法とhairbrush法を用いた. 結果は, 496例中45例 (9.1%) がhairbrush法陽性で, 1陽性例あたりの陽性ブラシ棘の集落数は1~126集落 (平均36.1±48.9) であった. 陽性例が多いのは, (1) 男子選手, (2) 他校および高校, 近隣の道場などで頻繁に練習を行う者, (3) 友人に体部白癬「有り」との回答をした者, (4) 体部白癬既往「有り」との回答をした者であった. また, (1) 体重の軽いクラスの者, (2) 戦績上位入賞者, (3) 関東と九州地区在住者に陽性例が多い傾向があった. 次にhairbrush法で陽性であった45名に検査結果を通知し, 治療を受けるように指示した. 3ヶ月後のhairbrush法再検査では, ブラシを返却した者は45例中33例 (ブラシは返却してきたが未治療9例を含む) であった. 治療による菌の陰性化率は, ミコナゾールシャンプー治療群では12例中12例 (100%) で, 経口抗真菌剤治療群では12例中6例 (50.0%) であった. 以上より, 中学生柔道選手における<i>T. tonsurans</i> 感染者が確認された (9.1%) ことより, 本症の感染拡大の阻止が急務であると考えられた.
著者
篠田 英和 西本 勝太郎 望月 隆
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 = Japanese journal of medical mycology (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.305-309, 2008-10-30
参考文献数
9
被引用文献数
5 7

2007年度に佐賀県で開催された全国高等学校総合体育大会における,柔道競技者の<I>Trichophyton tonsurans</I>(<I>T. tonsurans</I>)感染症を目的としたhair brush sampling法(HB法,スパイク90本)による検診を行った.競技参加者951名の中で検診希望者487名(男265名,女222名)を対象とした.陽性率の高い地域は九州21%(73名中15名),東北17%(77名中13名),近畿16%(89名中14名),中部13%(89名中12名)であった.さらにHB法でコロニー数30個以上の強陽性者は九州4名,東北4名,中部2名,近畿2名でありHB法陽性率の高い4地域と一致した.アンケート調査の回答では<I>T. tonsurans</I>感染の存在を90%は知っており,HB法検診の経験者は11%であった.37%(486名中178名)は検診結果の報告を不要と回答した.HB法検診の経験が少ない理由としては,皮膚科医によるHB法検診がまだ充分浸透していないことや,HB法などによって<I>T. tonsurans</I>感染者が判明し,試合への参加が制限されることを懸念するためHB法検診への参加に消極的であることなどが考えられた.したがって監督指導者に対する<I>T. tonsurans</I>感染症の啓発も重要であるが,我々皮膚科医も自主的に学校や団体に赴き,HB法などを用いた検診を積極的に行うべきである.検診結果報告不要の理由として,検診結果が監督や仲間に公表される危惧をあげる選手も多く,このことがHB法検診への不参加につながっていることが推測され,結果報告時の個人情報の取り扱いには充分なる配慮が必要と考えた.