著者
二宮 淳也
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.5-9, 2000-01-30 (Released:2009-12-18)
参考文献数
18
被引用文献数
2 4

Trichophyton mentagrophytesの菌液を健常人の踵部角質に塗布し,様々な温度,湿度にて培養し,経時的に観察することにより,菌の角質内侵入に要する時間を検討した.一般に糸状菌培養の至適温度とされる27℃よりも,35℃の方が菌の角質内侵入が早期より観察された.湿度100%では,温度15℃においても菌の侵入が見られたことから,湿度は温度よりも重要な要因であると思われた.T.mentagrophytesとT.rubrumの2種の菌を用いて行った実験では,最も早期に角質内への侵入像が観察された日数は,湿度100%においてT.mentagrophytesで1日,T.rubrumで1.5日,湿度95%においてT.mentagrophytesで1.5日,T.rubrumの4日であった.第4趾間の1日を通じての湿度は95%以下と推定された結果から,毎日足を充分洗浄していれば,足白癬の発症は確実に予防できるものと思われた.角質の切断面に菌液を塗布した系では,100%のみならず95%の湿度においても,両菌共0.5日後に角質内への侵入像が観察された.また,表面側への塗布では侵入像が認められなかった85%以下の湿度においても侵入像が認められた.以上の結果から,微細な外傷による角質細胞膜の破壊は,湿度や温度同様,重要な発症要因である可能性が推測された.
著者
森下 宣明 二宮 淳也 清 佳浩 滝内 石夫
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.247-252, 2004-10-30 (Released:2009-12-18)
参考文献数
14
被引用文献数
10 7

健常人の踵部の角質片に,数種の皮膚糸状菌を塗布し,角質内への菌の侵入速度や侵入後の洗浄による菌の除去について検討した.足白癬を想定した実験系では,角質表面に菌を塗布した後,以下の2系列の実験系をたてた.(1) 屋内で靴下を履いている環境として,湿度90%を8時間,湿度100%を16時間,(2) 屋内で裸足でいる環境として,湿度80%を8時間,湿度100%を16時間培養し,経日的に取り出し,石鹸水を浸した綿棒による洗浄前後について,それぞれPAS染色,走査電顕で観察した.(1)では1日後に洗浄しても菌を除去することはできなかったが,(2)では2日後でも菌が除去されていた.靴を脱いでいるときには足の湿度を低く保つこと,連日足底・趾間の洗浄をおこなうことにより,角質内に菌が侵入し始めても容易に除去できると思われた.また,体部白癬を想定した実験系では,角質切断面に菌を塗布し,湿度80%で培養後,経日的に取り出し,PAS染色後観察した.Trichophyton tonsuransは,0.5日で角質への侵入が始まり,他の菌種の皮膚糸状菌よりも角質内への侵入速度が速く,最近の感染拡大の要因の1つであると思われた.
著者
渡辺 京子 谷口 裕子 西岡 清 丸山 隆児 加藤 卓朗
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.183-186, 2000-07-30 (Released:2009-12-18)
参考文献数
12
被引用文献数
7 7

銭湯や温泉,プールなど裸足となる環境では,足白癬患者によって散布された皮膚糸状菌(以下,菌)が健常人の足底に付着し,足白癬感染のきっかけとなる.そこで,菌は靴下をはいた状態でも足底に付着するのか,それとも予防できるのかをFoot-press培養法を用いて実験的に検討した.足白癬に罹患していない被験者は,右足に綿靴下,ナイロンストッキング,毛靴下,足袋をはき,先に足白癬患者によって菌が散布されているバスマットを踏んだ後にFoot-press培養法を行い,靴下をぬいだ直後に,再度Foot-press培養法を行った.その結果,すべての靴下には菌が付着していたが,ナイロンストッキングの場合には,靴下より脱いだ足底に多数の菌が付着しており,綿靴下でも菌の一部が靴下を通過し,足底に付着した.毛靴下,足袋の場合は足底にほとんど菌が付着しなかった.各靴下を顕微鏡で観察すると,綿靴下やナイロンストッキングは,繊維の編み目が菌よりも大きく,菌を容易に通過させると考えられた.毛靴下や足袋は,編み目が密である上に,繊維の毛羽立ち,伸縮性の少なさによって菌を通過させないものと考えられた.ナイロンストッキングでは菌の付着の予防にはならず,綿靴下でも十分ではないことを示した.
著者
藤広 満智子
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.43-55, 1993-02-20 (Released:2010-11-18)
参考文献数
31
被引用文献数
4 3

揖斐総合病院皮膚科外来を訪れた足白癬患者183例と正常人102例を対象に, 足からの白癬菌散布の頻度, 量, 臨床との相関を検討した.対象となった患者に, 素足で10分間表面塩化ビニール製のスリッパを着用させ, ニチバン製セロファン粘着テープでスリッパの足底の接する面全体から試料を採取し, Actidione, chloramphenicol添加ペプトングルコース寒天平板培地にて白癬菌の分離培養を行った. その結果118例 (64.5%) の白癬患者のスリッパ169個からTrichophyton rubrumまたはTrichophyton mentagrophytesが分離された. 1個のスリッパ当たりの集落数別に検討したところ, 5集落以下のスリッパが最も多く112個 (66.3%), 6~10集落22個 (13.0%), 11~15集落12個 (7.1%), 16~20集落5個 (3.0%), 21~25集落3個 (1.8%), 26~30集落6個 (3.6%) および31集落以上9個 (5.3%) であった. 菌種による散布頻度, 散布量の差は認められなかった. 散布群と非散布群間で, 病型, 原因菌種, KOH所見, 鱗屑, 小水疱, 趾間の浸軟, 〓痒, 発赤, 足底の乾燥状態および爪白癬の合併の有無に関して比較したところ, 趾間の浸軟, 足底の湿潤が散布群により多くみられた. コントロールとした正常人102例中2例のスリッパからT. mentagrophytesが各1集落分離された. また20例の足白癬患者の足底をセロテープ®で剥離し, そのセロテープ®を20%KOH処理して観察したところ, 14例 (70%) に白癬菌と思われる菌要素を確認した.
著者
岩田 和夫 松田 明
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
真菌と真菌症 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.56-60, 1962 (Released:2009-12-21)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

The redox potentials of Candida albicans and Candida tropicalis were measured in single culture and in mixed culture with one or two species of various bacteria in respect to the change of pH value of the broth and growth of these Candida species in the final stage of 18 hour-cultivation.The Eh values of these two Candida species were considerably lower than those of the bacteria tested in single culture except with a few species and by mixing culture of the bacteria were significantly lowered in most of the combinations.The pH values of the Candida species were, on the contrary, higher than those of most of the bacteria in single culture and by mixing culture of the, bacteria were raised in many combinations but lowered in a few.The living cells of the Candida species were considerably smaller in numbers in mixed culture than in single one.The grade of the effects described above was, more or less, different between the two Candida species and also among the species of bacteria.The significance of redox potential value of Candida in connection with bacteria in establishment of Candida infections was also discussed from the ecological points of view.
著者
清 佳浩 滝内 石夫 渡辺 晋一 本田 光芳 伊東 文行 西川 武二 小川 秀興 原田 敬之 西山 千秋 加藤 卓朗
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.87-97, 1997-02-28 (Released:2009-12-18)
参考文献数
20
被引用文献数
1 4

フケ症を対象に,0.75%硝酸ミコナゾールシャンプー(MZS)の有用性を,シャンプー基剤(BSS)を対照として8施設による二重盲検比較試験により検討を行った.また,フケおよびかゆみに対する症状の改善とMalassezia furfurの菌数の減少,すなわち真菌学的効果との関係についても併せて検討した.その結果,総症例数134例中,安全性解析対象症例は130例,有効性および有用性解析対象症例は108例であった.有用率はMZS群58例中34例(58.6%),BSS群50例中19例(38.0%)であり,MZS群がBSS群に比し有意に優れる成績であった(p=0.020).フケの改善率では,MZS群58例中42例(72.4%),BSS群50例中26例(52.0%)であり,MZS群がBSS群に比し有意に優れる成績であった(p=0.017).M.furfurに対する真菌学的効果とフケに対する有効性に関して,効果の発現がみられた症例においては,菌数の有意な減少が認められた(p=0.0001).これに対し,無効の症例では試験開始前と終了後の菌数の変化に有意差を認めなかった.また,試験開始時の菌数による有効性の層別解析では,菌数が比較的多い症例において,MZS群がBSS群に比し有意に優れていた(p=0.038).副作用は130例全例において全く認められなかった.以上より,MZSはフケ症に対して有効であり,フケの改善とM.furfur菌数の減少とも比較的一致する極めて有用なシャンプー剤であると考えられた.
著者
Shigeharu Inouye Miki Takahashi Shigeru Abe
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.243-251, 2009 (Released:2009-11-27)
参考文献数
12
被引用文献数
20 29

The antifungal activity of 43 hydrosols, 7 herbal teas and 12 essential oils was determined using Candida albicans as a test organism. All of the hydrosols examined showed more potent inhibition against the filamentous form than the yeast form of C. albicans. In particular, the filamentous form was markedly inhibited by seven hydrosols, of which monarda, santolina and clove water also inhibited the growth of the yeast form. Most of the inhibitory activity of the hydrosols was correlated with that of their respective major components. Poor correlation was observed between the inhibition of filament formation and the growth inhibition of the yeast form among the hydrosols examined, among essential oils and among the major components of hydrosols and essential oils. Seven herbal teas showed moderate or weak activity against the filament formation of C. albicans, but no inhibition against the yeast form.
著者
西村 和子
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
真菌と真菌症 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.122-131, 1982-08-20 (Released:2009-12-18)
参考文献数
36
被引用文献数
1 1

病原性黒色酵母 Exophiala jeanselmei, E. gougerotii, E. dermatitidis および E. spinifera の分生子形成法を走査電顕を用いて検索し, Phialophora richardsiae. P. parasitica および P. repens のそれと比較検討した. Exophiala の前3菌種の分生子形成法はほぼ同じで, 分生子形成細胞先端に生じた1ないし数個の小突起より分生子が連続的求基的に産生されていた. 小突起は少しずつ伸びながら分生子を産生し, その壁には分生子が離れる度にレースの縁飾り状の環紋が形成されていた. 菌糸側壁においても同様の機序で分生子が産生され, 環紋が形成されていた. E. spinifera の分生子形成も同様であつたが, 小突起は分生子形成細胞あるいは菌糸側壁に1個ずつ生じ,長く多数の環紋が認められるのが特徴であつた. これら Exophiala の分生子形成法は Phialophora のそれとは明らかに異なつていた. E. jeanselmei, E. gougerotii は共に37℃における発育が抑制され, 生物学的性状においても差は認められなかつた. E. dermatitidis は37℃にて良好に発育し, KNO3資化能が劣つている点で前2菌種と異なつていた. Exophiala 4菌種はウレアーゼ陽性, GC含量は50~60%であつた. 分生子形成法に関する所見および生物学的性状, GC含量の結果から, Exophiala と担子菌酵母との関連性が示唆された.
著者
梅田 昭子 天児 和暢
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.147-150, 1998-07-30 (Released:2009-12-18)
参考文献数
6
被引用文献数
2 3

The fine structure of the cell walls of Gram-positive and -negative bacteria were determined by electron microscopy with the new technique of freeze substitution method, and analysed the cell wall structure of Staphylococcus aureus in detail. The surface of Staphylococcal cell wall was covered with a fuzzy coat consisting of fine fibers or electron-dence mass. This coat was completely removed after extraction of teichoic acid from the cell wall with trichloroacetic acid treatment, but was not affected by sodium dodecyl sulfate or trypsin treatment. It was suggested that many amount of teichoic acid was located on the surface of the cell wall and less inside the cell wall. The capsule of strain Smith diffuse was assumed to play the role as the barrier protected from the penetration of antibody against teichoic acid.
著者
Masako Takashima Takashi Sugita
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.119-132, 2022-10-31 (Released:2022-11-30)
参考文献数
119
被引用文献数
10

This review describes the changes in yeast species names in the previous decade. Several yeast species have been reclassified to accommodate the “One fungus=One name” (1F=1N) principle of the Code. As the names of medically important yeasts have also been reviewed and revised, details of the genera Candida, Cryptococcus, Malassezia, and Trichosporon are described in Section 3, along with the history of name changes. Since the phylogenetic positions of Candida species in several clades have not been clarified, revision of this species has not been completed. Among the species that remain unrevised despite their importance in the medical field, we propose the transfer of six Candida species to be reclassified in the Nakaseomyces clade, including Nakaseomyces glabratus and Nakaseomyces nivalensis.
著者
本房 昭三 古賀 哲也 山野 龍文 占部 治邦
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
真菌と真菌症 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.152-158, 1985-09-20 (Released:2009-12-18)
参考文献数
19
被引用文献数
2 2

スポロトリコーシスと黒色真菌感染症の治療現況を報告するとともに, これらの疾患にたいする抗真菌剤の適応について述べた. スポロトリコーシスの治療としてはヨウ化カリウム (KI) の投与あるいは温熱療法が一般的であり, また使用さるべき治療法である. Flucytosine (5-FC) とケトコナゾールは数例において有効であったと報告されており, KIあるいは温熱療法が奏効しない場合には有用であるかも知れない. 黒色真菌感染症の治療としては, 病変が皮膚に限局され, かつ広範囲でない場合には外科的切除が first choice である. 現時点で黒色真菌感染症にもっとも有効な薬剤は5-FCであり, リンパ節転移などの内臓病変を有する場合, 広範囲の病変を有する場合には5-FC, あるいは5-FCとアムホテリシンB点滴静注の併用が推奨される.KIの作用機序についても検討を行なったが, KI投与後血中にヨウ素 (I2) を検出することは出来なかった. しかしヨウ化物イオン (I-) は30~60ppmの濃度に達した. In vitro の実験ではKI(1×10-4M)+H2O2(5×10-5M)+peroxidase, KI+H2O2+Fe++の条件下で Sporothrix schenckii の酵母形は5分後に完全に殺菌された. KI+I2(5×10-6M) の条件下でも5分後にはほぼ完全な殺菌効果がみられた. KI+H2O2 の条件下では120分後に完全な殺菌効果が認められた.また3×10-4MのKIと5×10-5MのH2O2の存在下では2×10-6M程度のI2が産生された. これらの結果から, peroxidase-iodide-H2O2 system, iron-H2O2-iodide system に加えてKIから酸化されて生じたI2が直接殺菌作用を示すためにスポロトリコーシスにおいてKIが特異的に奏効するのではないかと考えた.
著者
松田 和子
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
真菌と真菌症 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.100-106, 1986-08-20 (Released:2009-12-18)
参考文献数
21
被引用文献数
1 2

Candida albicans の産生する角質溶解性タンパク分解酵素CAPP (旧名KPsae) は pepstatin によって特異的に阻害されるカルボキシール・プロテアーゼで, その至適pHは4.0である. しかし, CAPPは中性或いはアルカリ性の条件下ではその酵素活性を発揮できないことから, in vivo に於いてCAPPが C. albicans の増殖に本当に役立っているかを知る目的で以下の実験を角質培地を使って行なった. (1) 各種緩衝液を用いて培地内のpHを固定してその各種pH下における C. albicans の増殖性を比較検討した. その結果, 菌の増殖はpH3.0, 4.0, 5.0の弱酸性で認められ, 特にCAPPの至適pHであるpH4.0で最も良好であった. 一方, 至適pHより中性よりの条件即ちpH6.0, 7.0の培地では菌の増殖は認められなかった. (2) 培地pHを緩衝作用の弱いもので一時的に調整し, C. albicans によって自律的に培地内のpHが変化できるようにした. すると培養開始時のpHは, 経日的にCAPPの至適pH4.0付近に集束していった. しかもそのpH4.0への集束に従ってCAPPの活性は次第に増加し始め, それにつれて C. albicans の菌数の増加が観察された.以上より, C. albicans は角質培地において自己の増殖に都合のよい条件 (pH) へと環境を変化させる能力があり, 次いで有力な武器であるCAPPを発動させつつ角質を分解し, 菌数を増加させていくものと考えられた.

2 0 0 0 OA 脂漏性皮膚炎

著者
清 佳浩
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.77-80, 2003-04-30 (Released:2009-12-18)
参考文献数
18
被引用文献数
2 4

脂漏性皮膚炎は,脂漏部位である頭部・顔面中央・耳・胸部正中および間擦部に生じる油性の落屑性紅斑を特徴とする疾患である.本疾患の詳細な発症機序はまだ解明されていないが,癜風菌が発症ないし悪化に深くかかわっていることは間違いない.本疾患は,客観的な検査法が確立されていないため,臨床症状に基づいて診断される.したがって鑑別診断を注意深く行う必要がある.直接鏡検による癜風菌の確認,皮脂量の測定,IgE抗体価,パッチテストなどを組み合わせて除外診断を行う.治療に関してはケトコナゾールクリームなど再発までの期間が長い抗真菌剤を積極的に使用したい.
著者
諸角 聖
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
真菌と真菌症 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.172-180, 1978-08-07 (Released:2009-12-18)
参考文献数
47

シナモン粉末から抗真菌活性物質の単離を試み, 強い抗真菌活性を有する orthomethoxycinnamaldehyde を得た. 本物質はC10H10O2, 分子量162, 熱に安定, 水に難溶で多くの有機溶媒に易溶な淡黄色薄片状結晶である. また, 本物質は供試した4菌種の mycotoxin 産生菌の発育を100-200μg/mlの濃度で完全に阻止し, 各菌の毒素産生を6.25-50μg/mlで90%以上阻害した. さらにこの物質は Microsporum canis を始めとする5種の皮膚糸状菌に対して強い抗菌活性 (MIC;3.12-6.25μg/ml) を示した. しかし抗細菌作用は50μg/mlの濃度でも発現しなかつた.
著者
Hiroshi Kakeya
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.11-15, 2022 (Released:2022-02-28)
参考文献数
37
被引用文献数
2

In clinical settings, the number of immune compromised patients have increased as a result of developments in medical technology (e.g., organ transplantation, anticancer drugs, steroids, TNF inhibitors, etc.). However, patients with fungal diseases are also increasing globally. In recent years, the distribution and pathogenicity of fungi worldwide have been changing, with reports that new fungi are emerging, and antifungal-resistant fungi are spreading globally. Global warming, globalization, human activities, and other factors have been suggested as contributing to the emergence of new fungi. Some of the antifungals against which resistant fungi have emerged are commonly used not only for human but also for animal health care and crop protection. Consequently, the occurrence of antifungal-resistant fungi has become a clinical issue. Solving these problems entails continuing the “One Health” approach, which in turn requires updating medical mycology information with regard to the emerging pathogenic fungi. In particular, this paper reviews the recent information on Cryptococcus gattii, Candia auris, and azole-resistant Aspergillus fumigatus.
著者
赤川 清子
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.209-214, 1997-07-30 (Released:2009-12-18)
参考文献数
18
被引用文献数
3 3

ヒト単球をGM-CSFまたはM-CSF存在下に培養すると,形態,表面マーカー,機能(貪食能,活性酸素産生能,抗原呈示能,HIV感染感受性など)の異なる2種類のマクロファージ(Mφ)に分化すること,GM-CSFで分化誘導したMφは,ヒトの肺胞Mφに似ていることが知られた.またCSFによるヒト単球のMφへの分化はIL-4により修飾され,GM-CSFとIL-4によりCD1陽性の樹状細胞(DC)に,またM-CSFとIL-4によりTRAP陽性の破骨細胞様多核巨細胞(MGC)への分化が誘導されることが知られた.単球由来DCは,既にGM-CSFによりMφへ変換する能力は有していないが,M-CSFのレセプターであるc-fmsを有しM-CSFに反応してMφに分化可能である.しかしTNF-αで処理することによりc-fmsの発現が抑制されM-CSFによるMφへの分化能を失うことが知られた.また単球由来MGCの形成には内在性のIL-1とIL-6が重要な役割を果たしており,CD4/HLA-DR,LFA-1/ICAM-1及びCD14とそのリガンドの相互作用が必要なことが示唆された.
著者
木内 哲也
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.223-225, 2004

臓器移植領域における深在性真菌症は,ほとんどが<i>Candida</i>と<i>Aspergillus</i>によるものであり,小腸・肝・膵・肺移植での頻度が高い.限られた情報ではあるが移植臓器別に危険因子が挙げられているが,これに基づいた抗真菌薬の予防投与や先制攻撃的使用についてはその効果について充分な証明のなされていないものも多い.術前状態や手術因子,免疫抑制因子も含めた移植領域の特性に基づいた症例の階層化を行い臨床的裏付けに基づいたテーラー・メードの指針に到達するためには,多くの試案と検証とを繰り返していく必要がある.
著者
丸山 隆児 福山 国太郎 加藤 卓朗 杉本 理恵 谷口 裕子 渡辺 京子 西岡 清
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.265-268, 2003-10-30 (Released:2009-12-18)
参考文献数
16
被引用文献数
6 4

フットプレス培養,患者家庭塵埃培養などによる検討結果をもとに,足白癬の感染予防策をまとめた.(1)足白癬患者の足底からは高率に白癬菌散布が生じているが,抗真菌剤の外用を行うことで散布を抑制することが可能である.(2)すでに散布された白癬菌は乾燥状態におけば1ヶ月程度のうちに急速に死滅するが,湿潤した状況下では半年以上にわたって生存する可能性があり,白癬菌に汚染された浴室やバスマットなどは定期的な清掃,洗濯などを行う必要がある.(3)靴を脱いで不特定多数のものが利用する区域では,非罹患者の足底に白癬菌の付着が生ずることが多く,靴下をはいていても菌の付着を完全に予防することは難しい.ただし,付着した白癬菌は足を拭く,洗うなどの簡単な処置で角層内へ侵入する前に除去可能である.家族内感染を防ぐには(1),(2)に従って対応し,家族外感染については(3)に従って対応する習慣を遵守すれば,新たな足白癬の罹患をかなりの程度で予防可能であると考える.