著者
重松 峻夫 石沢 正一 森川 幸雄 倉垣 匡徳
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.5-15, 1965-01-20

九州の四つの大手炭坑と137の中小炭坑をそれぞれ合して,その従業員及び扶養家族の1961年度における生命表を,社会保険,労災保険の資料により作製した。得られた平均余命・生存率・その他の生命表指数を検討し,次のような結果を得た。 1) 大手炭坑の従業員ならびにその家族の生命表からみた健康度は,全国平均よりも遙かに優れていた。 2) 中小炭坑の従業員並びにその家族の健康度は,全国平均より優れているが,大手炭坑よりも劣っていた。 3) 大手炭坑の20∼54才の従業員の健康度は,同年令階級の全国平均よりも非常に優れているが,中小企業では逆に著しく劣っていた。 4) 55才における平均余命は,中小炭坑の従業員がもっとも大であって,全国平均のみならず,大手炭坑よりも優れていた。 5) 大手炭坑の男の従業員ならびにその家族は,55&Sim;60才の年令階級を除き,他のすべての年令階級において,全国平均より健康度において優れていた。55∼60才の年令階級においては,大手炭坑の男は全国平均より劣っていた。 6) 大手炭坑について調べたところでは,坑内労働者およびその家族の健康度は,坑外労働者およびその家族よりもかなり劣っていた。家族を除き労働者のみを比較しても,坑内労働者は坑外労働者に比し劣っていた。ただしこの坑内・坑外の差は,過去に比し小さくなったと考えられる。